Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第11号(2001.01.20発行)

第11号(2001.01.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「鮟鱇の骨まで凍ててぶち切らる」(加藤楸邨)。寒さが増して鮟鱇のうまみも深まる季節となった。魚肉自体の淡白さに、ねっとりと絡む肝の香りと食感の芳醇さが寒さによってひとしお際立ち、七つ道具といわれる内臓と、うどやセリなどの少しあくの強い野菜を、酒と醤油で味付けたたっぷりの出汁でさっと煮た鮟鱇鍋は、冬の味覚の至福を作り出す。鮟鱇はときに表層まで上がって海鳥などもえさにする悪食でもあるそうだが、深い海の底にひっそりと沈む鮟鱇の胃袋に多くの小魚等が収まり、さらにそれがわれわれの胃袋にまで到達するまでの食物連鎖の長さを想起されたい。

◆柳哲男氏の「沿岸域の富栄養化機構」は、富栄養化対策一つ考えるだけでも、かくも多様な関連因子を各湾の栄養物質輸送特性としてとらえねばならないのか、という意味で編集子のような非科学的な人間を驚嘆させる。また一方で、敷田麻美氏の「第三の沿岸域危機と沿岸域の末来」は、科学や技術の力の及ばない沿岸域環境の不確実性に対する「共同と共有」の社会的意義を示すもので、非科学的人間にとって心強くもあるが、人々の熱意に科学の力が加われば鬼に金棒であろう。中西理香子氏の投稿「海の大切さを子供たちに伝える」に感謝したい。まずは手近なことからというご指摘に賛成。わが家においては、生きの良い魚を見せ、時に鮟鱇のつるし切りなどを見せることが、手近な第一歩であった。(了)

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