Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第170号(2007.09.05発行)

第170号(2007.09.05 発行)

瀬戸内海クルーズの感動を世界へ!

(社)神戸経済同友会特別会員◆上川(かみかわ)庄二郎

旅の形態は、高齢社会とも相まって、スローツーリズムへと着実に変化している。
中でもクルーズは、ゆっくりとした時間を楽しむ旅の代表格。
一方、瀬戸内海は、その自然美と歴史ロマンに満ちた魅力溢れる内海、豊富な海の幸、とまさに豊饒の海。
アメリカ人に評価の高いこの魅力ある瀬戸内海を、国内のみならず、広く海外にも呼びかけて、
ビジット・ジャパン・キャンペーンの拠点にしたいものである。

瀬戸内・海の路ネットワーク推進協議会でプレゼンテーション

昨年(2006年)6月、私は岡山で開催された瀬戸内・海の路ネットワーク推進協議会の総会にパネラーとして招かれる機会に恵まれた。この協議会は、瀬戸内海沿岸107市町村、11府県および国の地方整備局など9機関他で構成されている団体で、「瀬戸内海の新たな文化の創造、観光、レクリエーションの振興、生活環境の拡充を図る」ことを謳っている。そこで私はかねてから主張してきた「瀬戸内海をクルーズで世界の海へ!」をテーマに、次のようなプレゼンテーションをさせていただいた。

クルーズの魅力、そして瀬戸内海の魅力

瀬戸大橋の夕暮れ

これからの旅の形態は、高齢社会とも相まって、スローツーリズムへと着実に変化している。なかでもクルーズは、ゆっくりとした時間を楽しむ旅の代表格。将来着実に伸びてゆく産業だと言えよう。このことは、アメリカやヨーロッパなどで、ここ10年ほどの間にクルーズ人口が急速に伸びていることからみても理解できる。

一方、神戸から西に拡がる瀬戸内海は、その自然美と歴史ロマンに満ちた魅力溢れる内海、豊富な海の幸、とまさに豊饒の海。それに新しい風景としての瀬戸三橋も加わった。しかもここは、海とはいえヨーロッパの感覚から見れば川のようなもの。瀬戸内海の灘が湖、瀬戸が川と考えれば、川の両岸に拡がる美しい田園風景やワイナリー、古城や城砦、教会と眺めを移しながらクルーズを楽しむ、まさに今ブームのヨーロッパのリバークルーズと相通ずるものがある。

江戸から明治にかけて多くの外国人にも賞賛されたこの魅力ある瀬戸内海を、国内のみならず、広く海外にも呼びかけて、国も力を入れているビジット・ジャパン・キャンペーンの西の拠点にしたいものである。

瀬戸内海沿岸諸都市が連携・協調して、クルーズ船を持とう!

まさに今のリバークルーズ・ブームを象徴するように、モスクワ川やアムステルダム港の船着場は、リバークルーズ船で溢れていて、多くの外国人観光客を呼び込んでいる。日本でも、瀬戸内海をメイン舞台とする数千トンクラスの専用クルーズ船を、瀬戸内海沿岸の自治体や国、海・陸・空の運輸業界、観光関係業界等で共同して建造することが考えられないものだろうか。

瀬戸内海沿岸は、歴史的にも風土的にもヨーロッパと比べて何ら遜色はない。瀬戸内海沿岸には107の市町村があり、多くの島々や港が点在している。そこには多様な人々の営みがある。そんな地域の自治体や経済団体、観光組織等と相携え協調し合って、魅力ある瀬戸内海クルーズを定期・定例化してゆきたいものである。数多くある寄港地を組み合わせれば、年間を通じて運航コースがマンネリ化することにはならないはず。こうして、瀬戸内海を中心にしたクルーズが盛んになれば、国内はもちろん海外にもアピールできる商品価値の高い観光産業に成長させることができようし、掛け声倒れに終わっている「広域観光振興」の見本ともなろう。

訪れる人が増えれば、クルーズ船の就航数も増え人々の交流が増える。港が賑わいまちが賑わう。瀬戸内海の名声が内外に広まり人気が高まる。こんな好循環が期待できよう。

アメリカからSpirit of Oceanusがやってきた

神戸港に停泊するSpirit of Oceanus

ここで、アメリカからやってきたクルーズ船に触れておきたい。Spirit of Oceanusは、神戸市の姉妹都市であるアメリカのシアトルに本社を置くCruise West社所有のクルーズ船で4,200総トン、乗船客は上限で138名と小振りな船である。昨年から、神戸港を日本での母港として寄港するようになり、昨年は3回、今年は4回予定されており、さらに来年は、神戸市の客船誘致策も功を奏して9回来港するという。

アメリカ人に評価の高い瀬戸内海

Cruise West社のパンフレットによると、「目を見張るように美しい瀬戸内海。歴史遺産が豊富でゆったりとしたクルーズの楽しめる内海」と絶賛し、このようなメッセージが後に添えられている。「Spirit of Oceanusの居心地の良いキャビンやラウンジでゆっくり寛ぎながら、日本の素晴らしい景観に魅入ってください」「寄港地では、静かに佇むお寺や庭園を鑑賞しながら茶の湯を嗜み、お城や城下町を鑑賞してください。宮島では、雅楽の伝統的な装束に目を奪われることでしょう。きっと、好奇心を煽るような日本文化に接することができます」「日本は、西欧の国々とは異なった歴史・文化を持つ美しい国です。寿司を始め日本食や日本酒も嗜んでみてください」。さらに「Spirit of Oceanusは、瀬戸内海のような入り組んだ島々を巡るのに最適の船なのです。この小船で日本を発見するのが、日本を体験する最も良い手段です」と小船の優位性を説いている。

神戸経済同友会が「みなとの再生」で提言

60年の伝統を誇る神戸経済同友会でも、神戸港開港140年を機に「みなとの再生」をテーマとして取り組まれたことから、私もこの企画に参加させていただくこととなった。

そして、今年(2007年)3月に「神戸港を『瀬戸内海クルーズの母港』に」そして「世界を代表する『交流のみなと』に」と題する提言を発表した。提言の背景は、私がおこなったプレゼンテーションとほぼ共通しているので繰り返しは省略して、提言で取り上げた神戸経済同友会の新たな取り組みである「まずは、体験クルーズから始めよう!」を紹介させていただこう。

瀬戸内海クルーズを定期・定例化してゆくには、民間業者による事業の立ち上げに期待しなければならないが、これを実現するにはいくつものハードルがあることも事実。船をどうやって調達するのか? 運航する船会社があるのか? どのようにして先に述べた関係諸団体との連携・協調を図ってゆくのか? 等々課題は多い。まず隗より始めよ! 神戸港から新たな取り組みを始めようではないか。その呼び水として、ともかく「せとうち・感動体験クルーズ」を立ち上げよう、と神戸経済同友会としての活動方針を取り決めた。現在、あるクルーズ船社とチャーターの日取りや運航コースなどについて折衝中である。公表することとなった暁には、全国に呼びかけて体験クルーズ乗船者を募りたいと考えている。(了)

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