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「核脅威の増大と抑止のあり方」事業 最終報告書 『大国間競争時代の核抑止とエスカレーション ―ウクライナと台湾の事例から―』

笹川平和財団


2026.03.16
 核兵器を巡る抑止の問題への関心は、かつて米ソ間の冷戦期においては国家の生死を左右する死活的問題でしたが、冷戦の終結と共にその関心は後退しました。その結果、米オバマ政権による核廃絶論の提唱など、2010年頃までの一時期には「核の忘却」の時代が到来したとも言われますが、その後、状況は大きく変化しました。すなわち、中ロの現状変革志向の明確化や米国の相対的な優位性の低下を背景とした大国間の「戦略競争」の時代の再来となり、これが再び、核兵器を巡る抑止の問題への関心を高める結果となりました。
 
 具体的には、ウクライナへの侵略を続けるロシアによる核恫喝は、戦争において実際に核兵器が使われる可能性を如実に示す結果となりました。また、中国による昨今の急速な核軍拡は、中長期的な将来、米国が中ロ双方を同時抑止するだけの戦略態勢を保たねばならないという「二つの競争相手問題」に直面する可能性を高めています。のみならず、中国の核軍拡によって、もし米中間に相互脆弱性の認識が生じれば、中国との核戦争を忌避する米国の動機が中国のインド太平洋地域での現状変革を助長する「安定・不安定性のパラドックス」を引き起こす可能性も懸念されています。
 
 こうした背景を踏まえ、安全保障研究グループ(※2025年4月より安全保障・日米グループ)の「核脅威の増大と抑止のあり方[JF1] 」事業では、2023年度から抑止及び欧州・中国等の地域専門家9名からなる「核脅威抑止研究会」を立ち上げ、核脅威の増大と抑止のあり方に係る多面的な検討を実施してきました。その最終報告書として、今般『大国間競争時代の核抑止とエスカレーション ―ウクライナと台湾の事例から―』を作成いたしましたので、公表します。
 
 本報告書では、特に次の二つのテーマに焦点を当てています。第一に、「核と非核のエスカレーション・ダイナミクス」の要素です。核抑止の構図が非核戦力による抑止やエスカレーション管理(又は戦争内抑止)の姿に大きな影響を与えることを前提に、個々の紛争において核と非核の「防火帯」がいつ、どのような形で破られるのかの解明に焦点を当てた検討を行いました。本報告書では、この問いに答えるため、現下のロシア・ウクライナ戦争と(今後の発生が予想される)台湾海峡有事の双方について、戦略的経路分析の手法による核リスクの検討を行い、更に台湾海峡有事についての二回のウォーゲームを実施して、核と非核のエスカレーション・ダイナミクスの解明に努めました。
 
 第二に、米中ロそれぞれの「将来の戦略態勢」の姿を描くことにも焦点を当てました。中国の核軍拡は国際的な核バランスを一変させ得るものですが、その実現は一朝一夕には起こりません。それが真に戦略的重要性を帯びるようになるのは、2035年以降の出来事と考えられます。そのため、今からおよそ10年後、2035年頃の米中ロ各国の「将来の戦略態勢」を見極めて初めて意味を成す議論となります。このため、本報告書ではこうした「将来の戦略態勢」の姿、換言すれば「平時の戦略競争」の要素を重視した分析にも努めました。
 
 上記以外にも本報告書は核脅威の増大と抑止のあり方に係る様々な検討を行っています。具体的には、ロシア・ウクライナ戦争における核問題の重要な背景としての「ブダペスト覚書」、同戦争におけるロシアの核恫喝及び米国の拡大核抑止への不安を踏まえたNATOの核抑止力強化に向けた取り組み、更に大国間の戦略競争下における核軍備管理の課題や可能性等に関する分析・検討を行いました。
 
 本報告書におけるこうした多面的な検討が、「核脅威の増大と抑止のあり方」に係る読者の理解増進に繋がれば、執筆者一同として大変幸いです。

※最終報告書本文は、こちらをご覧ください。
 

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「核脅威の増大と抑止のあり方」事業 最終報告書 『大国間競争時代の核抑止とエスカ
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