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第285号( 2012.06.20 発行)
第285号(2012.06.20 発行)

明治初期からの海図等の資料が明らかに

[KEYWORDS] 海図アーカイブ/水路測量/海洋情報
元(一財)日本水路協会調査研究部長◆熊坂文雄

明治初期から140年以上にわたって作成された海図・古地図・水路誌などに海洋に関する貴重な資料について、これを保管してきた海上保安庁海洋情報部と日本水路協会は日本財団の支援により、電子化による一般公開を目的とした「海洋の歴史的資料等の保存及び公開」事業を実施した。その概要と歴史的資料について紹介する。

はじめに

海上保安庁海洋情報部(以下海洋情報部)には、明治初期から140年以上にわたり海図を作成するために行った水路測量や海象観測等に関して、調査機器や海図等の歴史的な資料が多く保管されている。一般財団法人日本水路協会では、海洋情報部の東京都中央区築地から江東区青海への移転に際して、公益財団法人日本財団の支援を受け、平成22年度から2年をかけて、海洋情報部と共同でこれらの歴史的資料を精査し電子化して一般公開することを目的とした「海洋の歴史的資料等の保存及び公開」事業を実施した。本稿では、この事業の概要と確認された歴史的資料について紹介する。

事業の主な内容

■海図アーカイブ。写真はインターネットによる資料検索システムの画面イメージ
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KIKAKU/kokai/kaizuArchive/index.html

本事業では、大学、学識経験者等の専門家7名からなる委員会(委員長:斎藤靖二神奈川県立生命の星・地球博物館館長)に諮りつつ、海洋情報部が保有する明治初期から昭和20年頃までの海図、古地図、水路誌などの歴史的資料等のほか、国立国会図書館や国立公文書館、さらに大学や地方自治体の図書館が所有する資料も対象として調査等を行った。2年間で調査を行った資料は海洋情報部が保有するもので約1万2,700点、海洋情報部以外も含めると約1万3,500点にも及んだ。
(1)資料の電子化と公開
海図、航空図、伊能図謄写図などの図類、蔵書古文書など大量の歴史的資料について調査を行い、保存処置としてマイクロフィルムに記録するとともに電子化を行った。また、電子化した資料全てを検索することができる資料検索システムを整備するとともに、インターネット配信システムを整備し全資料の目録の他に明治初期の海図や伊能図謄写図など特に重要な資料約190点をインターネット経由で海図アーカイブとして閲覧できるようにした。
(2)展示会の開催
本事業の調査成果を元に、海洋に関する理解の増進を図るため、神戸(平成24年2月~3月)および横須賀(平成24年3月)において海洋の歴史的資料の企画展「維新と海図」を開催した。企画展では、歴史的価値が高いと思われる明治初期(明治5年~明治13年)の海図レプリカを作成し、開催地に関係が深い海洋の歴史的資料と併せて展示を行い、延べ1,553人の入場者に来訪いただいた。
(3)歴史的機器の復元
海洋情報部には、カールツァイス社製一級図化機C5型(1940年製、航空写真を元に波浪を図化するために使用した機器)が分解されて保存されていた。これは世界的にも稀少な機器であったため、本事業の一環として、清掃し組み立て復元を行った。復元された機器は、現在海洋情報部海洋情報資料館※1に展示されている。


■図1
ペリー海図の部分、浦賀付近


■図2
観測野帳(フィールドノート)

本調査で確認された主な資料

・「米版海図183号」(図1)
米国で出版された東京湾の海図で、幕末1853~1854年(嘉永6~7年)に米国東インド艦隊司令長官ペリーが来航した際の測量成果を基に作成されている。旗艦サスケハナ始め、各艦船の投錨位置、日米和親条約締結場所、江戸幕府が設置した砲台や緯度経度などが記載されており、当時の日本にはない技術を使った貴重な海図である。
・「塩飽諸島実測図」作成の基となった観測野帳(図2)
日本が海図を作る技術を英国に学んでいた明治初期、日英合弁による瀬戸内海塩飽諸島の測量の観測成果を記録した観測野帳である。この観測野帳に基づき日本人独自の手で作成した図が「塩飽諸島実測図」(明治4年1月)であり、英国人の作成した図とほとんど一致する成果を得たことで、測量技術が認められた海洋情報業務史上特筆されるべき図である。「塩飽諸島実測図」は、大切に保管してきたが、大正12年の関東大震災による火災で焼失している。

資料の閲覧について

本事業で確認された資料は、海上保安庁海洋情報部庁舎(江東区青海)1階の海洋情報資料館で資料検索システムにより閲覧できる。開館は平日のみ午後1時~5時(入場無料)となっている。また、同じフロアには「海の相談室」※2があり、海に関する質問や相談を受け付けている。(了)

※2 「海の相談室」=相談受付時間(平日のみ)午前10時~12時・午後1時~5時 
お問い合わせ:03-5500-7155、03-5500-7157(FAX)
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