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日本に期待される太平洋強靭化へのさらなる貢献
(2025年7月1日、スバ、THE STRATEGIST/PACNEWS)
19分
抄訳
※アレックス・ブリストーASPI(オーストラリア戦略政策研究所上席分析官)による寄稿記事
オーストラリアの2024年国防戦略では、日本は地域の平和と安全保障を達成するための「不可欠なパートナー」と位置づけられている。しかし、日本とオーストラリアの防衛関係の強化は極めて重要である一方、オーストラリアやニュージーランドを含む太平洋諸国と連携して地域の強靭性を構築する機会を曖昧にする危険性がある。
具体的には、日本は太平洋地域における強靭な通信手段の構築に参加することができる。日本の資本、技術、専門知識は、地域の人道的対応メカニズムにも貢献可能だ。このようなイニシアティブは、この地域が加速する気候変動の影響に対処していく上で、緊急に必要とされている。2026年の気候変動枠組条約第31回締約国会議(COP31)開催に向けたオーストラリア・太平洋合同招致に対する東京の支援表明は、時宜を得たものとなるだろう。
戦略的見通しが悪化していることを考えれば、日本は太平洋においてインド太平洋地域の潜在的紛争への備えを助ける役割を果たすこともできるだろう。
タラノアという太平洋の精神において、最初のステップは集合し聞くことである。
ASPI(オーストラリア戦略政策研究所)は3月、政府、産業界、市民社会から太平洋、オーストラリア、日本の専門家をブリスベンに招き、強靭化に関するより実践的な協力の可能性を探った。ブリスベンは、オーストラリアと太平洋の隣人を結ぶゲートウェイ都市であることから選ばれた。
政策ワークショップに加え、参加者はオーストラリア外務貿易省の人道支援ウェアハウス(物資倉庫)を訪問した。このウェアハウスは、太平洋地域における自然災害やその他の危機の際に物的支援を届けるための主要拠点である。その後、参加者はPacific Response Group(PRG)の司令官から、最近の地震災害に対するバヌアツへPRG派遣について説明を受けた。
以下の結論と提言は私個人のものであるが、今年3月のブリスベン・ワークショップ、同6月に開催されたASPI防衛会議、および2024年に東京で開催された日本の第10回太平洋諸島首脳会議に先立ち、日本のシンクタンクである笹川平和財団が主催した複数の会議における議論を踏まえたものである。
提言1:日本政府は、海底ケーブルの損傷やサイバー侵入による通信中断など重要インフラの損失や障害に対する不測の事態などの危機発生時を含め、太平洋地域におけるインターネットアクセスや電気通信の強靭化のための開発・支援のためにさらに貢献できる。
日本は貢献できる立場にある。日本、オーストラリア、米国は協力してパラオに海底ケーブルを敷設し、日本企業の中には通信や衛星技術の最先端にいるところもある。 日本が参加することで、日本のリソースだけでなく、他のパートナー国や国際的な開発銀行、民間資本からの支援も得られるかもしれない。
日本がG20を通じて提唱してきた、透明性、バリューフォーマネー、環境の持続可能性、国家主権の尊重を目指した質の高いインフラ投資の原則に沿った支援であれば歓迎されるだろう。日本がオーストラリアやその他の国々と協力し、太平洋地域にインフラの資金調達、建設、メンテナンスのための代替オプションを提供してきた理由のひとつは、中国がこのような基準を度々無視することにある。
太平洋地域の政府関係者や機関が、オーストラリアで使用されている「.au」ドメイン名システムに相当する、現地で管理されている国別トップレベルドメイン(ccTLD)を使用したウェブサイトや電子メールアドレスを通じて、オンラインビジネスや通信を行えるようにすることが、実践的な重要分野のひとつとなるだろう。
