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麻薬危機が拡大させる健康危機
(2025年7月8日、スバ、NEWSROOM/PACNEWS)
抄訳
フィジーがメタンフェタミン(覚せい剤)危機の拡大が主因となっているHIV感染爆発を宣言してから6カ月、UNAIDSの太平洋地域アドバイザーによれば、この地域の他の国々も危機にさらされているという。
「心配だ。フィジーで起こっているような新たな危機が起こりうるリスク要因は、全ての国に存在している。」と、太平洋島嶼国14カ国を担当するレナータ・ラム氏が述べた。
太平洋諸島でのHIV検査は不十分であり、問題の規模を明確に把握できていないが、ソロモン諸島、バヌアツ、トンガを含むいくつかの国では感染者が増加していると報告されている。
昨年、フィジーの新規感染者数は1583人であった。
「これは、いままでで一番高い数字だ。2023年から281パーセント増加した。また、救命のための治療が無料で受けられるにもかかわらず、結果が出るまでの遅れ、移動人口の多さ、地理的な広がり、病気に対する偏見などの障壁があるため、治療率が比較的低くなっている。」
ラム氏は2017年からUNAIDSで働いているが、その間に状況は変わったという。
「HIVの流行は主に性的感染によってもたらされていたが、2019年の初め、フィジーを介して起こっていた麻薬密輸のため、注射薬物使用や家庭内薬物使用の散発的な事例を耳にするようになった。」
ウイルスを蔓延させる原因として注目され、非難を浴びている行為のひとつが、『bluetoothing」と呼ばれるものである。これは、ある人が麻薬を注射器で打った後、自分の血液を抜いて他の人に分け与えるというものだ。専門家によれば、これはハイな気分を 「分かち合う 」というリスクの高い方法だが、効果はないそうだ。
HIVを含め、血液を媒介とするさまざまな病気に感染するリスクが高いのだ。
しかしラム氏は、これは誇張されすぎているとし「ブルートゥーシングはセンセーショナルに報道されているが、麻薬を使用する人が実際に麻薬を摂取する主な方法ではない。実際にこのようなことをしている人はごく一部だ。注射針の共有が主な原因だ。」と述べた。
ラムによれば、入手可能なデータから、フィジーでHIVに感染した人の約48パーセントは麻薬注射によるもので、性的感染によるものは約43パーセントとのことだ (母子感染も昨年は32件あった)。
HIV危機の背後には麻薬危機があることは明らかだ。
そして、麻薬危機の背後には、フィジーを介した麻薬密売方法の変化がある。
今日の「The Detail」のエピソードでは、越境犯罪の専門家が、フィジーを介した麻薬密売がここ数年でどのように変化し、現地のローカルなシンジケートに依存するようになったのか、そしてこのことがフィジーの麻薬使用とその結果としてのHIV感染率にどのような影響を及ぼしているかについて説明する。
カンタベリー大学の太平洋地域安全保障ハブのリーダーであるホセ・ソーサ=サントスによると、麻薬は太平洋諸島を経由してニュージーランドと豪州に運ばれるが、小さな市場であるにもかかわらず、市場の管理が厳しいため、最高値で取引されてるという。
しかし、現地の密売人が現金ではなく麻薬で報酬を得ている場合、販売先となる現地の市場が必要になるとし「地元住民を麻薬中毒にさせようとしているのは大規模なカルテルではなく、より小さな地域シンジケートや国のシンジケートであり、それらが現地の市場から真に利益を得ているのだ。そうすることで、麻薬の流通を助ける『歩兵』が生まれる。それにより将来のフィジーへの道筋が見えてくる。早急に対処しなければ、フィジーは準麻薬国家(a semi narco state)、すなわちシンジケートやカルテルが国家そのものに不当かつ強い影響力を持ち、政府が法の執行を維持するのに苦労するような場所になりかねない。」と述べた。
コメント
私の部署では太平洋島嶼国における安全保障、海上保安、法執行に関する活動を実施しています。海上保安に関しては、基本的には違法操業取締りや海難救助が対象となりますが、越境犯罪(麻薬密輸、人身売買など)の問題も対象から外すことはできません。これらの越境犯罪は以前から存在していますが、麻薬問題に関しては、特にコロナ以降、フィジー、サモア、トンガ、パラオにおいて形を変えて目立つようになった印象があります。形を変えてというのは、以前は太平洋島嶼国は例えば南米から豪州、NZなどへの「経由地」であったものが「消費地」となったという点で、あるいは材料を集め合成し生産しているのではないかという噂も耳にするようになりました。
