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オーシャンニューズレター

第2号(2000.09.05発行)

第2号(2000.09.05 発行)

アメリカ議会"Oceans Act of 2000"を議決、8月9日、大統領署名により正式成立

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アメリカ議会は、6月26日に上院、7月25日に下院でそれぞれOceansAct of2000を議決した。同法は、上院ではErnestHollings議員(民・サウス・カロライナ)が、下院ではCurtWeldon議員(共・ペンシルバニア)らが3~4年前から毎年議案として提出してきたもので、ついに今年、採決のうえ承認した。これを受けてクリントン大統領は8月9日これに署名し、同法は正式に成立するに至った。本法により、海洋政策審議会(COP:Commissionon OceanPolicy。下記の理由により、第2のStratton委員会とも呼ばれる)を設置、アメリカの海洋・沿岸域における諸政策、諸活動を包括的にレヴューし、提言がまとめられる。

COPは上下両院議員を中心に、有識者らを加えた16人の委員で構成されることになっており、全国5地区(五大湖を含む北東部、南東部、ハワイ等を含む南西部、北西部、メキシコ湾岸)で公聴会が開催される。2001年初頭には発足させ、大統領および議会に対して、18ヶ月後までに、現在の海洋関連諸施策を全体的に見直して、包括的な海洋および沿岸域政策のあり方について勧告をとりまとめることになる。討議の対象事項は以下の諸点である。

  1. 既存および計画中の人的資源、船舶、人工衛星等の基盤および技術の評価。
  2. 連邦政府による既存および計画中の諸活動の見直し、重複を解消するための勧告。
  3. 法制度の見直し、法制の不一致や矛盾が与える影響の検討、不一致解消のための勧告。
  4. 既知のおよび想定される需要と供給の見直し。
  5. 連邦、州、自治体政府と、産業界との関係の見直し、および勧告。
  6. 海洋および沿岸域に関する新製品、諸技術または市場開発、投資機会に関する見直し。
  7. 連邦および州政府による過去および実施中の施策の実効性の強化、および体系化、統合化に関する見直し。
  8. 海洋および沿岸資源に関する理解、管理、保全、利用およびアクセスの改善に必要な連邦法制および連邦政府の実行組織の改正に関する勧告。
  9. 連邦政府機関相互の海洋政策に関する既存の協力メカニズムの実効性と適性の見直し、ならびに本審議会の勧告に対応しかつ実施させるために必要なメカニズムの実効性の改善、改革に関する勧告。

この審議会の活動のために2001会計年度から3年間で計6,000,000ドルの予算を計上。そして、大統領は同審議会の勧告を受領後、120日以内に議会に対して、その勧告に対する行政措置について報告するとともに、2年ごとに議会に対して海洋・沿岸域に関する政府の全活動についての報告が義務づけられた。

ところで、アメリカの海洋政策を全面的に見直すことは、実に30年ぶりのことである。1966年に設立されたStratton委員会が3年がかりで報告書をまとめ、1970年の海洋大気局(NOAA)の設立をもたらし、今日の海洋法制のランドマークとなる諸法規、たとえば、1972年のNationalMarine Sanctuary Act, Coastal ZoneManagement Actなどの基礎を築いた。全米海洋研究教育機関連合(CORE:Consortiumfor Oceanographic Research andEducation)では、同法案の議会通過はアメリカの海洋政策の近代化を目指す努力にとって偉大な前進である、と歓迎の意を表している。

元海軍提督でCORE会長のJamesWatkins氏は、「海洋政策の意思決定者にとって、この審議会ほど有効な機会を提供してくれる場は他にない。海洋資源の探査・保全・利用努力に関する政策の現状を検証し、次のミレニアムに向けて指針を確立することは極めて意義のあることである」と述べている。また、Weldon議員は1998年の国際海洋年(Yearof theOcean)になぞらえて、2000年を"Yearof OceanPolicy"と呼んでいるという。
その1998年に、アメリカは正副大統領に関係閣僚や学界、産業界の重要メンバーを一堂に集めてNationalOceanConferenceを開催し、国家海洋政策の問題点を討議したが、さらに大統領は関係閣僚に対して海洋政策の現状と課題の整理を命じ、1999年にTurningto the Sea:Looking America'sFutureと題する報告をまとめさせた。そうした間に、議会では上記のような法案審議を行ってきたわけである。

ところで、わが国の現状を見るに、総理大臣の諮問機関である海洋開発審議会は消滅し、科学技術審議会の一分科会に格下げが決まっている。他方で、省庁再編による国土交通省の出現、海岸法の改正に続く港湾法、漁港法、公有水面埋立法等の改正、水産基本法制定の動きなどがある。21世紀の日本の海洋・沿岸域の開発、保全、利用に関する包括的な政策や基本的法制の整備を論議する時、上記のようなアメリカの動きに対して、わが国では何か重大なことが欠如しているのではないかと危惧される。

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