◆地球からながめる宇宙には無数の星と星座がある。人類はそれらのなかから航海の指針となる星をたくみに利用した航海術を編みだしてきた。北極星や南中時の南十字座はそれぞれ真北と真南を指す。こと座、オリオン座、サソリ座、ワシ座などもよく使われた。こうした知識を活用し、人類がハワイやイースター島に到達したのは紀元4、5世紀のことである。本号でワイン・ライターの飯山ユリさんが取り上げたニュージーランドに人類が到達したのはいまから1,000年ほど前に過ぎない。◆21世紀の今日、今度は宇宙から地球上のさまざまな事象を観測する時代となった。NPO法人宇宙利用を推進する会の木内英一さんは、宇宙空間が人類にとって多目的に共同利用すべき場であるとの認識に基づく提案をなされている。すなわち、各国が打ち上げたリモートセンシング衛星による観測情報を、地球温暖化などの環境観測、津波などの大規模災害の監視、テロや大量破壊兵器拡散の監視など多様な目的に有効利用することが期待されている。そのためにも欧米諸国との連携による衛星情報の相互利用を進めるべきということだ。この点でC-SIGMAプログラムへの加盟により、航海船舶の安全性や監視能力を格段に増すことが期待される。◆海上自衛隊幹部学校の後瀉桂太郎さんは、昨今の米国による国防費削減政策がわが国の安全保障に及ぼす重大な影響について警告とも取れる提案をされている。本来、保障されるべき「海洋の自由」が一部の国ぐにの挙動により阻害されつつあるからだ。これは米国の軍事面での認識にほかならないが、軍事予算削減によりアジア・太平洋方面における軍事力の配備に大きな影響が及ぶことが予想される。とりもなおさず、わが国の対応にものっぴきならない変化が起こるということだ。アクセス阻止/エリア拒否(A2/AD)という用語をはじめて知ったが、1609年にグロティウスが提唱した「海洋自由の原則」論(Mare Liberum)の時代から500年後の今日、海洋において権益拡張やテロ行為、海賊行為、海峡の閉鎖措置などが東シナ海、南シナ海、ホルムズ海峡、紅海などで発生し、局地的に緊張感が高まっている。海洋空間は先述した宇宙空間とともにコモンズ的な利用の場である。人類はこの先も最重要な枠組み作りの課題として取り上げてゆくべきだろう。◆ニュージーランド北島沖にあるブドウとワイナリーの島ワイヘキ。海のすぐ近くのブドウ畑は世界のどこにでもあるような景色ではないことを飯山さんが振り返っておられる。オークランドしか行ったことのないわたしも次回はぜひとも訪れてみたいとおもった。(秋道)
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