Ocean Newsletter
第240号(2010.08.05発行)
- 内閣官房 総合海洋政策本部事務局 内閣参事官◆金澤裕勝
- 山形県庄内総合支庁保健福祉環境部環境課海岸漂着物対策主査◆小松弘幸
- ハウステンボス株式会社 アクティビティセンター◆大熊 豪
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第3回海洋立国推進功労者表彰の受賞者決定 - ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形 俊男
低潮線保全・拠点施設整備法の成立
[KEYWORDS] 排他的経済水域/大陸棚/離島内閣官房 総合海洋政策本部事務局 内閣参事官◆金澤裕勝
わが国の排他的経済水域等には、水産資源や海洋エネルギー・鉱物資源などの天然資源が存在しており、排他的経済水域等を保全し、これらの天然資源を開発、利用していくことは、わが国の発展にとって重要となっている。5月26日に成立した「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」、いわゆる低潮線保全・拠点施設整備法の概要と今後の取り組みについて解説する。
5月26日に成立した「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」※、いわゆる低潮線保全・拠点施設整備法の概要と今後の取り組みについて解説いたします。
わが国の排他的経済水域および大陸棚(以下「排他的経済水域等」という)には、水産資源や海洋エネルギー・鉱物資源などの天然資源が存在しており、排他的経済水域等を保全し、これらの天然資源を開発、利用していくことは、わが国の発展にとって重要です。
同法により、排他的経済水域等が保全され、排他的経済水域等の利用が一層進展していくことが期待されています。
本法の意義
わが国は四方を海に囲まれ、国土面積は世界第61位にもかかわらず、排他的経済水域の面積は世界で第6位とも言われています。1994年(平成6年)に発効した国連海洋法条約は、沿岸国に対し、排他的経済水域等における天然資源の探査、開発、保存および管理のための主権的権利を認めています。この主権的権利を行使し、広大な排他的経済水域等に存在している水産資源や海洋エネルギー・鉱物資源を開発、利用していくことは、わが国の発展にとってとても重要なことです。
他方、わが国の広大な排他的経済水域等は、本土から遠く離れた離島によって支えられていますが、離島に関する施策については、有人離島を中心とする振興に重点が置かれ、無人離島を含む海洋管理の視点からの施策は十分ではありませんでした。また、排他的経済水域等の範囲の設定、排他的経済水域における水産資源の管理に関する国内法は、平成8年に制定されていましたが、排他的経済水域等の保全および利用を促進するための法制度は未整備でした。
このように、海洋管理のため離島の保全・管理を推進し、排他的経済水域等の保全・利用を促進する制度整備が求められておりましたが、低潮線保全・拠点施設整備法はこれに応えるものとして制定されました。
本法の内容
本法は、「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する基本計画」(以下「基本計画」という)を策定し、「低潮線の保全」と「拠点施設の整備等」を行うことを柱としています。

- (1)基本計画
低潮線の保全を図るために行う措置、特定離島における拠点施設の整備内容等の他、特定離島を拠点とする保全・利用活動の目標を定めます。 - (2)低潮線の保全
- 低潮線保全区域の指定
排他的経済水域等は海岸の低潮線を基礎として設定されることから、排他的経済水域等を確実に保持するため、排他的経済水域等の基礎となる低潮線の周辺水域で保全を図る必要があるものを区域指定します(図参照)。 - 行為規制
低潮線保全区域内において海底の掘削等低潮線の保全に支障を及ぼすおそれがある行為をしようとする者は国土交通大臣の許可を受けなければならないこととしています。
- 低潮線保全区域の指定
- (3)拠点施設の整備等
- 特定離島の指定
本土から遠隔の地にある離島であって、当該離島周辺の排他的経済水域等の保全及び利用活動の拠点として重要であり、当該離島及びその周辺に港湾等の施設が存在しないことから、活動の拠点となる施設の整備を図ることが特に必要な離島を特定離島として指定します。 - 特定離島港湾施設の建設等
基本計画に定める国の事務または事業の用に供する特定離島港湾施設を国土交通大臣が建設、改良及び管理するとともに、当該施設周辺の一定の水域の占用等を規制します。
- 特定離島の指定
関連事業等の予定、本法で期待される効果
基本計画を閣議決定し、同計画に基づき、特定離島港湾施設の建設を進め、排他的経済水域等の保全および利用の拠点を整備していきます。特定離島については、当面、南鳥島、沖ノ鳥島を指定することとしております。低潮線保全区域については、今年度中の指定を目標に作業を進めることとしております。
低潮線保全区域が指定されることにより、これまで目が行き届かなかった保全すべき低潮線の調査、監視、巡視が行われ、低潮線の状況が定期的に把握されるようになります。また、特定離島港湾施設の建設後、これを拠点とする様々な活動を行っていくこととしております。
今後の方針、期待
本法により、排他的経済水域等の保全と利用に関する施策は大きく動き出しました。しかし、わが国の海洋関連施策はまだ途半ばです。排他的経済水域等における資源探査および科学的調査に係る制度整備の検討等、引き続き必要な検討を進め、具体的な施策として実現していく必要があります。
本法の制定をきっかけに、排他的経済水域等の保全および利用の重要性が国民に浸透し、排他的経済水域等の保全および利用が促進されることを期待しています。(了)
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- 編集後記 ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男