Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第33号(2001.12.20発行)

第33号(2001.12.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

●中国の海と港と首都を見て来た。高度成長にバブルの狂気をかけあわせたような、めくるめくスピードで中国は拡大しつつある。その速さは脆さも内包させる。

●村田良平大使の「中国の海洋活動」は、海を素材に、ともすれば友好を究極目的としがちな日本の俗流国際感覚に、冷静な国益判断の必要性というプロの視点を対置させる。編集子は、実感として、指摘の内容に強い共感を覚える。

●谷伸氏の「子孫に美田を残す」は大陸棚科学調査が持つ社会的意義の大きさを説く。大陸棚の価値は一方でそこに眠る資源の価値であり、国益の対立を必然化させる。指摘のように、機関・省庁の枠を越えて海洋に関する政策を自由闊達に議論できる場の設定が必要であり、本紙の使命もそこにある。

●北海道大学大泰司教授の「北方四島の生物多様性とその保全」は、一方で国益の対立する政治の舞台が、他方で類を見ない生命の多様性に満ちた世界であり、それを保全するための国際協力の重要性を説く。人は一方で争い、なお和すことのできる存在である。自然の豊かさに勝る人間の内的な豊穣さを持ちたい。

●「ウミニオフネヲウカバセテ  イッテミタイナ  ヨソノクニ」(「ウミ」三番)。この唄が昭和16年海軍当局の命令で創られた事を知る人は少ない。唄は創り手の意図を超えてそれ自身の生命を持つ。政治の意図を超えて、人々が、海を通じて諸外国に対する素朴な憧れと尊敬の念を持ちつづけることのできる世界を創りたいと思う。良いお年を。(了)

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