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SPF NOW

グローバル戦略トレンド(GST):リチャード・ジョンソン氏を迎えて2055年までを展望する

聞き手 笹川平和財団上席研究員 西田一平太


2025.12.10
17分

 グローバル戦略トレンド(GST)第7版をテーマに、英国国防省「Defence Futures(旧 Development, Concepts and Doctrine Centre)」チームのリチャード・ジョンソン氏が2055年までの世界を展望します。
 本インタビューでは、GST 6(2019年版)からGST 7(2024年版)への主な変更点、分析の中心となる6つの主要変化要因、そして各国における受け止め方の違いを取り上げます。さらに、新たに導入された「5つの未来への道筋と将来像」について、政策立案に活用できる視点を紹介します。最後に、英国政府と日本政府の協力強化にも希望を語ります。

西田氏:笹川平和財団へお越しいただき、ありがとうございます。英国国防省シンクタンクの「Defence Futures」チームが当財団を訪問し、グローバル戦略トレンドの分析について3回目のインタビューに応じていただき、大変光栄です。2019年に公開された前回のGST 6と今回のGST 7の変更点についてお伺いしたいのですが、新たな知見や調整事項はありましたか? また、過去5年間に得られた知見に基づく、基本仮説やモデル、方法論の変更はあったでしょうか?
 
ジョンソン氏:まず初めに、本日はお話の機会をいただきありがとうございます。私たちにとっても大変貴重な経験です。おっしゃる通り、これは第7版です。今回の分析での変更点の1つ目は、変化を推進する6つの主要要因に関する考察を中心に据えたことです。そのため、ここに書かれている分析や記述の大半は、これら6つの変化要因が及ぼし得る影響と、それに関する考察になっています。
  2つ目は、地域とテーマ別という視点です。これは、グローバルで大きな視点です。変化要因の影響を、グローバルな視点から大局的に考察しました。この分析を通して、世界のさまざまな地域や異なるテーマに目を向け、その違いやニュアンスをいくらか理解していただけると思います。
 3つ目は、本書から新たに導き出された点で、未来へ通じる5つのシナリオと5つの未来像です。これらはいずれも架空のものであり、予測ではありません。未来を予測することは不可能だと分かっていますが、戦略立案者や政策決定者が、今後30年間に想定されるさまざまな状況や未来像について考察し、それらの異なる未来像が、私たちが今日下す選択にどのような影響を与えるかを理解するためのツールとして、これを役立ててほしいと思っています。
 
西田氏:2024年9月のGST 7の発表以降、イギリス政府を始め各国の政府関係者、学術機関、市民社会といったさまざまな利害関係者との協議を続けてこられましたね。主にどういった反応がありましたか?日本を含む多くの先進国では、ガザやウクライナ、あるいは自国の防衛といった喫緊の問題の解決を迫られているように見えます。一方、インド、トルコ、インドネシア、あるいは湾岸諸国などのいわゆるグローバルサウスでは、この報告書の中で戦略トレンドの影響をいくつか受けることになると指摘されているのに、未来の展望を楽観視する傾向があるように見えます。
 今回の分析に対して各国の態度や認識、反応に違いはありますか?
 
ジョンソン氏:まず、私にとって身近なイギリスの防衛の例から始めましょう。現在イギリスでは、「戦略防衛見直し(SDR)」を図っています。こういった大規模な戦略的見直しを行う際は、政府と防衛部門全体が少し異なる文脈で考え、より長期的な視点で考察しながら戦略的議論を行う絶好の機会です。
  国家的な観点から見れば、これは私たちにとってまたとない機会です。「戦略防衛見直し」チームがGSTを読んで、その内容を頭に入れているからです。これは、イギリス政府全体においても同様です。他の省庁も独自に長期的な戦略の見直しや検討を進めており、程度の差はありますが、この分析が戦略的議論に影響を与える可能性があります。
  また、長年かけて分かったことは、私たちが仕事をする上で、世界中の友好国や同盟国と協力関係を築くことが有益であり、より広い視野を得るのに役立つということです。これまでにも、一部の同盟国やパートナー国がGSTを活用して、実際にそれを踏まえて自国の防衛計画を立てるのを見てきました。
  イギリスのパートナー国であるスウェーデンがその最先端を走っています。2018年に前回のGSTを発表した際、スウェーデンは「スウェーデン的統合」と呼ばれる手法で、「このグローバルな大局観は、スウェーデンにとって何を意味するのか?」を明らかにしました。今回も彼らは実に刺激的なことを成し遂げました。北欧の近隣諸国と連携して、「このグローバルな大局観は、北欧地域にとって何を意味するのか?北欧諸国にとってどんな問題が生じるのか?」と北欧地域全体を俯瞰したのです。世界には、同様の取り組みを行う国々が他にもあります。「このグローバルな大局観は、自国にとって何を意味するのか?」と同じアプローチを取っています。
 
