Ocean Newsletter
第124号(2005.10.05発行)
- 北海道奥尻町役場総務課主幹◆木村孝義
- (社)漁業情報サービスセンター専務理事◆吉崎 清
- 福岡調理師専門学校・伊東文化学園学園長◆伊東梛子(なぎこ)
- ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男
海の甲子園-熱き戦い、全国水産・海洋高等学校カッターレース大会-
(社)漁業情報サービスセンター専務理事◆吉崎 清全国水産高等学校長協会が国民の祝日「海の日」の慶祝行事として実施している「海の甲子園」と銘打った「全国水産・海洋高等学校カッターレース大会」に、関係者がさらなる支援をして、海のロマンに賭ける若人の育成を図り、水産業界の後継者育成、引いては海洋国日本の繁栄に繋げたい。
水産高校の「海の甲子園」

今年7月23日、24日の2日間にわたり、島根県浜田市の浜田漁港特設会場で、「海の甲子園」と銘打った「第7回全国水産・海洋高等学校カッターレース大会」の熱き戦いが繰り広げられ、静岡県立焼津水産高等学校の優勝で幕を閉じた。
1996年から7月20日が第14番目の国民の祝日「海の日」となった(現在は、7月第3月曜日)。この日は、海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日となった。「海の日」制定に尽力した海事関係者は、いかにして、この日をPRするかに腐心することとなり、種々のアイデアを企画し、実施に移して来ている。
そのような環境下にあって、このカッターレース大会は、全国水産高等学校長協会が、主管となる水産高等学校、参加する水産高等学校および海上技術学校、大会会場となる静穏海域の確保、レースに必要となるカッターの確保、大会に必要となる経費等について、綿密な大会実施計画を立て、水産教育の一環として水産高等学校の伝統的なスポーツであるカッターを通じて、水産教育の重要性や自然との触れ合いの素晴らしさを広くアピールすると共に、競技を通じて海を愛し海にロマンを求める生徒の育成、さらに生徒の交流の場とすることとし、1999年の第1回大会から毎年、主管校を選定して実施しているものである。
大会実施に先立ち、本大会は、「海の日」の慶祝行事であると位置付けて、国民の祝日「海の日」海事関係団体連絡会等の協賛を得ている。例年、北海道から九州、沖縄までの地区予選を勝ち抜いた水産高等学校および海上技術学校の代表16チームが出場する。カッターには艇長1名、艇指揮1名、漕ぎ手12名の計14名が乗り込むが、時代の趨勢か、ここでも女子生徒の進出は目覚ましく、この大会に出場する16チームの内、何チームかの艇長、艇指揮には女子生徒が当たることがあるが、第6回および第7回大会には漕ぎ手にも男子生徒に混じって女子生徒が遜色なく活躍した。
水産業界の活性化に貢献
漁業就業者の減少と高齢化が進む中、水産業界は、後継者育成の観点から、当初より、このイベントに賛同し、関係団体、企業に広く呼びかけて協賛金、協賛品を贈呈するなど、可能な限りの支援をしている。しかし、最近漁業を取り巻く環境は、ますます厳しくなって来ており、年々支援の規模が縮小してきている。協賛金は、全国から大会開催地までの生徒の旅費の一部に充当されているので、この減少は、本大会の存続を危うくするものであるので、今後、さらに、協賛団体、企業の範囲を広げて、掘り起こしを進める必要がある。
もちろんこの大会は、当初から国民の祝日「海の日」の慶祝行事の一環と位置付けて、(財)日本海事広報協会が事務局を務める国民の祝日「海の日」海事関係団体連絡会が、毎年発行する海の日イベントガイダンスのトップに掲載すると共に、優勝校には(財)日本海事広報協会会長から優勝カップが贈呈されている。最近では、文部科学省、水産庁からも優勝校に対して表彰状が授与される等、段々と、公に認知されるまでになったことは、このイベントが時代の要請にマッチしたものであり、企画立案から粘り強く実施を目指した関係者の涙ぐましい努力の賜が、高く評価されたためであろう。
大会は、主管校によって準備された静穏な海面で片道500メートルの往復コースで行われる。スタート地点と折り返し地点には浮標が設置されている。コースの決定は抽選による。予選、敗者復活戦、翌日に準決勝戦、決勝戦となる。過去の大会では、予選の各チームのタイムから優勝チームを予想することは比較的容易ではあるが、各レース時の天候、とくに風向、風力によってオール捌(さば)きが左右される。それ以上に、折り返し地点での艇の回頭の出来具合により、大きく差がつくことがある。すなわち、14名が渾然一体となって為し得る海上の格闘技である。この手に汗を握る熱戦に、毎回、1,000名を超える地元民の観客を動員する他、地元テレビの撮影もあって、街おこしにも大いに貢献している。観戦した者は、若人のひたむきさ、力溢れる躍動感、海のロマンに魅せられ、虜になること間違いない。
近隣諸国との対抗試合も
本大会を「海の日」慶祝行事と位置付けて実施し、「海の日」の意義の周知と併せ、海のロマンに賭ける若人の育成に最適な行事として定着された功績に対し、今年7月27日、国民の祝日「海の日」海事関係団体連絡会の事務局を務める(財)日本海事広報協会会長より全国水産高等学校長協会理事長に対し感謝状の贈呈が行われた。
関係者の熱意で年々充実してきた本大会を、さらに発展させるために、従来以上の支援を行うと共に、できるなら韓国、中国等の近隣国の水産系高等学校との対抗試合をも実現させたいものである。
ちなみにこれまでの大会の開催地および優勝校は別表の通りである。(了)

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