Ocean Newsletter
第302号(2013.03.05発行)
- 岩手県知事◆達増拓也
- 宮城県知事◆村井嘉浩
- (財)国際高等研究所チーフリサーチフェロー◆田中 克(まさる)
- ニューズレター編集代表((独)海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男
みやぎの観光復興について
[KEYWORDS]震災復興/観光復興と地域づくり/海の恵み宮城県知事◆村井嘉浩
震災から2年が経過しようとしている。津波で大きく被災した沿岸部でも、観光復興に向けて前に進んでいる。
「海」は宮城の観光にとって、大きな観光資源の一つであり、海と共存し、海を大事にしながら、新たな地域づくりと県土の復興に取り組んでいきたい。
はじめに
東日本大震災から2年が経過しようとしています。これまで日本各地から、また、世界各国から、たくさんの皆様に、物心両面にわたり御支援、御協力をいただき、心から感謝申し上げます。
震災以降、宮城県では、10年間の復興の道筋を示す『宮城県震災復興計画』を策定し、県民一丸となって復興に向けて取り組んでいます。この計画では、10項目の復興のポイントを掲げていますが、その一つが、「多様な魅力を持つみやぎの観光の再生」です。
宮城県の観光は、すでに内陸部を中心に震災前と同様の観光客の受け入れを行っています。また、津波で大きな被害を受けた沿岸部でも、震災の体験を後世に伝える「語り部」の取り組みが行われるとともに、復興市、仮設商店街がオープンするなど、観光復興に向けて、着実に歩みを進めております。
海と観光
■日本三景松島
■ゆりあげ港朝市
宮城県にとって、海は大きな観光資源の一つです。日本三景松島や陸中海岸国立公園などの風光明媚な観光地、世界三大漁場と呼ばれる三陸沖でとれる豊富な魚介類、そのなかでも三陸塩竈ひがしものと呼ばれるまぐろや日本一の閖上(ゆりあげ)の赤貝などの海産物、地引き網をはじめとする漁業体験やシーカヤックの乗船など、わが県の食と四季折々の観光の魅力が満載です。
これらの観光資源も、震災で大きな被害や影響を受けました。漁港が被災し水揚げができなくなったり、周辺の水産加工場も津波で被害を受けました。また、養殖棚や体験観光で使用していた船が流失したりもしました。何よりも、沿岸部に暮らしていた多くの人たちが、直接被害を受け、観光客を受け入れることが困難になりました。津波は沿岸部の観光資源をすべて飲み込んでいきました。
しかしながら、全国からの御支援のもと、復興は着実に進んでいます。海産物の水揚げも徐々に回復し、グリーンツーリズムや教育旅行の受け入れも再開しています。海から、宮城の魅力が再生されようとしています。国では、三陸復興国立公園(仮称)の構想が議論されるなど、被災した沿岸部の復興に向け、様々な動きも出てきています。宮城県では、これらの観光資源を大事に磨き上げながら、被災地域のまちづくりとあわせ、交流人口の増大による経済の活性化と観光復興に向けて、引き続き全力で取り組んでまいります。
先人の業績
今年は、伊達政宗公の家臣支倉常長が、スペインを目指し、石巻市の月の浦港を出帆してから400年目となる記念の年です。実は、支倉常長が、出帆する2年前にも大きな地震がありました。慶長三陸地震(1611年)といわれる地震であり、このときにも、津波で沿岸部が壊滅的な被害を受けています。政宗公はその障害にも志を失うことなく、慶長遣欧使節団を見事に実現させています。当時の海洋技術を考えれば、木造帆船「サン・ファン・バウティスタ号」で太平洋を横断させた、この業績がどれほどの困難を乗り越えたものか、どれほどすばらしいものか、想像に難くありません。私たちは、先人たちが、苦難を乗り越え成し遂げた業績を改めて評価しながら、今後の復興に取り組んでまいりたいと考えております。
仙台・宮城デスティネーションキャンペーン
宮城県では、今年の4月から6月にかけて、『笑顔咲くたび 伊達な旅』のキャッチフレーズのもと、「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(DC)」を開催します。これは、JR6社と地元自治体が共同して行う全国規模の大型観光キャンペーンであり、わが県単独では、2度目の開催となります。
今回のDCは、震災で全国から寄せられた多くの御支援に感謝しながら、震災から復興した宮城の姿をご覧いただき、また、海の恵みも含め、復興する新しい宮城の魅力を御堪能いただきたいと考えております。
県内各地では、DCに向けて様々な趣向を凝らした取り組みを準備しております。特に、この季節は、「桜」「菜の花」「ツツジ」などが咲き誇るすばらしい時期です。牛タンやお寿司などのご当地グルメも満載です。さらには、豊かな泉質を誇る温泉も魅力的です。そして、おいでいただく皆様をおもてなしの心を持って、県民あげて、笑顔でお迎えいたします。この機会に、是非、仙台・宮城にお越しください。お待ちしています。
結びに
■宮城県観光キャラクター「むすび丸」
海は、私たちに大きな試練を与えました。大きな悲しみも与えました。しかしながら、海は大きな恵みを与えてくれていることも事実であります。海と共存し、海をいつくしみながら、新たな地域づくりと県土の復興に取り組んでまいりますので、さらなる皆様の御支援と御協力をお願い申し上げます。(了)
第302号(2013.03.05発行)のその他の記事
- 岩手・三陸の「海洋エネルギー資源」を生かした復興の実現 岩手県知事◆達増拓也
- みやぎの観光復興について 宮城県知事◆村井嘉浩
- 津波の海に生きる三陸の未来:森里海連環と防潮堤計画 (財)国際高等研究所チーフリサーチフェロー◆田中 克(まさる)
- 編集後記 ニューズレター編集代表((独)海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男