Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第337号(2014.08.20発行)

第337号(2014.08.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表((独)海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男

◆7月下旬に札幌で開催されたアジア-オセアニア地球科学会には三千人を超える研究者が集まり、会場は熱気に包まれた。アジアからの参加者には家族連れも多く、国際会議の開催には渡航費等の援助が不可欠だった頃とは隔世の感がした。学問の世界でも、アジアの時代の到来である。しかし、わが国の研究者による論文発表数は減少傾向にあるようだ。産業直結の出口戦略だけでなく、先の先を見すえた科学政策も必要に思う。
◆今号では、まず良永知義氏に水産動物の防疫に関する問題点について、貴重な提言を頂いた。新興疾病の国際的な拡散防止に向けた規制が必要となる一方で、疾病の有無が不当な貿易制限の口実となることも避けねばならないところに、国際獣疫事務局の困難さがあるという。加えて、養殖海産魚などを対象にしていない日本の輸入防疫制度の不備、水産業界自体の防疫認識不足、水産防疫の専門官不足など、良永氏による指摘は具体的である。海の幸に依存するわが国は水産防疫面でも世界をリードすべきである。
◆木村昭夫氏には航海訓練所の「大成丸」就航の話題を取り上げていただいた。新船は内航船乗務員の育成に特化したものだという。基礎素材物流の八割を担う内航海運は東日本大震災直後にも大きな役割を果たしたように、産業経済活動を維持する最重要インフラの一つである。人材育成、海技継承のフラッグシップとして、大いなる活躍を期待したい。
◆8月1日に政府は領海の外縁を根拠づける158の島の名称を決定した。すでに名称が決定している49の島に続くものである。地元における通称なども考慮したのでユニークな名称が多く、民俗学的にも興味深い。折しも、今号の最後のオピニオンは「離島経済新聞」を主宰する鯨本あつこ氏によるものである。島に暮らす人々は「離島」とは呼ばず「島」と呼ぶという一節には目を開かれる思いがした。個性的な島の魅力を丁寧にブランディングしていこうとする鯨本氏の姿勢に共感を覚える読者も多いのではないだろうか。(山形)

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