◆謹賀新年。ここに平成21年の新春号をお送りする。◆米国発の金融危機に伴う実体経済の縮小が産業界にも波及し、恐慌にも似た状況を生み出している。この嵐は大学にも及び、学生の就職内定取り消しや企業の寄付講座の撤退が相次いでいる。つらい年明けになってしまった。◆二酸化炭素の濃度変化に代表されるホッケーステイック型(あるいは指数関数型)の成長曲線が、有限の世界では持続しえないことは物理学や生物学を学んだものには自明のことである。このような場合には必ず新しいレジームの形成に向けて調整が行われる。米国を中心とする世界のネズミ講がいずれ破綻するだろうということは多くの人がうすうす気づいてはいたが、マクロの潮流を変えることはできなかった。◆魚群の動きは個体同士の相互に寄り集まろうとする性質と相互の距離を一定に保とうとする性質で再現できるそうである。多くの個体が群れていれば安心であり、流れに乗り遅れてはいけないという本能に支配されるためである。私たちの社会も結局はこのような単純な法則から逃れることはできなかったようだ。インターネットに代表される情報ネットワークの発展がこの傾向を更に強めている。◆私たちが直面しているのは経済の問題にとどまらない。有限資源の下で持続可能な世界をどう構築すべきか、文化や価値の世界においてもグローバリズムとリージョナリズム、普遍性と多様性のバランスをどのあたりにおくべきかなど、より根源的な問題が問われている。深い思慮に基づくミクロの動きをいかにしてマクロの潮流に変えるか、ここに人類の叡智が問われているといってもよいだろう。本ニューズレターは海に特化した分野のオピニオン誌であるが、こうした方向への動きを加速する一助となれば幸いである。困難は豊かな未来への扉でもあると信じたい。 (山形)
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