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笹川日中友好基金

豊かな生活の創出のために 中国人留学生鄭暁玲さんインタビュー

笹川日中友好基金


2025.12.12
9分

本記事では、第8回日中未来創発フォーラムに関するインタビューの後編として、フォーラム参加者で留学生の、鄭暁玲さんのインタビューを紹介する。

 

【鄭 暁玲(てい ぎょうれい)さん】

昨年来日し日本語を学習している留学生。来年度から佐賀大学地域デザイン研究科に進学予定。

佐賀地区中国学友会会長。佐賀市公認外国人観光アンバサダー。上海出身。趣味は刺繍。

 

―このフォーラムに参加した契機を教えて下さい。

今回が第8回の日中創発フォーラムだと知り、これまでの7回の内容や活動報告を拝見したところ、毎回異なるテーマや、日中の若者たちの交流、それぞれの考え方・視点の違いがとても興味深く、面白いと感じました。今回のフォーラムが佐賀のお隣である福岡県で開催されるということで「ぜひ参加しなければ!」と思い参加を決めました。参加できることをとても幸運に感じております。

また、今回のテーマが環境であることも、参加を決めた理由の一つです。私はもともと環境問題に関心があり、特に海洋環境の保護に強い関心を持っています。多くの機関が今年を「Ocean Super Year(海洋のスーパーイヤー)」と呼んでいる中で、日中の若者が現在の環境問題や海洋保護についてどのように考えているのかを知りたいと思い、参加を決めました。

 

―実際に参加してみて、いかがでしたか?フォーラムに参加して考えたこと、感じたことを教えてください。

とても意義のあるフォーラムでした!特に印象に残っているのは、海洋ゴミに関するシミュレーションゲームである「Change for the Blue Card」のゲームを体験した時のことです。カードを選ぶ過程で、私たちのグループのメンバーが、人間のニーズと環境保護の両方を考慮し、一方的な視点ではなく、より多角的に問題を捉えようとしていたことが印象的でした。その上で結論を導き出した経験は、今後の生活にも大きな影響を与えると思います。生活・経済や科学技術の発展、そして環境と人間の生活のバランスをどのように取るかという問題は私たちがこれから真剣に考えるべき課題だと感じました。その経験を経たからか、後半のグループディスカッションでもより広い視野で意見を交換することができ、多くのことを学ぶ機会になりました。

 

―フォーラムに参加する前と後とで、環境についての考え方は変化しましたか?

環境を守るために自分も何か力になりたいという気持ちが、より一層強くなったと思います。

 

―ありがとうございます。次に、留学生活について教えて下さい。なぜ日本、そして日本の中でも佐賀に留学を決めたのですか?

留学前は、毎年日本へ旅行に来ていました。日本の文化や自然と調和しながら生活する環境が非常に好きで、日本人の「匠の精神」――つまり、集中力・丁寧さ・そしてこだわりの強さ――にも深く感銘を受けました。東京・大阪・京都などの大都市だけでなく、鎌倉・箱根・熊本といった地方の街にも訪れたことがあり、強く印象に残っています。

そして、佐賀に留学することになったのは、ご縁に恵まれたからだと思います。以前勤めていた会社が有田焼とコラボし、「蝶々夫人」という香水をデザインしたことがあるのですが、東洋と西洋の融合の美しさを感じるとともに、佐賀の有田焼に興味を持つようになりました。その後、佐賀と上海を結ぶ直行便が開通したとき、すぐにチケットを予約して佐賀に来ました。実際に来てみると、自然とともに人々が暮らしている環境が本当に心地よく、そして嬉野温泉や佐賀の日本酒も気に入りました。出会った地域の方々も皆さんとても優しく、そうした理由から佐賀で留学することを決めました。

 

―これまでに何度も日本を旅行されているんですね。「蝶々夫人」という香水、大変気になります。ご専攻の地域デザインではどのような勉強をされるのでしょうか?

「地域デザイン」という学問は、地域固有の資源を生かし価値を提供することを目的としていると考えます。芸術や文化を経済・経営の側面から考え実践し、豊かな生活の場を創出するデザインやマネジメントを探求するために、今は準備を開始した段階です。

 

―地域デザインについて考える際、環境のことも考慮しますか?

この分野に関しては、私はまだ初心者です。私の考えでは、「地域デザイン」というのは文化・芸術・社会・環境など、さまざまな要素を含む非常に総合的な分野だと思います。だからこそ、とても挑戦的で、探究していきたい分野だと感じています。

今回のフォーラムの基調講演で田代教授が「海辺に人工物を増やした際の写真の比較」や、「自然を守るのは何のためか?――人のためか、生物のためか?」という問いについてお話されていたのが印象に残っています。「人が存在する場所」をつくるときに、自然や環境にある程度の代償を求めることは本当に必要なのか、それもまた、私たちが考えなければならない大切なテーマだと感じました。

 

―ありがとうございます。次に、留学生活の中で頑張っていることを教えて下さい。

3つあります。まず1つ目は、自分自身が学びを止めず、常に探求心を持って学び続けることです。次に2つ目は、佐賀地区中国人留学生学友会の活動です。会長を務めており、中日両国の青少年の交流や相互理解のためにリーダーシップを発揮して、少しでも力になりたいと考えています。そして3つ目は、佐賀市の観光大使を務めさせていただいていることです。自分の目と言葉を通して、佐賀の魅力をより多くの人に伝えていきたいと思っています。

 

―最後に、今後の展望は何ですか?

今回のフォーラムに参加することができ、本当に嬉しく思っています。中日両国の学生たちと交流し、環境保護や文化交流など、さまざまな分野について意見を交わすことができました。今後は、中日両国、特に若い世代の間で、もっと多くの分野において交流や相互理解の機会が増えていくことを願っています。私自身もその一助となれるよう努力したいと思います。

 

鄭さんへのインタビューを通して、鄭さんの穏やかでありながら活発な人柄が窺えるとともに、日ごろ勉学に励みながら諸活動にも取り組むなど、充実した留学生活を送られていることが窺えた。鄭さんの未来を切り開こうとする姿勢に感銘を受け、私も常に探究心を持ちたいと感じた。(聞き手 尾﨑そよか)
 

本記事はウェブメディア「茶話日和」(2025年12月7日付)より転載したものです。
記事の著作権は原著者に帰属しており、当サイトでは情報提供を目的として掲載しています。


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