Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第366号(2015.11.05発行)

第366号(2015.11.05 発行)

東京都の海の森プロジェクトについて

[KEYWORDS] 資源循環/協働/海の森倶楽部
東京都港湾局臨海開発部海上公園計画担当課長◆佐藤敏之

東京港に浮かぶ、ごみと建設発生土で埋め立てられた「ごみの山」に苗木を植え、美しい森に生まれ変わらせる計画が「海の森」プロジェクトである。
資源循環型の森づくり、市民参加の協働による森づくりをコンセプトに平成28年度の一部開園を目指して整備が進んでいる。


はじめに

海の森プロジェクトは、ごみと建設発生土で埋め立てられた中央防波堤内側埋立地の東側88ヘクタールの海の森公園計画地を、植樹活動によって緑あふれる美しい森に生まれ変わらせる事業である。海の森公園は、平成17年2月の東京都港湾審議会答申により基本構想が打ち出されたのち、平成19年2月に海上公園計画を告示、平成19年度に整備着手した。現在、平成28年度中の一部開園(約50ヘクタール)を目指して整備等を進めているところである。
本稿では、海の森公園の現況と、その普及啓発のための取り組みの一つである「東京都海の森倶楽部」について報告したい。

海の森事業の2つの視点

海の森事業は、「資源循環」と「都民協働」という2つの重要な視点をもった森づくりである。
そもそも海の森公園の計画地は、昭和48年から昭和62年にかけて23区内で発生した1,230万トンものごみが埋められている場所で、建設発生土により地形造成を行っているほか、植栽基盤層には都内の公園や街路樹等の剪定枝葉からつくった堆肥や浄水場発生土を混入している。海の森公園は、こうした資源を循環させ、都民が自らの手で豊かな森をつくり、次の世代に継承していくことを重要な狙いとしており、次に示す手法により公園整備段階での都民参加を実現している。
植栽基盤が整備された場所に、次年度の秋と春に公募によって都民参加による植樹を行ってきた。平成20年度以降、平成26年度末までに2万人もの参加を得て、22万7,000本以上のスダジイ、タブノキ、エノキなどの苗木が植えられている。これらの苗木づくりについても、平成19年度からボランティアの公募を開始し、ボランティアの皆さんに、ドングリを拾い、畑に種をまき、発芽した苗を1本ずつ鉢に移して育成を管理するといった作業を担ってもらっている。平成26年度までに延べ207人、2万本以上の苗木が作られ、学校や企業にも呼びかけ、これまでに28の学校、68の企業等でも同様の取り組みが行われてきた。また、海の森事業を「緑の東京募金」の事業メニューの一つに位置づけ、平成19年度から広く募金を行い、22年度末に目標額(5億円)を達成した。現在、この募金を充当して植樹用苗木の購入などを行っている。

「海の森公園」づくりとマネージメント

■図1:海の森公園計画地

■図2:海の森公園完成予想図

都では、海の森事業の一つとして海の森公園の一部開園を目指し、その時期や範囲、それまでに整備すべき施設(機能)等を整理し、平成24年度に方針決定を行った。平成26年度末現在、造成は37ヘクタール、植樹は34ヘクタールが完了し、初期に植えた苗木はすでに樹高数メートルに達している。平成27年度秋、最後のボランティアの手による植樹(3ヘクタール、1万8,000本)を行う予定であり、併せて27、28年度も整備工事により、当公園の一部開園(約50ヘクタール)を目指している。整備内容としては、供用開始時の活動拠点となるビジターセンターやトイレ3棟、園路や駐車場などを想定している。
海の森公園のマネージメントについては、港湾審議会を得て定められた「海の森の基本構想」に基づき、「協働」をテーマとして、下記(抜粋)を掲げている。
・基盤整備は東京都が行い、その上で展開する森づくり、身近な施設づくり、運営などの活動を、都民、企業、NPO等と協働で行う。
・初期の段階では東京都が中心的役割を担いながら協働事業を先導していくが、より多くの都民、企業、NPO等の参加を得ながら、協働参加者の自主性を拡大させていく。
・海の森公園を長期にわたってつくり、育て、守り続けるための協働参加のしくみをつくる。
平成24年秋の「第29回全国都市緑化フェアTOKYO」では、海の森公園がメイン6会場の一つに位置づけられ、会期中には植樹や特別公開に加え、ガイドツアー、クラフト体験などさまざまな催事を企業やNPOと連携して実施した。これを通じて、海の森公園に親しんでもらうための現地解説の有効性や催事への参加者が高い満足度を得ていることが再確認できた。また、さまざまな企画を実施する上で企業やNPOとの連携が有効であることなどを検証することができた。

「東京都海の森倶楽部」の設置

このような経緯をふまえ、海の森公園における企業等との協働に関する新たなしくみとして「東京都海の森倶楽部」(以下「倶楽部」という)を設置した。以下に、東京都海の森倶楽部基本方針で整理した倶楽部の概要を紹介したい。
倶楽部は、民間活力の導入により、都内のみならず広く国内外に海の森公園事業の情報発信を実施するとともに、多様で魅力的な行催事や樹林地等の育成管理の機会を広く都民に提供し、都民サービスの向上を図ることを目的として設置するものである。東京都は、企業、NPO、学校等の団体が、魅力的な行催事等を行うための意見交換を行うプラットフォームとして倶楽部の設置を行い、東京都はその事務局を務める。
また、海の森公園の普及啓発および樹林地等管理に関する企画案を持ち、それを実行する意欲を持つ企業、NPO、学校を倶楽部会員として公募を行い、意見交換の場に出席してもらい企画案等について意見を述べてもらうほか、企画案の実施に努めてもらうこととしている。
こうした倶楽部会員の意見交換を通じて提案され、海の森公園の普及啓発や良好な樹林地等の形成について効果的であると都が認め、実施の合意形成がなされた行催事、広報および樹林地等管理に関する取り組みについては、倶楽部会員事業と称する。海の森公園において都以外の者で行催事が行えるのは倶楽部会員のみとして(会員単体または会員複数が主催者となって実施に責任を負う)、行催事等は、広く都民に開かれたもの、都の計画に適合するものとしている。また、会員は自社のCSR活動等のために海の森公園を使用できるよう特典を付与している。
すでに倶楽部は平成25年12月に会員を初回公募、想定を大きく上回る40の企業や団体でスタートし、平成27年度本原稿の執筆時までに、「聞き書き甲子園」「国際森林デー植樹」「ランニングイベント」等、24回、5万人以上の皆様にご来場いただいており、また、会員数も48団体に増えている。
海の森公園は平成28年度中の一部開園を目指して、この秋に最後の植樹を終え、公園整備を進める予定である。そして、開園後のマネージメントについては、協働がますます進むよう、倶楽部会員を始めとして都民の皆様のお知恵を借りながら検討を図っていきたい。(了)

第366号(2015.11.05発行)のその他の記事

ページトップ