西田氏:日本政府もこうした取り組みが興味深く有用だと気づいてくれることを願っています。日本は今まさに、大きな隣国と小さな隣国からの脅威に晒されている状況です。そのため、より緊急性の高い安全保障に目を向けがちです。また、これに関連して、日本の多国間主義に対する信頼も多くの点で薄れつつあるか、危機に瀕しているように思われます。GST 7では、移民や気候変動、都市化、紛争などの問題において、国際協力が必要となる場面がさらに増えるだろうと推測しています。
 では、西側諸国や日本のような安全保障理事会の非常任理事国にとって、第二次世界大戦後の多国間機関、特に国連の有用性についてはどのようにお考えでしょうか?外交努力と防衛努力のバランスをどのように取り、二国間パートナーや多国間パートナー、そしていわゆる「ミニラテラル」とどのような関係を築いていくべきなのでしょうか?
 
ジョンソン氏:短・長期的な観点から見て、これは私たちにとってかなり難しい課題です。特に今日何かが起こっている状況では、30年先の非常に広範なトレンドや破壊的な影響をもたらす衝撃の可能性を考察することはかなり困難だと思います。たとえば、ロシアの30年先の未来を考える場合、ウクライナで今起きていることを考慮しないでそうすることはかなり難しいでしょう。
  多国間主義と国際機関に関しては、本書では、熾烈なグローバル競争という概念について論じています。しかし、こうした問題について議論する際、これまでは、意識的にせよ無意識にせよ、ルールに基づいたシステムがあるという想定のもとに議論してきたように思います。現在では、さまざまな技術が開発され、さまざまなパンデミックが発生する可能性があり、さまざまな課題が存在しています。ですがその一方で、国際社会は、非常に安定した何かによって、より広い意味で組織化されていると言えます。今回私たちは、そうではない可能性について、つまり将来の世界が異なる形で組織化される可能性について考察しました。
 そこで、5つの架空の未来像を仮定しました。1つ目は、多国間主義に基づいた国際協力と相互調整の世界です。
  2つ目は、いわば現在の進化形とも言える世界です。つまり、現在の制度が進化・変化しつつも、なおも課題に直面する場合がある世界です。おそらくその世界の核心にあるのは民主主義です。その世界では、大国の指導者たちは依然として、民主主義を重要で価値ある統治手法であると考えています。
  3つ目の世界では、それとは真逆の世界を描きました。ルールや規範、国際機関が、現在とは全く異なる登場人物や制度により推進された場合を考察しました。
  4つ目の世界は、国際機関や制度が進化せず、あるいは消滅したために、紛争に陥る世界です。そこでは、世界が必要とする新たな行動規範やルールは存在しません。
  そして5つ目は、私たちが描いた未来像の中で最も興味深い世界であると同時に、私と同世代の人にとっては実現が最も困難であると感じる世界です。なぜなら、そこでは何が起ころうとも、その世界のありかたを決める中心的存在が国家ではないからです。その世界はおそらく、国家が直面する課題への対応に四苦八苦しているのを見た人々が、安全やサービスを国ではない他者(民間セクターや、人々の帰属意識の強い市町村)に求めるようになった世界です。私たちはこうした異なる未来像を提示することで、さまざまな世界を検討する機会を提供すると同時に、これらの未来像に照らして、今日私たちが下す選択が良い選択であるかを考察できるようにしているのです。
 
西田氏:現在、2025年2月時点では、要約レポート(簡潔版)を日本語に翻訳する作業を進めていらっしゃるそうですね。今年中に発表する予定だと伺いました。その草案を拝見していませんが、この種の分析を読むにあたり、何かアドバイスをいただけますか?というのも、私たちは未来に関する記述を読み慣れていませんから。
 
