Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第90号(2004.05.05発行)

第90号(2004.05.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「ふるさとの皐月の海辺ヨット満つ」(木村山花)。北海道はまだ桜の開花を待つ季節であるが、日本列島のかなりの部分ではもう初夏。さわやかな皐月の潮風をさまざまに楽しめる気候となった。

◆大嶋オピニオンは、編集子も関係している、国土交通省の「プレジャーボート安全利用システム構築検討会」の初年度の検討内容の紹介である。プレジャーボートなどを利用して、海を職業的に利用していない普通の市民が、海を楽しむ機会が増せば増すほど、その安全に対する制度の整備も求められるようになる。アンケート結果からも明らかなように、海の利用者の多くは技術未熟者である可能性が高い。情報は安全にとって非常に大きな意味を持つ。さまざまな情報が、安価に、確実に、手軽に入手できるようなシステムの構築に努力したい。

◆上野オピニオンは、これまで本誌でも2度にわたって民のサイドからの取り組みを紹介した、サハリン石油開発のもたらしうる環境上の危険性(70号、86号参照)に、政府としてどのような対策がなされているかを紹介する貴重な情報である。ヒシャクで絶望的な量の油を救う人や、油まみれで動けなくなった鳥などの衝撃的映像を2度と見たくないという人類共通の思いと、事故は起こるものであり、万全がないという覚悟でのさまざまな措置の積極的実施という現実認識はともに重要である。国際問題であるが故の複雑性もあろうが、官民一体となって、今後の展開を注意深く見守って行きたいものである。

◆前田オピニオンは、地球温暖化に対して、ノアの方舟の超大型版であるギガフロートで対応する可能性を示す夢の物語である。この夢は米国の国防費の50年分、ざっと見積もって1,500兆円で売ろうという大きな夢である。エンジニアの手腕と度胸を、これくらい大きな規模で売り込んで来る議論に、世の中はどう対応するのだろうか。今後の議論の発展が楽しみ。

◆「海という輝けるもの朱夏に入る」(佐藤文理)。個人としても社会としても、私たちは海にいつも輝きを見続けたいものである。(了)

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