Ocean Newsletter
第156号(2007.02.05発行)
- 東京海洋大学 先端科学技術研究センター 教授◆末永芳美
- 国土交通省海事局参事官◆坂下広朗(ひろあき)
- ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男
インフォメーション 海洋基本法の制定を-新たな海洋立国を目指して-
いま海洋では、国連海洋法条約により200海里まで拡大した沿岸国の管轄海域をめぐる近隣諸国間の競争・対立、海洋資源の乱獲、海洋環境の汚染の深刻化、津波・高潮や海賊・海上テロなどの脅威などが起こっています。しかし、これらの総合的取り組みを要する海洋の諸問題に対するわが国政府の対応が依然として関係省庁ごとの縦割りで、的確な対応ができていません。
そこで、海洋問題に関心の高い各党の政治家と有識者が集まって、武見敬三参議院議員を代表世話人とする海洋基本法研究会※を設立して、その問題点を究明し、わが国の海洋政策のあり方を検討し、海洋政策大綱および海洋基本法案について研究を行ってきました。研究会は、平成18年4月から10回にわたって座長:石破茂衆議院議員、共同座長:栗林忠男慶應義塾大学名誉教授のリードの下で開催され、海洋政策研究財団が事務局を務めました。
その結果、従来の縦割り行政を改め、かつ、政府と民間が一体となって、総合的な海洋政策を策定推進し、もって海洋と人類の共生および国益の確保を図るべきであるとの結論に至り、この度「海洋政策大綱」※および「海洋基本法案の概要」※がとりまとめられました。
この結論を踏まえて、海洋政策の立案推進に関係する各方面に対して、次の通り、総合的な海洋政策を推進するために、「海洋基本法」の制定等必要な措置を講じるよう働きかけております。
1.「海洋政策大綱」を踏まえた総合的な海洋政策の策定と推進
政府は、「海洋環境の保全」、「海洋の利用・安全の確保」を重視し、「持続可能な開発・利用」に努める。そのために、「科学的知見の充実」と「海洋産業の健全な発展」に努め、これに基づいて「海洋の総合的管理」に取り組み、かつ「国際的協調」を国是とする総合的な海洋政策を早急に策定し、これを確実に実行する必要がある。
2.「海洋基本法(仮称)」の制定を柱とした海洋政策の推進体制の整備
政府は、総合的な海洋政策を推進するための要となる「海洋基本法(仮称)」を制定すべきである。基本法は、海洋政策の基本理念をはじめ、国・地方公共団体・事業者・国民の責務、並びに「海洋基本計画」策定等総合的な海洋政策に関する基本的な指針や施策等を明記する。また、海洋政策を効率的かつ強力に推進する「総合海洋政策会議(仮称)」の設置、海洋政策を継続的に総括し得る特命担当大臣(「海洋政策担当大臣」)の任命等推進体制の整備について定めるべきである。
今後とも小誌では、これらの活動を踏まえて、海洋政策についての活動、提言を掲載していく予定です。
●海洋政策に関する資料
日本の海洋政策の現状や国際的状況を読み解くにあたって、先頃出版された2冊を参考資料として紹介します。
検証国家戦略なき日本 読売新聞政治部著 新潮社刊 ISBN4103390093 ¥1,470(税込) 2006年11月発行 2005年1月から2006年6月まで「読売新聞」にて掲載された「国家戦略を考える」を改題し、まとめられた一冊。とくに「第2章漂流する海洋国家」および「第3章自覚なき無資源国」において、日本の海洋に関する現状がまとめられている。 | ![]() |
海洋政策研究叢書1 海の国際秩序と海洋政策 栗林忠男、秋山昌廣編著 東信堂刊 ISBN4-88713-716-8 ¥3,360(税込) 2006年11月発行 各分野の専門研究者を結集し、複雑な国際関係下、現代の国際海洋規範が条約のみならず様々な国際会議や判例、また各国の国家実行等を通じて流動・生成している現況を踏まえ、国際法の動態的・包括的把握の下、安全保障、環境保護、資源利用はじめ今日の国際海洋秩序形成に関する問題群を体系的に分析・考察している。 | ![]() |
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- インフォメーション 海洋基本法の制定を-新たな海洋立国を目指して-
- 編集後記 ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・副研究科長)◆山形俊男