Ocean Newsletter
第264号(2011.08.05発行)
- 東京海洋大学海洋科学部教授◆神田穣太
東京海洋大学海洋科学部教授◆石丸 隆 - 元海上自衛隊幹部学校長◆岡 俊彦
- (独)海洋研究開発機構 インド洋太平洋海洋気候研究チーム チームリーダー◆安藤健太郎
- 第4回海洋立国推進功労者表彰の受賞者決定
- ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男
編集後記
ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男◆今年は広範囲で平年より10日以上も早く梅雨が明け、7月にはうだるような猛暑日が続いた。逆に北海道付近には梅雨前線が停滞した。これは西太平洋熱帯域の積雲活動が活発で、その北側の小笠原高気圧も強く、梅雨前線を北に押し上げたためである。熱帯太平洋では中央部の水温の低い海域を挟むような形で西太平洋と東太平洋の水温が高い。このユニークな現象を「ラニーニャもどき」と呼んでいるが、インド洋で発生の兆しを見せているダイポールモード現象とともに、世界各地に異常気象をもたらしているようだ。
◆6月下旬から7月上旬にユネスコ本部において政府間海洋学委員会第26回総会が開催された。初日には創立50周年記念事業を終了する催しがあり、貢献者にメダルが贈呈されたが、日本人では琉球大学の平 啓介氏と(独)海洋研究開発機構の北沢一宏氏に贈られた。今回の会議で特筆すべきことに東京大学の道田 豊氏が副議長に選出されたことがある。実に40年ぶりである。海洋科学外交の舞台でわが国のプレゼンスは大いに高まるであろう。
◆さて、今号は東日本大震災関係のオピニオンを二題、新しい海洋観測手段に関するもの一題で構成した。放射性核種の放出に伴う土壌汚染や海洋汚染については調査が進んでいるが、食に関係する農産物や水産物についてはまだまだ不明の部分が多い。神田穣太、石丸 隆両氏は魚介類への影響、特に放射性核種が食物連鎖により時間差をもって生体内に濃縮される過程について、徹底した調査の必要性とその結果を公開することの重要性を力説する。よく知られているように今回の震災における自衛隊の活動にはめざましいものがあった。岡 俊彦氏はなかでも海上自衛隊の救援活動について詳しく紹介している。迅速かつ適切に行われた海と空から救援活動に改めて感謝したい。
◆海洋活動には刻々と変わる海洋状況を正確に把握しておく必要がある。どうすれば地上に遜色のない情報が得られるだろうか。これに関して、ウッズホール海洋研究所の故 ストンメル博士が1989年にスローカムミッションという夢物語を描いている。これは海洋の温度差を動力にして世界の海を巡り、時に浮上して観測データを地上に通信、さらに指令を受けて潜水し続ける自動機器の話であった。今、これが正夢になりつつある。安藤健太郎氏はこうした観測デバイスの開発でも日本の産業界が活躍することを期待している。(山形)
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