◆洞爺湖サミットの前夜、この編集後記をつづっている。会議で食糧、環境の問題が大きく取り上げられるというが、拉致問題、北朝鮮の課題はどうなるのか、そして海の問題はどうなのかと気になる。本誌で前原誠司さんは、師と仰ぐ高坂正堯氏の海洋国家論を引用し、すでに高坂氏が昭和40年代に21世紀の今日的な世界情勢を看破していたことを指摘する。岸ユキさんは小学校時代の体験をふまえ、日本の浜の変貌に落胆するとともに、安楽さを追及してきた現代日本の姿に警鐘を打ち鳴らしている。高坂さんの海洋国家論をもちだすまでもなく、日本の船舶や船員数が昭和40年代から激減してきたことと今後の対策について国土交通省の藤田礼子さんが論じている。◆世界のなかでもっとも大きな食糧輸入国である日本が保有する船やそこで働く日本人が少ないというのも皮肉な話である。原油や食糧の高騰は日常生活に大きな打撃となっている。岸さんが指摘する食物の「旬」論にあるとおり、あまりに想像力のないままに日々の食糧を口にしてきた生活態度を改めるべきだ。私はサミットに先立ち、先月、京都で日本に古くから根付いてきた「山川草木の思想」に注目して、ライフスタイルを変えること、生活のなかで地球環境問題について考えることの意味をシンポジウムのなかで訴えた。地球環境問題の改善にとって、CO2削減は大きな目標ではあるが、生活のなかで実践することの本源的な問いかけなしには一向に解決しないのではないか。◆海のかかえる地球環境問題は多面的である。海洋の安全保障はとりわけ重要であり、前原さんをはじめ政治の舞台でのご尽力を期待したい。我は海の子の精神をもった若い人々が海で活躍する日は10年先に実現するのだろうか。いまが正念場であるとすれば、教育、産業、研究、環境、政治などのあらゆる分野の人間がまずはひざを付き合わせる場を持つべきとおもうが、さて誰が舵をとることになるのか。ポスト・サミットの動きに期待したい。 (秋道)
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