例えば、2022年12月、フィジーでタワケ海軍司令官と海上保安関連で話をした際、同司令官は「以前はフィジーは麻薬密輸ルートの通過地点であったが、今ではフィジーが消費地の1つになっている」と問題視していました。また、別の機会にサモアやトンガを訪問した際にも、現地の方々から国内で麻薬が広がっているようだとの話がありました。
そのような麻薬の問題が深刻化する一方で、2021年頃からフィジーでHIVの新規感染者数が増えているというニュースが目に付くようになりました。2023年半ばに、フィジー、サモア、トンガを訪問した際に、フィジーにおける「麻薬の広がり」と「HIVの感染増加」というものが、まるで1980年代の世界における麻薬とHIV感染拡大の関連性が問題視されていた時期に似ていると各所で話をしていた記憶があります。私が10代の頃、当時は「人間やめますか、それとも~」というキャンペーンCMが流れていた時代の話、人々が通過してきた時代の話だったものが、40年も遅れてフィジーで発生しているようであり、なぜなのか疑問でした。
その後、フィジーの現地の方々と話すと、やはり今回の記事にあるような原因が伝えられるようになりました。昨年(2024年)7月、太平洋島嶼国ウィークスの際に協力していただいたフィジーの方々からも、注射針の共有、またここではbluetoothingとありますが、1つのグループの中で仲間としての結束の意味で血液をシェアしているのが問題だといった話を聞きました。
フィジーが麻薬の消費地となり、現地の人々の麻薬使用が拡大していることが新しい事象であり、40年前の世界の問題、麻薬の拡大とHIV感染増加という状況に、フィジーは初めて晒されているのかもしれません。
今年の1月、フィジー政府はHIV感染爆発を宣言しました。当時の報道では、2024年1月から9月の新規感染者数が1093件で、2023年同時期の3倍の数字とのことでした。地域メディアも注目しており、最近では、ソロモン諸島、パプアニューギニアでのHIVに関する報道も出始めています。
私の古い話になりますが、30年ほど前、青年海外協力隊でザンビアの東端の町チパタに赴任していました。当時、JICAの健康管理員の方などから伝えられていたのは、現地の平均寿命が30代で、ザンビア大学の学生の4割がHIVに感染しているというものでした。ザンビアの場合は麻薬に関連しているものではなく性感染症として広がっていました。現地は脳性マラリアをはじめとしてさまざまな健康リスクがある国であったため、私がいた集落では毎週のように葬儀があり、2年間で25名いた同僚教員のうち5名が何らかの理由でなくなりました。今でも覚えているのは、私より5つほど年上で、子供もおり、よく一緒にお茶を飲んでいろいろ話をしていたサカラという友人のことです。大学も出ており、理数科教師でもありましたが、私が帰国する半年ほど前から体調を崩し、会うことがなくなりました。他の同僚からどうやらAIDSが発症したようで、治療法がなく、現地のウィッチドクター(まじない師のような人で、地域に必ずいる)のところに行き、錆びたナイフで具合の悪いところを切除するなどした結果、急速に体調が悪化してしまったようだと話がありました。その後、私は一度も会うこともなく、帰国1~2週間ほど前に赴任地をさり、首都ルサカの隊員ドミトリーで帰国準備をしていましたが、その同僚から帰国前日に電話でサカラが亡くなったと伝えられました。
今ではHIVの治療方法もありますが、フィジーの状況は麻薬汚染も関係していることが厄介です。過去の報道を確認すると、2021年半ばには現在まで続く変化が見え始めていたようです。その後、状況は悪化し現在に至ります。ここで麻薬汚染およびHIV感染の拡大を食い止められるか、それとも記事に記されているようにさらなる悪化へと進んでしまうのか、重要な局面にあると言えるでしょう。
(2025年7月17日 塩澤英之 海洋政策研究所島嶼国・地域部部長)
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