◆ニューヨークとワシントンのテロ事件以来、世情は騒然として落ち着かない。国内を見ても、世界を見ても、殺伐とした暗いニュースの多さに心が重い。唯一神への絶対的帰依から生じた非寛容と狂信を目の当たりにして、八百万の神々の寛容の世界に住む日本人はほとんど言葉を失う。とはいえ、第二次大戦末期、われわれも自殺攻撃の主体であった歴史を忘れてはなるまい。狂信を生むのが、宗教ではなく教育であるとすれば、それを防ぎうるのもまた教育の力か。
◆海を舞台にして、理ではない智恵の重さを改めて見直すことの意義を指摘する秋道氏のオピニオン、海での生業と結合しながら発達してきた伝統芸能が、多様でありながらおのずとある種のまとまりを示すことを指摘し、それを統合のシンボルとして活用することを述べる疋田氏のオピニオン、海洋民族である日本人の武力の行使の歴史でもある海賊の存在を、海洋民族の生きてきた歴史そのものとしてとらえ、その歴史を海洋の基本的な価値を見直すことにつなげることを提唱する村上氏のオピニオン、インフォメーションの和船・船大工の情報、いずれもわれわれの歴史と智恵の成熟の重みを伝え、理による非寛容の満ち満ちた今日の時代について考えさせるところ大である。
◆さまざまな出来事が過ぎていく中で今年の秋も深まった。「みそぎして乗る伽衆や神輿船」(宮本さかえ)。すべての死者に黙祷。(了)
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