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第299号(2013.01.20発行)

第299号(2013.01.20 発行)

地域漁業管理機関(RFMOs)の重要性とその責任について

[KEYWORDS] リオ+20/地域漁業管理機関(RFMOs)/マグロ類
水産庁資源管理部国際課国際協定第2班 課長補佐◆金子守男

2012年6月に開催されたリオ+20の成果文書では、地域漁業管理機関(RFMOs)による漁業管理における透明性と説明責任の必要性が指摘されている。
世界の漁業資源は総じて過剰利用の状況にあり、国際的な漁業資源の保全及び管理におけるRFMOsの重要性やその責任は年々増加しており、今後は、RFMOsによる資源評価や保存管理措置の実施において透明性を図り、適切な説明責任を果たしていくことが一つの課題となっている。

リオ+20成果文書における漁業分野の位置付け

2012年6月、リオデジャネイロ(ブラジル)において「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催された。リオ+20会議は、1992年の「国連環境開発会議(地球サミット)」(気候変動枠組条約や生物多様性条約が署名されるなど、今日に至る地球環境の保護や持続可能な開発の考え方に大きな影響を与えた会合)から20周年を迎える機会に,地球サミットのフォローアップを行うことを目的に開催が決定したものであり、本会議においては、各国の首脳・閣僚が今後10年の経済・社会・環境のあり方を議論して、その結果を成果文書の形で取り纏めました。
この成果文書では、行動的枠組みとフォローアップ章において、「海洋分野」を含む26分野別の取り組みについて合意され、漁業関連では、漁業資源の維持および回復や違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)の廃絶について規定されるとともに、地域漁業管理機関(RFMOs)による漁業管理における透明性と説明責任の必要性が指摘されています。
本稿では、リオ+20の成果文書でも言及されているこのRFMOsの国際的な漁業資源の保全および管理における重要性やその背景等について紹介します。

世界の漁業資源とその管理体制

漁業資源は、鉱物資源等とは異なり再生産が可能で、上手に保存管理措置を講じながら生産活動を行えば、半永久的に資源の持続的利用が可能です。しかしながら、近年の国際的な水産物需要の高まりに伴う漁獲圧力の増大により、世界の漁業資源はその一部を除いて、総じて過剰利用の状況にあります。
地域漁業管理機関(RFMOs)は、各海域(例:太平洋など)において、この漁業資源の持続的利用を実現することを目的として、条約に基づいて設置される国際機関であり、対象資源の保存管理措置を決定および実施しています。近年、その必要性から、世界の各海域で新たなRFMOsが設置されています。


世界の海を5つのRFMO (=Tunas Regional Fisheries Management Organization)が管理する。わが国はすべてのRFMOに加盟している。 RFMOは魚種ごとの資源状況等を踏まえ種々の資源管理措置を実施、わが国にとって特に重要なのは、大西洋くろまぐろを管理する「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」、わが国排他的経済水域を管理する「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」。

マグロ類の地域漁業管理機関(RFMOs)について

マグロ類は広い大洋を回遊する魚類であることから、マグロ漁業の関係国は、マグロの種類および回遊海域ごとにRFMO※を設立し、資源の状況等に応じたIUU(違法・無報告・無規制)漁業起源の水産物に対する貿易制限措置や漁獲量制限等の資源管理措置を実施しています。わが国は世界最大のマグロの消費国として、世界に5つあるマグロ類RFMOの全てに加盟し、責任ある資源管理と持続的利用の取り組みに積極的に関与しています。しかしながら、国際的な枠組みの外で無秩序に操業を行うIUU漁業や漁獲圧力の増加等によって、一部のマグロ類の資源状況が悪化している状況です。
このため、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)をはじめ各海域のRFMOにおいては、科学的資源評価を踏まえた厳格な保存管理措置を実施し、各国がこれを確実に遵守する体制の確立に向けて、従来にも増して積極的な取り組みが行われており、その結果、一部のマグロ類について資源回復の傾向が報告されています。2012年11月に開催されたICCAT年次会合においては、大西洋クロマグロの東資源に関して、科学委員会からの勧告に従い、2013年の漁獲可能量(TAC:Total Allowable Catch)を12,900トンから13,400トンに微増ながらも500トン増加することに合意しました。このことは、ICCATにおいて過去10年以上に渡って保存管理措置の強化を継続してきたことが、マグロ資源を回復させる転換点となったことを意味するものであり、持続的利用が可能な水産資源は、厳格で適正な保存管理措置を講ずれば必ず資源回復を図ることができ、そのために地域漁業管理機関が適正に機能することを証明しました。

おわりに

漁業は、食料の安定供給のほか、雇用、文化および経済等にとっても極めて重要な役割を担っており、各国が全ての漁業資源を適切に保全管理し、将来的にも持続的に利用することを実現することが世界の共通目標となっています。この中で、国際的な漁業資源の保全および管理における、RFMOsの重要性やその責任は年々増加しており、今後は、資源評価や保存管理措置の実施において透明性を図り、説明責任を果たしていくことが、国内および国際的にも求められています。(了)

※ 水産庁HP(http://www.jfa.maff.go.jp/j/koho/bunyabetsu/index.html#a-12)および、本誌162号(2007.5.5)原田雄一郎著「行動せよ日本~まぐろ資源管理で発揮する日本のイニシアティブ~」(https://www.spf.org//jp/news/151-200/162_3.html)を参照下さい。

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