2024年度日本人学生イラン研修レポート Part2
2月18日(火)~2月22日(土)
第1グループ(戦略対話・交流促進担当)では、「戦略的日・イラン関係構築」事業における人材交流活動の一環として、公募による選抜を経た8人の日本人学生を2025年2月13日から2月22日までの10日間にわたりイランに派遣しました。 この滞在中に参加学生が感じたことや考えたことを、2回に分けて発信します。
本記事ではPart 2と題し、後半5日分を掲載します。※Part1(前半5日分)はこちら。
なお、発信された内容は発信者個人の所感であり、当財団の意見を示すものではありません。
2月18日(火) 報告者:山根佑斗さん
イスファハーンに行く前に、まずはゴレスターン宮殿を訪れました。世界遺産にも登録されている大きな宮殿です。緑豊かな庭園をいくつもの荘厳な建物が取り囲み、どれだけ見ても楽しみ尽くせないほど豪華な場所でした。
建物のひとつに入ると、さっそく華麗に装飾された部屋が目に入りました。なるほど、これが有名な「鏡の間」か――と感嘆する暇もなく、これは「鏡の間」ではないと告げられました。すでに相当に華美な光景でしたが、確かにそれは序の口にすぎず、めくるめくスペクタクルに感動しきりでした。
宮殿を出た後、バスは6時間かけてイスファハーンに向かいました。イスファハーンは、テヘランほどせわしない街ではなく、比較的ゆったりしているような気がします。「世界の半分」での経験が楽しみです。
ゴレスターン宮殿
宮殿内部
ゴレスターンのネコ

バスの旅
2月19日(水) 報告者:土屋京香さん

ジャーメ・モスクの一部
エスファハーン1日目は様々な観光名所を回りました!
ゾロアスター教の寺院や博物館など、テヘランで過ごしたときとはまた違った、イスファハーンならではの歴史や文化的側面に触れながら、特に印象に残った二つを共有したいと思います。
1つ目は、「Jame Mosque」です。ペルシャ絨毯のモチーフにもなる美しい装飾のドームがある一方、土やレンガなどを使った1000年前の建築は固有の迫力がありました。また、イランには「冬の部屋」と「夏の部屋」という概念があるのですが、このモスクでは地下にある「冬の部屋」に入ってみました。窓がないため電気をつけないと真っ暗で、外よりも暖かく感じ、不思議な体験でした。
2つ目に紹介したいのが揺れるミナレットこと「Menar Jonban」です。16時くらいに鐘が鳴ると言われてから十数分、心配にも寒くもなってきたとき、やっとミナレットが揺れはじめました!予想外の揺らし方と科学を使った鐘の鳴らし方に全員が驚きを隠せませんでした。
様々な時代と文化の積み重なりを体感できた一日でした。

有名なお屋敷の中庭

ペルシャの「書道」

驚きと笑いの揺れるミナレット
2月20日(木) 報告者:阿部想さん

クルアーンを暗誦するツアーガイドさん
この日は待ちに待ったイマーム広場訪問の日でした。高校生の時、世界史の授業で一目惚れしたイマーム広場。以来憧れ続けていた場所についに訪れることができました。
午前中のまだ早い時間帯、私たちはイマーム・モスクに向かいました。イマーム・モスクはイマーム広場のシンボル的存在でもある壮麗なモスクです。1番大きなドームの真下に辿り着いた私たちに向けて、ツアーガイドさんがクルアーンの一部の暗誦(アザーン)を披露してくれました。モスクの中の時が止まったかのような静けさを破り、ドーム全体に朗々と響き渡る美しい声に、私は感動で身震いしました。
さらに午後は、アリ・カプ宮殿を見学します。広場の西に佇むこの宮殿のテラス部分から眺める広場の様子は圧巻です。右手には壮大なイマーム・モスク。真下をみるとゆったりと過ごす地元の人々で賑わう広場が見え、その奥にはシェイク・ロトフォッラー・モスクが見えます。豪華絢爛ながらも上品さのある青のモスクと、眼下に広がる青々とした芝生と花々、行き交う人々の姿に、かつて「エスファハーンは世界の半分」と評されたことに思いを馳せながら、うっとりと広場に見入りました。

シェイク・ロトフォッラー・モスクの美しい内装

レストランでの美味しい食事

アリ・カプ宮殿のテラスから
2月21日(金) 報告者:安部瑛士さん

イラン人の歌に感銘を受ける@橋の下
この日はエスファハーン最終日でした。最終日の主なスケジュールは、(1)歴史的な橋の周辺での散歩、(2)アルメニア教会の訪問、(3)カーシャーンへの移動でした。
橋の周辺を散策する中で、イランの水管理の方法や地下水の採取について学びました。本来であれば橋の下を流れているはずの川は、水不足の影響で上流で堰き止められ、干上がっていました。乾いた川底で遊ぶ子どもたちの姿や、取り残されたような複数のスワンボートを見て、イランが地球温暖化の深刻な影響受けていることを改めて実感しました。
この日は金曜日で、イラン人にとっての休日でした。橋の周辺を歩きながら、イランの休日の過ごし方について知ることができました。具体的には、大人数で歌を歌ったり、ピクニックをしたり、日光浴を楽しんだりと、リラックスした雰囲気の中で休日を満喫するイランの人々の姿が印象的でした。
次に、アルメニア教会を訪れました。イスラム国家であるイランに居住するマイノリティ(キリスト教徒)として、アルメニア人がどのようにイラン文化と折り合いをつけながら生活してきたのかを学ぶことができました。特に印象的だったのは、アルメニア教会の内部のタイルにイスラムのデザインが施されていたことです。これは、アルメニア文化とイスラム文化が融合してきたことを象徴するものだと感じました。

イスファハーンの橋

干上がってしまった川

アルメニア教会の外観

アルメニア教会内部のタイル
2月22日(土) 報告者:阿部想さん
この日はイランで過ごす最終日。私たちはボルージェルディー邸という歴史的な邸宅や身体障害者施設、世界遺産のフィン庭園、古代遺跡であるテペ・シャルクを訪れました。
カーシャーンの訪問の中で最も印象に残っているのは、身体障害者施設の見学です。この施設は大体12歳から40歳くらいまでの身体障害者の方々を対象に、リハビリを行ったり、職業訓練を行ったりしているそうです。
この施設の驚くべき点は、運営を一般の寄付で賄っているという点です。この施設は日本で言うところのNPO的な存在らしいのですが、政府からの補助金などは一切貰わず、一般の人々からの寄付で財政を維持しているとのことでした。一般の人々の福祉への関心の高さと、イスラーム教に根付く寄付文化の強さを実感しました。一方、経済制裁や物価高騰による経済状況の混迷が人々の寄付文化に与える影響も大きく、以前よりも施設の財政状況は苦しくなっているということも伺いました。実際、施設の7階建ての建物は資金繰りの問題から工事半ばで放置されており、外から見ると窓がついていない部分がほとんどでした。イランの福祉の可能性と限界の両面を感じた訪問となりました。

障害者施設で訓練中の方が描かれた独創的な絵

フィン庭園浴室で暗殺されるアミール・キャビール

古代遺跡テペ・シャルクの全貌
空港に見送りに来てくれたSIRの学生とともに
公益財団法人 笹川平和財団 第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
担当者:木村
E-mail:middleeast-islam@spf.or.jp