現在、太平洋地域の多くの政府関係者や政府機関は、フェイスブックやGmailの個人アカウントなど、海外でホストされているサービスに依存している。これらのプラットフォームは、海底ケーブルが切断された場合など、有事の際にアクセスできなくなる可能性がある。太平洋地域の公式通信が国内でホスト・管理されるドメインに移行するのを支援することは、国家非常事態の際に信頼性が高く検証可能な情報を確実に入手できるようにするのに役立つ。
日本は、昨年の日豪外相・防衛相会議で発表された太平洋デジタル開発イニシアティブなど、既存のネットワークやフォーラムを活用することで、この取り組みを支援することができる。
しかし、実際的な進展には、必ずしも閣僚レベルの関与が必要なわけではない。オーストラリアの「.au」ドメインの管理者であるauDAは、サイバーレジリエンスを構築するための幅広い取り組みの一環として、ccTLDの能力を発展させるために、すでに太平洋地域のカウンターパートと協力している。このグループは、今週(6月30日~7月4日)サモアで開催される太平洋諸島インターネット・ガバナンス・フォーラムと太平洋ccTLDフォーラムで強靭化について議論する予定だ。
提言2:日本は、コミュニティベースの対応や危機発生時の物資配給を支援するためのインフラや技術の提供を含め、太平洋全域にわたる人道支援の調整において、より重要な役割を果たすことができる。
日本はすでに太平洋地域の自然災害や人道的緊急事態への対応を支援している。例えば、2022年のトンガのフンガトンガ・フンガハアパイ火山噴火の際には、日本は援助機関や自衛隊から災害救援専門家を派遣した。これには、自衛隊がオーストラリアクイーンズランド州からフライトを運航したことや、オーストラリアの調整ハブに人員を提供したことも含まれる。日本はまた、災害発生直前または発生後48時間以内に使用する物資の事前備蓄を目的としたPacific Humanitarian Warehousing Program(仮:太平洋人道ウェアハウスプログラム)などの地域イニシアティブにも貢献している。
しかし、太平洋諸国が後押しし、オーストラリアとのより円滑な連携が可能になれば、日本はもっと多くのことができるはずだ。例えば、日本の企業には、遠隔地のコミュニティが災害に対応できるよう、複雑さが少なく、使いやすい技術を専門に開発しているところがいくつかある。これらの技術は、日本の山間部の孤立した村落のために設計されたものだが、太平洋地域の地形や技術要件に適しているように思われる。
この例は、日本の技術やインフラに関する専門知識と、オーストラリアの広範な地域活動(footprint)や能力開発プログラ ムを組み合わせることが、太平洋地域にとって潜在的に有益であることを示している。次回の日豪首脳会談や国防・外相共同声明で言及することで、さらなる協力に向けた機運を高めることができるかもしれない。
ASPIのBlake JohnsonとAdam Ziogasが論じているように、日本はPRGが発展していく中で、南太平洋防衛大臣会合の他のオブザーバーと連携し、PRGを支援する方法を模索することもできるだろう。
提言3:日本は、インド太平洋における潜在的な紛争に備えた地域の有事における計画、特にパラオ、ミクロネシア連邦、パプアニューギニア、ソロモン諸島の近くを通るオーストラリアから日本への南北ルート(※有事の際の代替シーレーン)における海洋安全保障の調整に貢献することができる。このシーレーンは、特に南シナ海の通過が制限された場合、地域紛争時の主要なルートとなる可能性がある。
太平洋地域の指導者の多くは、自国が地域紛争の影響を受けることを認識している。6月に開催されたASPIの国防会議において、ビリー・ジョセフPNG国防相は、PNGとオーストラリアの安全保障と国防は切っても切れない関係にあると述べた。パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島との長年にわたる日本の海洋安全保障協力も、同様の関係に支えられている。
ジョセフ国防相が述べたように、「2頭の象が戦えば、草が苦しむ」。しかし、潜在的な紛争における太平洋の戦略的重要性と脆弱性の程度は、地域全体でまだ十分に理解されていない可能性があり、準備態勢と抑止力にリスクをもたらしている。日本は、このような情報と能力のギャップを埋める役割を果たすことができる。
