2024年度日本人学生イラン研修レポート Part1
2月13日(木)~2月17日(月)
第1グループ(戦略対話・交流促進担当)では、「戦略的日・イラン関係構築」事業における人材交流活動の一環として、公募による選抜を経た8人の日本人学生を2025年2月13日から2月22日までの10日間にわたりイランに派遣しました。この滞在中に参加学生が感じたことや考えたことを、2回に分けて発信します。
本記事ではPart 1と題し、前半5日分を掲載します。※Part2(後半5日分)はこちら。
なお、発信された内容は発信者個人の所感であり、当財団の意見を示すものではありません。
2月13日(水) 報告者:吉田莉々さん
お話をお伺いした事務局長代理のSouag氏はアルジャジーラが「中東に傾倒したメディアなのではなく、国際的なニュースに資する中東の出来事を報じているだけ」だと語っていました。改めて振り返ると、中東各地で起きているイシューは、法的・政治的に世界中の国に深く関わる問題がほとんどです。プロ意識を持って中東のニュースを世界に届けるというアルジャジーラの誇りを感じました。
“the Opinion and the Other Opinion”と謳っているように、アルジャジーラはさまざまな立場からニュースを提供することを目標としています。一方、組織トップの方々は、西欧中心的なナラティブに強い反発を持っていると感じました。一部の考え方は客観性を欠いていると思いつつも、彼らの姿勢は西欧中心の視線を脱構築する威力のあるものだと捉えました。

アルジャジーラ報道デスクでアナウンサー体験!私は早口すぎるかもしれない...

アルジャジーラでいただいた大量のおみやげ。 抜群のホスピタリティにメディアとしての余裕を感じる

印象的なロゴとのワンショットがとってもお気に入り!

スークワキーフのランプ屋さん。 色合いがかわいくて思わずパシャリ
2月14日(木) 報告者:平山新さん

聖なる戦争博物館の外観
約40年前のイラン・イラク戦争をテーマにした聖なる戦争博物館では、英語の展示がなかったため、イラン人学生とペアになり翻訳してもらいながら回りました。彼らの熱のこもった解説に圧倒され、一般市民が兵士として出兵したこと、学生によっては両親が戦争で負傷したり、戦火に巻き込まれたりしたことを知り、戦争の記憶が身近なものだと実感しました。また、子どもたちが遊び、人々が商売をしていた日常の場所が突然戦場と化すという体験展示が印象的でした。戦争犠牲者の名が現在の道の名前となっている標識の数々を見て、悲劇が忘れ去られぬようにしていると感じました。
一方、ここから徒歩圏内のブックガーデンにはペルシア語だけでなく、英語、ドイツ語、フランス語の本が並び、日本も含めた世界中の書籍の翻訳版がありました。反欧米的とされ、米国から経済制裁を受けている国とは思えないほど様々な本が売られているという平穏に出会えました。

犠牲者の名を冠した標識の展示

テヘラン最初の昼食、クビデ・カバブ

書店に並ぶ色とりどりの本
2月15日(金) 報告者:上原拓也さん
今日はSIRでの3つの講義と、日本側からの発表及び議論があった。それぞれイランの対外政策、世界遺産、経済に関するものであったが、経済に関する講義が一番印象に残っている。それは、第一次トランプ政権時の「最大限の圧力」では、EUや日本が主たる輸出先だったが、現在は中国やトルコ等のグルーバルサウスが取って替わっているというものだ。さらに輸出製品の多角化を進め、非石油輸出が50%以上である点から、イランが制裁を生き延びようとしていることが読み取れた。
続く我々の発表は、外交、災害、文化、社会の4つのテーマで発表した。私の担当した外交パートでは、日米同盟とそれを基にした日イラン関係について発表した。SIRの学生はプレゼンを傾聴し、またそれに対する彼らの質問は鋭いものであり、真剣に日イラン関係を考えてくれていると感じた。その後の議論では、日イラン関係のみならず。ガザの問題等についても意見を交わし、彼らの深い洞察力に感嘆した。最後には日本側からお土産を渡し、喜ばしい締めくくりとなった。
朝から夕方までしっかり議論した後、イマームザーデを訪れた。巨大かつ青を基調としたモスクは声が出なくなるほど美しかった。

政治パート発表直前

SIR(国際関係学院)にて

SIR学生や教授にお土産の手ぬぐいを渡す (日イランの友好の一助になれば、、)

イマームザーデにて(見てください!この美しい青!!)
2月16日(日) 報告者:竹之内花乃さん

在イラン塚田大使と撮って頂いた写真
一日を通して、とても貴重な経験の連続でした。中でも特に印象に残っている大使館訪問について紹介していきたいと思います。 まず、塚田大使にお会いした際のお話の中で、アメリカとヨーロッパの関係が低迷中の現在、二国間関係のニーズが高まっているという事実は全世界において言える事であり、イランに関しても例外ではないことを再認識しました。二国間関係について、イラン滞在中実際に親日国家であることを肌身で感じ、日本独自の継続的対話に基づく外交関係の成果の現れではないかと感じました。イラン研修全体を通して、外交関係が直接的に国民感情へ影響を及ぼし、人と人との関係や広報活動によって外交関係は支えられているということを体感しました。
また、大使館で働かれている方々の、日本の持つ国際力や長所を軸にして二国間関係を見る視点や、他の地域での職務経験に基づく多角的な視野などあらゆる面でお話に深みを感じ、将来のロールモデルを見つけることが出来ました。
この研修を通して、沢山の素敵なイランの人々と交流することができ、大好きな友達もたくさん出来ました!今後この研修のような人的交流なども促進し、日本とイラン双方への広報活動を活発化出来れば、より一層二国間関係に良い影響を及ぼすことが出来るのではないかと思っています。

大使館でのレセプション

イランで最も高いMilad Tower

タワーからのテヘランの街並み
2月17日(月) 報告者:山根佑斗さん
今日は、ありがたいことにことさら忙しく、三つの機関を訪問しました。IPIS(Institute of Political and International Studies)、ECO(Economic Cooperation Organization)、イラン外務省です。それぞれの場所で貴重な対話をすることができました。
中でも特に印象的だったのは、イラン外務省で東アジア地域を担当されているAli Asghar Mohammadiさんとの質疑です。Mohammadiさんは、イランをめぐる重要なアクターとしてしばしばあげられる諸国家(中国、ロシア、あるいはアメリカ)のみならず、日本の周辺国や、オセアニア諸国にも言及し、多角的な議論を紹介されました。グローバル社会のリアリティを垣間見ることができたように思います。
表敬訪問の後は、National Museum(=国立博物館)を訪れました。時間が押していたために駆け足での見学でしたが、ペルシアの歴史的な豊かさや、ペルシア文字やアラビア文字の美しい装飾が印象的でした。
博物館の後は、皆で少しだけ街を歩きました。観光地でも政府機関でもない、テヘランのありふれた街並みを歩く機会は案外少なく、貴重な時間でした。凄まじい交通量には圧倒されましたが、テヘランの日常にわずかでも近づけたように思えます。
ECOでの講義風景
イラン外務省にて
イランの街角(夕方の風景)
博物館のネコ
公益財団法人 笹川平和財団 第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
担当者:木村
E-mail:middleeast-islam@spf.or.jp