Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第10号(2001.01.05発行)

第10号(2001.01.05 発行)

海外の海洋研究所から届けられた、21世紀へ向けてのメッセージ

ウッズホール海洋研究所海洋政策センター  ディレクター◆アンドリュー・ソロー
フランス国立海洋研究所  プロジェクト・マネージャー◆イブ・エノック
(クリックで拡大)
アンドリュー・ソロー

新たな千年紀を迎えるにあたって、シップ・アンド・オーシャン財団(SOF)に対して、心からお祝いを申し上げます。

これからは、海洋・沿岸域資源の賢明なる管理と保全は、これまでにないほど重要になってくるでしょう。これらの資源利用に関する官民の取り組みに、こうした健全なる分析的視点を取り込むことの必要性は、人類の諸活動における最近の傾向が明確に示してくれているところです。これらの傾向には様々なものが含まれていますが、とりわけ次のような点に顕著に表れています。すなわち、沿岸域における居住人口の世界的増大、廃棄物を海洋へ垂れ流すことの環境上・経済上の影響に関する理解の向上、蛋白質供給源としての海面養殖の需要拡大、国際貿易の発展によるビジネスのグローバル化、海運・造船業界における技術の急速な発展、などがそれです。

最近の海洋科学ならびに関連の自然科学分野での進歩により、人類の諸活動による海洋生態系への影響の重大さが浮き彫りにされてきています。また、そうした影響についての関心は、世界中で高まり続けています。同時に、海洋資源の持続的活用という目標を達成するためには、経済活動に関する健全な理解にもとづいた政策的措置こそが何よりも必要不可欠であるということが、広く認識されるようになってきました。したがって、SOFが設立した海洋シンクタンクのような機関は、海洋資源の持続的利用に向けた意思決定を導き出していくうえで要請される慎重かつ合理的な分析を提供するのに、まさにうってつけの存在であるといえましょう。

SOFのシンクタンク設立の初期段階から、当ウッズホール海洋研究所海洋政策センターが関与させていただいたことは誠に光栄であり、今後、貴シンクタンクといくつもの有益なる協力関係を築き上げることができますよう、期待しております。

2000年10月31日
アンドリュー・ソロー
● ウッズホール海洋研究所海洋政策センター  ディレクター
(クリックで拡大)
イブ・エノック

『Ship & Ocean Newsletter』の誌上において、貴財団が最近創設された海洋シンクタンクとともに、新たなミレニアムをお祝いできることは、私にとって大変光栄なことであり、大きな喜びであります。

持続的発展の概念についての世界的な認識とともに20世紀末に始まった大きな方向転換の後に、いま私たちは、特に沿岸海域のように非常に生産的でありながら大変脆弱な領域において、行動計画を実現する必要があります。

この点において、アジェンダ21(1992.リオデジャネイロ国連環境開発会議)により勧告されている沿岸海域の総合管理は、科学技術の分野における進歩と、行動、制度および人の各セクターにおける統合の必要性と結びつけなければならないことを強調しています。

この統合の必要性は、次のような原則で表すことができます。すなわち、(1)管理と責任、換言すれば、次世代に継承すべき自然の財産を維持するための行動に関する個人、組織または機関それぞれの道義的責任である「ガバナンス」、(2)協力体制、個人主義や利害の対立による競合を超えた認識による、(3)非硬直性、それは反復、継続的で現実適合性があり、人々が参加しやすいプロセスによって実現される、そして最後に(4)市民参加、すなわち世界の中のある地域、国または地方のための決定を下す際には、市民、沿岸域に住む人々、沿岸域問題に関わるすべての当事者に発言権が与えられる場が設定されること、これらの4つです。

海洋シンクタンクのような非政府組織(NGO)や非営利団体(NPO)が、今日および将来のコミュニケーションにおける最新分野に位置しており、上述したような開かれた議論の場において大きな役割を果たしうることは疑問の余地がありません。

来る新世紀には徐々に、国のレベルだけではなく、私たちの海洋のレベル、いわゆる惑星のレベルにおいて、この種のボランティア組織の支持が得られなければ、沿岸海域の総合管理は実現できなくなるでしょう。

海洋シンクタンクのご成功を改めてお祈りするとともに、理事長に対して謹んで敬意を表します。

2000年10月19日
イブ・エノック
● フランス国立海洋研究所  プロジェクト・マネージャー

第10号(2001.01.05発行)のその他の記事

  • 海の邦・沖縄が甦る 沖縄県企画開発部参事◆上原良幸
  • 船大工の継承はできないのか 海の博物館館長◆石原義剛
  • 海外の海洋研究所から届けられた、21世紀へ向けてのメッセージ ウッズホール海洋研究所海洋政策センター ディレクター◆アンドリュー・ソロー
    フランス国立海洋研究所 プロジェクト・マネージャー◆イブ・エノック
  • 編集後記 同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

ページトップ