日本の閣僚は、日本の太平洋・島サミットや日・太平洋島嶼国国防大臣会合において、すでに太平洋のカウンターパートとハイレベルな対話を行う機会を有している。しかし、地域の紛争への備えは非常にデリケートなものであり、日本が参加しているタリスマン・セイバーなどの合同軍事演習で培われた人と人とのネットワークのように、最初は慎重な二国間のチャンネルや非公式の小グループを通じて話し合う方がよい場合もある。日本は今年、PNGでのタリスマン・セイバー活動には参加しないが、将来的に自衛隊がPNGや太平洋の他の場所における活動に貢献する可能性はあるかもしれない。
軍隊を持つ太平洋の5カ国(フィジー、PNG、トンガ、オーストラリア、ニュージーランド)だけが参加するのではなく、地域全体の警察、緊急対応、国家安全保障の政府担当官が参加する包括的なフォーラムが特に重要である。例えば、日本がオブザーバーとして参加している太平洋安全保障合同長官会議(Joint Heads of Pacific Security)において、日本のプレゼンスと貢献度を高めることを検討できるだろう。
政治的な意志があれば、日本政府は、政府開発援助(ODA)とは別に実施している政府安全保障援助(OSA:Official Security Assistance)を、軍隊を持たない太平洋島嶼国にも拡大することも可能だ。
しかし、このステップには、地域全体にわたる徹底的な協議が必要であり、太平洋島嶼国フォーラムが「青い太平洋大陸のための2050年戦略」で合意した優先事項に沿ったものでなければならない。そうでなければ、中国やロシア、その他の対外勢力は、日本の行動を口実にして、軍備移転によって太平洋を不安定化させるかもしれない。
まとめると、日本は、ASPI防衛会議でパット・コンロイオーストラリア太平洋島嶼国担当大臣が繰り返し強調した、地域の安全保障上のギャップは太平洋諸国が埋めるべきだという原則を損なうことなく、強靭化により大きく貢献することができる。このような貢献は、中国や他の域外の大国と同じように、日本が太平洋地域のフォーラムに正会員として参加する道筋を開くものではない。
ジョセフがASPIとのポッドキャスト・インタビューで説明したように、戦後の国際秩序のルールは急速に書き換えられつつあり、これに対処する最善の方法は率直な対話であり、大国は小国の発言に耳を傾ける用意がなければならない。ブリスベンで開催されたASPIの政策ワークショップでは、太平洋の参加者がほとんど話し、日本側は熱心に耳を傾ける姿勢を見せた。
※アレックス・ブリストーはASPIの上席分析官。この取り組みは豪日交流基金の支援および笹川平和財団の協力による。
コメント
2017年以降、私は年に数回、オーストラリア駐日大使館など太平洋島嶼国に関わる国の在京大使館と太平洋島嶼地域情勢、先進国連携、トラック1.5対話などに関する対話を行ってきました。そのような中、2023年8月にブリストー上席分析官から連絡があり、2024年3月にはキャンベラのASPIで非公開ワークショップで災害管理を含む地域安全保障情勢に関する意見交換を行いました。
同7月には、第10回太平洋・島サミット(PALM10)に合わせて東京の笹川平和財団で開催した「太平洋島嶼国ウィークス」において、ブリストー上席分析官、当時米国イーストウェストセンター総長で現ダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センター(DKI-APCSS)所長であるスザンヌ・P・ヴァレス=ラム米陸軍退役少将、パラオのジェニファー・アンソン国家安全保障調整官、ミクロネシア連邦のレオニト・バカランド・ジュニア司法長官(当時は代行)、マーシャル諸島のウェズリー・ザカラス法務大臣、ツバルのティロウ・コフィ外務事務官(オブザーバーとして参加)とともに、日米・米国自由連合国連携、日米豪太平洋島嶼国連携、排他的経済水域管理、グレーゾーン活動の実態と想定されるリスク、法執行と防衛の境界課題などについて、5つほど設定した公開・非公開のセッションで情報共有・意見交換を行いました。
