◆陸や海の植物は、野生種・栽培種を問わず、われわれ人間の食料源として利用されてきた。昨今、植物は食料だけでなくエネルギー資源としても注目されている。それがバイオエタノールである。2007年1月、G.W.ブッシュ米国大統領がトウモロコシによるバイオエタノール産業の振興を提起した影響で、小麦畑がトウモロコシ畑に転用され、挙句の果てに小麦価格が上昇した。ブラジルではトウモロコシ畑用に森林が破壊された。◆連鎖の波及効果は、今回の福島第一原子力発電所からの放射能汚染にも如実にみられた。放射能汚染が土壌や飼料を通じてわれわれの食に多くの問題を投げかけている。代替エネルギーの開発が焦眉の課題ともなっており、本号で東北大学大学院の佐藤 実教授が提唱する海藻からバイオエタノールを生産する技術とその効果については傾聴に値する。ただし、野生種・栽培種を含めた海藻のエネルギー利用については、沿岸海域における藻場が果たす多様な生態系サービス全体を踏まえた議論が必要で、生態系の劣化とエネルギー資源利用がトレード・オフになっては問題だ。◆津波災害による被災者支援のなかで、医療福祉は緊急を要する活動であったことはいうまでもないが、災害発生当初から5カ月を経過した現在でも、医療福祉面での継続支援はいうまでもなくおこなわれるべきだ。神戸大学大学院の井上欣三名誉教授による、病院機能と医療設備や医薬品、医療従事者を備えたホテルシップ・ドクターシップ構想は阪神淡路大震災の教訓をへて生み出されたものである。この構想は、今回の東日本大震災を通じて、より現実的なものとなった。海からの支援はこれまでに海上自衛隊、海上保安庁により実施されてきたが、民間ベースによる支援の目玉となることが期待される。被災地でのボランティア活動にこれまで参加された方々には敬意を表明したい。◆こうした一方、世界の海洋環境調査に日本の大学生がボランティアとして調査に参加している。日本郵船株式会社CSR推進グループの宮本亜矢子さんのレポートで、若者が新しい経験を積んでいることが分かった。世界の海で仕事をする若者の育成活動にエールを送りたい。(秋道)
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