ジョンソン氏:誰かに助言するのは本当に気が引けます。日本政府やほかの誰かに「こうすべきだと思う」と言う立場ではないからです。私たちの立場からすれば、25年前にこの仕事が始まった根拠となる論理は、今もなお妥当であると考えています。1998年の「戦略防衛見直し(SDR)」報告書では、私たちの組織の設立が提言されるとともに、新たに2隻の空母を保有すべきだというイギリス政府の意向も表明されました。それが1998年のことでした。イギリスは現在も、その時の空母を保有しています。運用し続ければ、退役予定は2069年となります。つまり、政府が2隻の空母を保有したいと初めて表明してから退役するまでに、71年間もあるわけです。その間にどれほど多くの変化が起こり得るか考えてみてください。私たちは長期投資を行う事業に携わっており、中には非常に高額な投資もあります。前にも言いましたが、未来を予測することはできないものの、将来の状況や環境をある程度見通し、現在の意思決定に役立てることが重要だと考えています。
 もっと一般的な観点から言うと、今回の版で印象的だったのは、「グローバル競争」というテーマです。まさに世界規模での競争です。あらゆる大陸、あらゆる共有空間だけでなく、新たな領域(海底や海底下、宇宙、あるいはサイバースペースにおいてさえ)で、資源・エネルギー・市場へのアクセスをめぐる競争が繰り広げられることになるでしょう。
 これには、地球規模で考えなければならない側面があります。主体が国家であるなしにかかわらず、国際的な配慮が必要だということです。あらゆる物事が相互に関連している状況を踏まえ、安全保障という広範な視点において、自国の防衛戦略をどう位置づけるか、そして、さらに広範な国家戦略と世界における自国の立場という視点において、安全保障に関する見解をどう位置づけるかを理解することが重要です。これらは重大な課題であり、大きな挑戦です。私たちは提言をしませんが、ここに記載した知見やモデルを通して、人々が自らに厳しい問いを投げかけることを願っています。
  直線的な未来を想定するのは非常に簡単です。このままの軌道を進み続けた未来は簡単に想像できます。ですが私たちは、「もしそうでなかったら?」と問いかけるきっかけを与えたいのです。もし違ったら?もしああなったら?もしこうなったら?そういったさまざまな課題を検討する中で、防衛戦略の落としどころを見出すことができると思います。
 
西田氏:日本語版の翻訳を楽しみにしております。将来の安全保障体制に関する構想に向けて、イギリス政府と日本政府の協力関係が一層深まることを期待しております。
 
ジョンソン氏:心からそう願います。この仕事をするにあたり、私たちは客観的であるよう努めています。望ましい未来を記述しないよう心がけています。私たちは証拠を検証し、それが導く先を考察しようと努めています。こうした努力にもかかわらず、この仕事に偏見が持ち込まれるリスクは避けられません。つまり、イギリス人や北ヨーロッパ人の視点を通して、世界を見てしまう危険性があるのです。長年この仕事をしてきた中で、国際的な協力関係を通じて多様な視点や世界観を取り入れることで、そういったリスクを軽減または回避しようと試みてきました。そのような機会は増えています。さらに増え続けることを願っています。日本はその中で非常に重要な役割を果たしてきました。私たちが築いてきたパートナーシップや関係性は、この仕事をするのに、なくてはならないものです。これが今後も長く続いていくことを願っています。
 
西田氏:素晴らしいコメントをありがとうございました。
 
ジョンソン氏:ありがとうございました。


参考資料

グローバル戦略トレンド(Global Strategic Trends)第7版はこちらからご覧いただけます。
グローバル戦略トレンド(Global Strategic Trends)第6版はこちらからご覧いただけます。
Defense Futuresのウェブサイトはこちら。
Defense Futures の公式Xアカウントはこちら。


本インタビューの動画版は、笹川平和財団の YouTubeチャンネルでご視聴いただけます。


過去の Defence Futures とのインタビューはこちら:

  • 2023年2月13日公開:ピーター・オリーブ(Development, Concepts and Doctrine Centre未来・戦略分析室長)インタビュ (英語のみ)
  • 2019年4月4日公開:ユーウィン・マーチソン氏(Development, Concepts and Doctrine Centre未来・戦略分析室長、英国海兵隊准将)インタビュー
戦略・抑止グループ 北東アジア地域 ヨーロッパ・ユーラシア
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