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オーシャンニューズレター

第30号(2001.11.05発行)

第30号(2001.11.05 発行)

韓国における沿岸及び海洋資源開発の現状と課題

韓国海洋研究院(KORDI)沿岸港湾工学研究本部 責任研究員◆安 煕道

韓国は、総延長17,200kmの海岸線、国土面積の3倍を越える広大な大陸棚、3,400余個の島を有し、海洋生物資源、海底資源、海洋エネルギー、海洋空間利用などの沿岸海洋資源の開発についても、海洋環境保全とともに積極的に進められており、海洋国家・韓国をめざした戦略が国家レベルで進められている。

1.はじめに

韓国は三面の海に面し、昔から半島国あるいは海洋国といわれている。総延長17,200kmの海岸線と国土面積の3倍を越える約68万km2に達する広大な大陸棚ならびに3,400余個の島がある。「東海」は海底地形が急傾斜で、4,000m級の深海に至るが、平均水深は1,530m。中層、下層とも水温は1℃以下で、塩分濃度34プロミルの東海の固有海水があり、この固有水の上を流れる暖流は、冬期に東海中部海域で右旋回して鬱陵島(UleungIs)を経由、日本の沿岸流と混じる。一方、「西海」は一名「黄海」と呼ばれ、平均水深は44m、最深103mで、潮汐干満の差が甚だしく、干潟地のほとんどが西海岸にある。南海岸の水温は夏期には30℃以上で冬期でも10℃以下になることはない。平均水深は150mで、塩分濃度は黒潮の主流より低く、黄海よりは高い。これらの条件からして、韓国は沿岸海洋国家として伸張するための非常に良い条件を具備している。

2.韓国の沿岸海洋資源と開発現状

(1)海洋生物資源

韓国の漁業生産量は1960年代より平均約10%の成長をし、1999年には3,930千トンに達したが、その後、減少傾向を示している。近海漁業の中で最も規模が大きいのは東シナ海、済州島周辺海域での大型施網漁業である。他方、養殖業の占める比重が増大してきており、海藻類や高級魚種に対象が拡大している。また、1998年から2007年までの10カ年計画で、統營(Tongyong)の海洋牧場計画を推進している。

(2)海底資源
■図1 韓国沿岸の鉱区
図1 韓国沿岸の鉱区

1970年に海底鉱物資源促進法を制定し、大陸棚30万km2を7つの区域に分割して、1969年と70年に外国石油会社と開発協約を締結した。その当時の鉱区別粗鉱権内訳を調べるとGULFが2、4鉱区、SHELLが3、6鉱区、TEXACOが1、5鉱区、KOAMが7鉱区を分担し、今まで総17万L-kmに達する地域で弾性波探査を実施した(図1)。その後34坑の試掘を行って、一部でガスと油が発見されたが、経済採算に合うほどのものでなかった。最近、韓国石油公社(KNOC)は国内大陸棚である6-1鉱区で石油ガス層を確認し、現在3-D物理探査を行っており、その可能性が期待されている。

一方、深海底鉱物資源の開発計画については1983年より検討をはじめ、1989年から実際の探査活動が開始された。開発計画は三段階に区別され、第一段階(1990~1993年)は、毎年3~4回のクルーズで50万km2の面積において探査活動を実施し、1994年2月に国連に鉱区登録を済ませた。第二段階(1994~2000年)では同鉱区海域で精査および環境影響評価を実施し、さらに採鉱、製錬の実用化技術の確立を図る。第三段階(2001~2010年)では商業生産のための施設投資と生産基盤の構築に力点を置く計画である。今までの探査活動には約7百万ドルが投資され、毎年の調査にはKORDIの調査船Onnuri(1,400トン)が参加している。

(3)海洋エネルギー

韓国では、潮力発電について仁川港で平均大潮差は9mにも達する西海の潮位差を利用する案が古くからあった。1930年には江華島外側の潮力発電計画が策定され、166万KWの賦存量が確認されている。1970年代に入って10カ所の候補地の調査が行われ、第一の潮力発電所の候補地として加露林(Garolim)湾が選ばれ、1993年にKORDIはフランスのSogreah社とともに加露林潮力発電所の最適開発方針を検討した。その内容は、約2kmの防潮堤を建設、発電量48万KW、年間発電量883GWh、総建設費7.5億ドルというもので、費用便益費(B/C)の0.84で妥当性のあることが示された。しかし、実際の建設時期はまだ不明であり、莫大な建設費用の調達方案として民資誘致の方法も検討している。波浪エネルギーについては、東海岸に賦存量は大きく、KORDIの試算では、賦存している総波浪エネルギーは約500万kwと推計されている。

(4)海洋空間利用

韓国の西海岸や南海岸の入江の多くは堆積物により比較的水深が浅く、特に干満の差の大きい西海岸では広い干潟が形成されている。干潟は水産業にとって貴重な場所であるが、他方でこのような地形は干拓や埋立にも適しており、農業用地と工業用地の需要の伸びも大きく、土地造成面積は5,792km2と推算され、これらの80%以上が西海岸に位置している。

また、増加する航空需要の処理能力の拡大に対処するため、首都圏国際空港はソウルより西へ50km離れた中部の仁川海域の永宗島(Youngjongdo)一帯の干拓地に建設された。新空港の最終的な規模は面積4,742ha、滑走路4本、88万m2の旅客ターミナルビルなどで、うち第一期計画で1,521haの埋め立てを行い、2001年の開港時には3,750m滑走路2本と、26万m2の旅客ターミナル等を建設、2,700万人の処理能力を持つ。第二期計画(2020年)では新たに800haの埋め立てを行い2本目の滑走路と旅客ターミナルビルも40万m2に拡張、1億人程度の処理能力を備える。

一方、海洋リゾート開発では、済州島が有力候補地で、温暖な気候で知られ韓国唯一のミカン産地でもある。島の南側にはソフトコーラルが発達していて水中景観鑑賞や海釣りを楽しむことができ、大規模観光団地の総合開発が完成すれば、韓国のナポリになると言われている。

(5)海洋環境保全

今までの事前予防および保護を中心とした政策から、1992年リオ国連環境開発会議以降は環境親和的に持続可能な開発原理をもととして、環境復元を含むようになった。1999年2月には湿地保存法が、同年8月には沿岸管理法が制定され、沿岸をより効率的に保存・利用することが可能になった(図2)。また、1977年に海洋汚染防止法を制定し、1978年に国際海洋汚染防止条約を批准した。また、政府は最近、海洋汚染防止5カ年計画(2001~2005年)を樹立して段階的に海域の浄化のための主な施策を展開して行き、さらに油類汚染事故に対備して国家間・国際機構との環境協力ももっと強化する計画である。

■図2 韓国沿岸域の総合管理
図2 韓国沿岸域の総合管理

3.まとめ

韓国における海洋開発の活動は未だ成長期であり、海洋への予算も先進国に比べ相当小さい。しかし韓国も海洋国家として伸張する可能性は大きい。韓国が海洋関連の行政組織を統合して「海洋水産部」を1996年8月に出帆させたことは大きい出来事であり(図3)、そして1999年12月には海洋開発戦略として "OK21"(Ocean Korea 21)が策定され、またこれに先立つ1996年には「21世紀海洋水産ビジョン(1997~2011)」を樹立した。そこでは海運強国、水産大国、海洋科学技術国家、人間と海洋環境生態系の共存する海洋環境国家を基本コンセプトとしている。さらに2010年には"海洋EXPO"を麗水(Yeosui)で開催することを現在、検討・推進中である。(了)

■図3 海洋水産部組織図
図3 海洋水産部組織図

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