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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第274号( 2012.01.05 発行)
第274号(2012.01.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男

◆正月一日(むつきついたち)は、まいて空のけしきもうらうらとめづらしう、霞みこめたるに、世にありとある人は、みな姿かたち、心ことに繕ひ、君をもわれをも祝ひなどしたるさま、ことにをかし。これは清少納言による枕草子第三段の書き出しである。元旦に聖寿をことほぎ、わが身の幸せを思うのは千年の時を経て変わらない。しかし、大地の大きな揺らぎと大災害、加えて政治、経済の大きな混乱を経験した今、少しでも多くの人々が新年をこころ安らかに迎えられたことを願いたい。
◆社会が新しいレジームに向かう混乱期にあって、最も必要とされるのは、過去と現在をよく知り、未来を紡ぎだす叡智である。高度な専門性を持って情報を判断し、統合し、未来を企画する力と言ってもよいであろう。今号では、そのような力を発揮し、世界をリードしているジェーン・ルブチェンコ博士に気候サービスについて寄稿していただいた。博士は海洋生態系の研究において世界で最も多く引用されている生態学者の一人であり、同時に米国商務省次官、米国海洋大気庁(NOAA)長官として地球環境問題に取り組んでいる。ここに2011年度のブループラネット賞受賞時の言葉を引用させていただこう。「生態学者として私は、地球規模の変化が自然ならびに人々に及ぼす影響を解明し、その解決策を見出すことに打ち込んできました。一公務員としては、科学的根拠に基づき、解決策を実施し、人々が十分な情報に基づいて判断できるよう意識を向上させ、人々に情報を提供することに取り組んでいます。そして母として、また祖母としては、未来の世代に健康な青い地球を残すことを切に希望しています。地球社会として、一体となって行動し、目的意識を持ち、切迫感と希望をもって共に働くことによってのみ、私たちは、私たちの地球により持続可能な未来をもたらすという目標を達成できるのです」(http://www.af-info.or.jp/blueplanet/doc/prof/2011profile-j.pdf
◆2012年は平成20年度に策定された海洋基本計画を見直す年にあたる。総合海洋政策本部において、この作業を主導する小野芳清氏に、今後の海洋政策のポイントとなる項目について解説していただいた。海洋資源、(再生可能なものを含む)エネルギー開発と産業育成、安全安心の確保、北極海航路などが挙げられている。ルブチェンコ博士が指摘する海洋環境保全に加えて、放射性核種の海洋生態系への移行が食の安全の視点から危惧されており、総合海洋政策本部にはこの面での政策リーダーシップも期待している。武井俊文氏は、産業界の立場から、わが国の広大な排他的経済水域に存在する鉱物資源開発を加速するにあたって、産官学の連携の重要性を指摘する。自立的な先進ビジネスモデルとするには、当面、国の支援が不可欠である。次期の海洋基本計画では、より具体的なスキームが描かれることを望みたい。(山形)

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