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オーシャンニューズレター

第186号(2008.05.05発行)

第186号(2008.05.05 発行)

海洋基本計画と海洋の管理

[KEYWORDS] 海洋基本計画/海洋政策/海洋管理
内閣官房総合海洋政策本部事務局長(内閣審議官)◆大庭靖雄

海洋基本計画に掲げられている施策は多岐にわたっていますが、中でも海洋の管理については、新たな視点からの施策として関係者の関心と期待が大きいと感じています。
今回は、基本計画における海洋の管理に関する施策の概要をご紹介します。

1.基本計画のあらまし

昨年7月20日に施行された海洋基本法に基づき、平成20年3月18日、初の海洋基本計画が閣議決定・公表されました。基本計画では、新たな海洋立国の実現に向け、わが国が第一歩を踏み出すための様々な条件整備が急務であることを踏まえ、その計画期間を5年間とし、目指すべき政策目標を以下のとおり設定しています。

  • 目標1 海洋における全人類的課題への先導的挑戦
  • 目標2 豊かな海洋資源や海洋空間の持続可能な利用に向けた礎づくり
  • 目標3 安全・安心な国民生活の実現に向けた海洋分野での貢献

その上で、基本法に定める6項目の基本理念((1)海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和、(2)海洋の安全の確保、(3)海洋に関する科学的知見の充実、(4)海洋産業の健全な発展、(5)海洋の総合的管理、(6)海洋に関する国際的協調)に沿って、施策展開の基本的な方針を示すとともに、基本法に定められた12項目の基本的施策(1 海洋資源の開発及び利用の推進、2 海洋環境の保全等、3 排他的経済水域等の開発等の推進、4 海上輸送の確保、5 海洋の安全の確保、6 海洋調査の推進、7 海洋科学技術に関する研究開発の推進等、8 海洋産業の振興及び国際競争力の強化、9 沿岸域の総合的管理、10 離島の保全等、11 国際的な連携の確保及び国際協力の推進、12 海洋に関する国民の理解の増進と人材育成)について、集中的に実施すべき施策や、関係機関の緊密な連携の下で実施すべき施策等総合的・計画的推進が必要な施策を定めています(図参照)。

2.基本計画における海洋の管理

基本法制定の大きな意義のひとつに、海洋の管理が国の政策として明確に位置付けられたことが挙げられます。これまでの海洋に関する政策は、海洋という「場」をどう利用するかという視点のものでしたが、国連海洋法条約に基づく国際秩序のもとで、沿岸国は、広大な排他的経済水域等への管轄権を持つとともに、その海域の資源や環境を適切に管理する責務を負います。また、海洋利用活動の輻輳化等近年の海洋を取り巻く情勢の変化に的確に対処するためには、その可能性や容量を考慮し、管理する立場で政策を立案・決定するシステムの構築が不可欠です。このことは、海洋の管理と利用を巡る動きが活発化している国際動向に対し、海洋の管理者としての明確な姿勢を持って対応するためにも必要です。
海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するために、基本法に基づいて内閣に設置された総合海洋政策本部は、まさにこのような行政システムの中核として機能するものであり、今後基本計画に則して、各般の施策を推進していくことになります。
以下、基本計画のうち、海洋の管理に関する部分(第1部(5)および第2部の関連部分)を要約してご紹介します。海洋の管理に当たっては、海洋の様々な特性を総合的に検討する視点が不可欠です。その上で、国際社会においては、平和的で衡平かつ持続可能な開発・利用を実現していくために、海洋秩序の形成等へ積極的に取り組むこととしています。

海洋基本計画の概要
わが国の管轄海域では、(a)海域を適切な状態に保つこと、(b)開発・利用の可能性を明らかにしてその促進を図ること、(c)利用秩序を維持すること、の3点に努める必要があります。このような考えの下、(a)に関しては、生物多様性の確保や水産資源の持続可能な利用のための海洋保護区の設定、沿岸域における海域・陸域一体となった総合的な土砂管理の取り組み等、(b)に関しては、メタンハイドレート、海底熱水鉱床等の探査・開発を着実に推進するための「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画(仮称)」の策定、海洋産業の発展等に資するための海洋情報の一元的管理・提供体制の整備等、(c)に関しては、海域の監視・指導・取り締まり体制の整備・強化、海面の利用調整ルールづくり等沿岸域における適正な利用関係の構築等、に取り組みます。
さらに、大陸棚が国連海洋法条約に基づき200海里以遠に延長しうることを踏まえ、わが国の大陸棚の限界が適切に設定されるよう最大限の努力を行います。また、外国船による科学的調査活動を管理するための制度上の整備を含めた検討・措置、海洋管理に必要な低潮線、海底地形等の基礎情報の収集・整備、沿岸域の特性に応じた管理のあり方についての検討・措置等に取り組みます。また、わが国の海域に広く点在している離島は、広大な管轄海域を設定する根拠の重要な一部をなし、あるいは海上交通の安全の確保、海洋資源の開発・利用、海洋環境の保全等に重要な役割を担っています。このため、離島の海洋政策上の位置付けを明確化し、適切な管理体制、方策等を定めた「海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針(仮称)」を策定します。

3.むすびに

今回ご紹介した内容は、海洋基本計画の内容のごく一部に過ぎません。基本計画の作成に当たっては、一人でも多くの方々に読んでいただけるよう表現上の工夫をし、用語解説のための用語集を用意しました。是非全文をご一読いただきたいと思います。基本計画に掲げられた数々の施策は、国の努力は言うに及ばず、関係する多くの人々が協力して初めて成果をあげることができるものだと思います。海からの恵沢を将来にわたり享受し続けるために、国、地方公共団体、関係事業者、関係団体等の相互の協調・協力関係の構築に努めていきたいと考えています。(了)

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