Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第17号(2001.04.20発行)

第17号(2001.04.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「鰊群(にしんく)来(き)今なし残る波と唄」(福田磑汀)。昭和20年代末まで、北海道の春は鰊とともにあった。最近になって鰊がまた北海道で採れはじめたと聞く。春告魚の復活の兆しは、すべての日本人の心を明るくする。17号は北の海を素材とする記事を集めた。

◆鰊のもたらす富によって、その春は江戸にもないと歌われた江差から、さらに北上した瀬棚町平田泰男町長から、海を中心にした町づくりを紹介する力強いオピニオンをいただいた。風力発電や海洋深層水利用といった新しい試みに、蘇りつつある鰊が力強くコンスタントな「追い風」になることを祈りたい。道立地質研究所嵯峨山積主任研究員のオピニオンは、北海道らしいスケールの大きな視点を提示する。海岸付近の地層や岩石に海と陸の地質的境界が存在せず、陸も海も同質のものだという指摘は、海と陸の異質性を無意識のうちに固定化する日常的思考に新鮮な刺激を与えてくれた。

◆下北半島大畑から、鰊の群来を追った鯨が浜に寄り付いた日の遠い記憶をもとに、われわれの海へのかかわり方を問う角本孝夫氏の投稿を得た。国家やコミュニティのあり方にかかわらず、人に馴れない絶対的自然としての海の神秘と力を覚知する感性を失ってはならないと思う。インフォメーションでは、日露両国の科学者による北方四島の科学的調査に関する共同決議を紹介する。科学調査に関する共同作業体制が、政治の枠を越えて、一刻も早く実現することを支援して行きたい。(了)

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