ソロモン諸島の暴動に関する前回、前々回の記事は次のとおりです。
ソロモン諸島暴動発生:ソガバレ首相、暴力的抗議活動に責任ある者を追跡し捕える
(2021年11月25日、SOLOMON TIMES ONLINE/ABC/PACNEWS)
ソロモン諸島首相、野党リーダーへ「不信任動議に対峙する準備は整っている。動く前にまず考えるべき。」(11月29日、SBM/PACNEWS)
昨日の記事でお伝えしたように、今回の事象には、次の3つの要素があると考えられます。
1.マライタの人々とホニアラ(ガダルカナル)の中央政府の対立
2.スイダニ・マライタ州首相とソガバレ首相の対立
3.中台関係
この中で2.について、スイダニ州首相は今回の暴動に発展した抗議活動の原因はソガバレ政権の腐敗にあるとし、ソガバレ首相の要請に基づく豪州の兵士と警察官の派遣は、この原因である腐敗した政権を守ることになると述べています。
これに対し、ソガバレ首相は、自身を退任させたいのであれば議会で決めるべきだとし、野党側は不信任動議を議会に提出しています。また、同首相は自国の警察の力では抑えきれないほどの暴動に発展したことから、治安の安定には外国の力が必要として、2017年に豪州と締結した二国間安全保障条約に基づき豪州に支援を要請しました。中国への外交関係切り替えの件もあり、ソガバレ首相と豪州には一定の距離があると考えられていましたが、非常時には豪州に支援を求める関係性があることが明らかとなりました。
※ソロモン諸島における主な事象(1998-2003)
1998年~2003年、マライタ住民とガダルカナル住民間の部族紛争
2003年、治安維持と安定のための豪州軍を中心とする太平洋諸島フォーラム(PIF)の枠組みにおけるソロモン諸島地域支援ミッション(RAMSI)の派遣
2014年、ソガバレ首相就任(3回目)
2017年、ソガバレ首相不信任決議成立により退任
2017年、RAMSI撤収、豪州・ソロモン諸島二国間安全保障条約締結(2018年発効)
2019年4月、RAMSI撤収後初の総選挙、ソガバレ首相選出・就任
ソガバレ首相就任に反対する暴動発生
2019年9月、台湾から中国に外交関係切り替え
2021年11月、ソガバレ首相退任を求める抗議活動発生、暴動に発展
それぞれの立ち位置により異なる見方がありますが、今回の暴動では3名が犠牲になり、チャイナタウンを中心に商業施設が焼け落ちました。経済損失も食料不足も発生しています。このようにソロモン諸島には依然として安定と発展に関わるリスクが存在することが改めて確認されました。2017年のRAMSI撤収が正しかったのか、ソロモン諸島が自ら国内の安定を維持する能力があるのかなど、今後丁寧な検証が必要になると考えられます。