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オーシャンニューズレター

第17号(2001.04.20発行)

第17号(2001.04.20 発行)

日本・ロシアの科学者が共同で決議。北方四島への新しいアプローチ

インフォメーション

2001年1月21日に国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された、ユネスコMAB-IUCNワークショップ「国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島の自然保護協力」において採択された共同決議書を以下に掲載する。同決議書では、「日・露両国が環境保護を通じて世界平和に貢献することが可能である」と結んでおり、北方領土をめぐる日露両国の関係改善に向けた、新たなアプローチとしても期待される。

  我々、この会議に参加した科学者(以下、我々という。)は、以下のことを認識します。

国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島は世界でも数少ない、手つかずの自然がいまだに残っている地域です。これらの島々には、北海道ではすでに絶滅に瀕している多種多様な生物が生息しており、海獣類や鳥類の重要な索餌海域、回遊、渡りのコースにもなっています。また、科学的にも非常に重要な〈コントロール・サイト〉であり、開発の進んだ環太平洋地域ではすでに失われてしまった海洋資源を豊富に有しています。

森林破壊、海洋汚染、生物の多様性の減少やオゾン層破壊等が世界的な問題になっている現在、これらの島々の自然を保護することは、日露両国民のみならず、世界中の人々に大きく裨益することになるのです。  国後、色丹、歯舞群島の自然保護地は日露共同自然保護の出発点になり、これからの日露共同自然保護に大きな役割を果たします。

我々は以下のように考えます。

現在行われている共同自然保護活動は、日本人研究者が厳しい制限のもとに年に数回、短期間、島々を訪問するにとどまっています。このビザなし渡航による研究は、善意にもとづいた象徴的な意味合いを持っていますが、緊急な保護ニーズに応えるものではありません。

よって、我々は以下のことを要望します。

共同自然調査活動や野外調査を精力的に推進すること。島々の膨大な生物多様性を把握し、守るために、移動する種の調査を含めて、定期的、包括的で長期的視点にたった共同研究やモニタリングを行うこと。共同学術論文やモノグラフの出版、共同ワークショップや会議の開催、エコツーリズムや住民の自然教育における共同プログラムの実現を推進すること。

また、現在、密漁等により、島々の聖域だけではなくオホーツク海の漁場も危機に瀕していることに鑑み、日露両国が密漁に効果的な対策を行うこと。さらに、密漁対策によって自然が保護され、海洋資源が保護されることにより、日露両国にとっての食糧、雇用等も供給されていくことを認識すること。

最後に、我々は以下のことを認識する。

日露両国が共にこれらの島々の自然を保護することによって、日本とロシアが環境保護を通じて世界平和に貢献することが可能であることを示し、将来的に人類に多大な貢献をすることにもなるのです。

我々は日露両国に、なにものも恐れず、勇気を持って、迅速に行動することを切に望むものであります。(以上)

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