Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第93号(2004.06.20発行)

第93号(2004.06.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者((社)海洋産業研究会常務理事)◆中原裕幸

◆世界最速のスパコン、JAMSTECの地球シミュレータ。世界一の座を取られてアメリカがスプートニク・ショック以来というほど悔しがっていると伝えられるが、山形ペーパーはそのスパコンを駆使したフロンティア研究最前線での指導的立場から海洋環境変動予報の実用化を説く。地球温暖化や気候変動、海洋環境変動を10年スケールで予測していくという壮大なスケールに目を見張る思い。海洋管理への活用や受益者ニーズの掘り起こしなど「産官学のすべてを賑やかにする可能性」の中身と実際に大いに期待したい。

◆海洋学分野でのわが国のパイオニア的存在で世界的権威でもある奈須先生は大学での学位について自らの経験も織り交ぜながら熟達した平易な文体で提案をする。東海大学での学士(海洋学)授与という新時代の到来を喜び、将来は海洋学修士、海洋学博士、さらには理学や工学、法学等との組み合わせ学位をという画期的提案。「地球上で、海上、海中、海底で縦横無尽に活躍を」とのメッセージを、後に続くものとして読者諸兄と一緒にしっかり受け止めたい。

◆もう一編のペーパーはがらりと趣が変わって、漁船漁業すなわち"獲る漁業"の構造改革に関する中間報告の紹介。まき網や底引き網、延縄に中層トロールという、依然として海面漁業の主要部分を占める漁船漁業分野における知られざる再生努力。電気推進システムや次世代型漁船の導入などを謳いながら、それによる漁獲圧増加可能性すなわち獲り過ぎに対する懸念の払拭にも触れねばならないという脱皮再生の苦しみを垣間見る思い。"つくり育てる漁業"の振興にばかり目をとらわれることなく獲る漁業の役割と今後についても十分検討が必要。今宵は活魚で一杯やりながら自前の水産食糧供給問題を考えてみませんか。(了)

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