今年2025年2月には私がキャンベラ、ウェリントン、ホノルルを訪問し、同3月、笹川平和財団が協力する形でブリスベンにおいてASPIによる災害管理・安全保障に関するトラック1.5対話が開催されました。パプアニューギニア、ツバル、バヌアツ、パラオ、トンガの災害管理・海洋管理・安全保障担当部局、オーストラリア国防省、パシフィック・フュージョンセンター、民間のサイバー専門家、日本からは私と経済産業省J-Startup企業として選定された(株)イノフィス、(株)プロドローンの2社、全体で25名ほどが参加しました。(株)イノフィス取締役の依田大氏は同社が開発した動力不要のマッスルスーツを、(株)プロドローン執行役員の竹島周作氏は同社が開発した外洋の海上でも運用可能なドローンを、それぞれ日本における災害発生時の事例とともに紹介されました。
このブリスベン対話では日本企業が持つ技術の太平洋島嶼国における災害時や海洋管理への活用可能性、領海外における想定される海底ケーブル破壊工作に関する問題、サイバーセキュリティ強靭化のための実質的な課題などに関する議論が行われ、またブリスベンにあるHumanitarian Logistics Capability warehouseやPacific Response Group事務局では、2024年9月21日のクアッド・ウィルミントン宣言に基づく日米豪印の災害管理協力が着々と進められていることが確認されました。
2025年6月には、オーストラリアにてASPI主催の安全保障対話が開催され、さらに6月30日および7月1日には、笹川平和財団の協力のもと、官民の実務者が参加する「Pacific Internet Multistakeholder Forum」がサモアにて実施されました。
サモアでのフォーラムでは、ccTLD(国別コード付きトップレベルドメイン)の管理、国・地域単位でのサイバー環境における脆弱性、そしてドナーによる関与の可能性など、サイバーセキュリティ強靭化のためのより具体的な課題と対策について活発な議論が展開されました。太平洋地域における脆弱な脇腹である太平洋島嶼国のサイバーセキュリティ強靭化は日本にとっても重要であり、適切な海洋管理や防災・災害管理といった分野にも密接に関係する重要な要素だといえます。
今回の記事では、これらの会議を踏まえたうえで、ブリストー上席分析官による日本への期待が示されています。第一に挙げられたのは、サイバーインフラの強化、第二に人道支援および災害対応体制の強化、そして第三には有事を想定した代替シーレーンの確保に関する提言です。
特に日本とオーストラリア間の物流を支えるシーレーンについては、ソロモン諸島、パプアニューギニア(同国ブーゲンビル自治州を含む)、ミクロネシア連邦(特にヤップ州)、およびパラオといった太平洋島嶼国の戦略的重要性が指摘されています。仮に南シナ海や台湾海峡が利用困難となる事態が生じた場合、これらの代替ルートの重要性は一層高まると考えられます。
日本はこれら3つの分野それぞれにおいて、すでに多様な取り組みを進めています。しかし、現在の地域情勢を踏まえると、米国の重要性は引き続き不変である一方で、日豪間の連携をさらに強化し、より具体的なシナリオに対応できる実効的な取り組みを推進すべきとの認識のもと、私たちは議論を深めています。
また、太平洋島嶼国との関係においては、単に援助を増やすことが目的ではなく、それぞれの国が主権国家としての責任と主体性を持ち、対等かつ率直なパートナーシップを築いていくことを重視しています。
こうした観点から、太平洋島嶼国ウィークス、ブリスベン災害管理・安全保障対話、そしてサモアでのフォーラムといった取り組みは、表層的ではなく、具体性と実効性を伴った議論を行う場として一貫性を持っています。トラック1.5対話を通じて得られる知見や提言が、各国の政策形成や国際的な議論に資することを期待しています。
(2025年7月8日 塩澤英之 海洋政策研究所島嶼国・地域部部長)
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