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オーシャンニューズレター

第83号(2004.01.20発行)

第83号(2004.01.20 発行)

東京港から発信する日本の物流改革

東京都港湾局港湾整備部計画課長◆石山明久

首都圏の生活と産業を物流面から支える役割を担い、魅力あふれる水辺都市の形成を目指した、東京港港湾計画の基本方針(中間報告)を紹介する。

東京港第7次改訂港湾計画の基本方針(中間報告)

東京港は、低廉・迅速・安定に貨物を届けることで、首都圏4,000万人の生活と産業を支えています。その役割を具体的にみると、例えば、都民一世帯一ヶ月あたりの物資消費金額17万円のうち、東京港経由の消費額は、約3万円弱を占めています。取扱量をみても、外貿コンテナ5年連続日本一を誇っており、わが国を代表する国際貿易港であります。また、北は北海道から、南は沖縄・九州と結ばれた国内の拠点港でもあります。

最近、身のまわりに中国をはじめとするアジアの製品が増えてきたように、アジアからの貨物は急増しています。しかし、一方で香港やシンガポール・上海など「アジア諸港の勢い」も増しており、わが国との較差は広がるばかりです。このままですと、日本の港に、世界を結ぶ大型のコンテナ船が寄港しなくなってしまい、アジアの他港から小さな船で積み替えて貨物が届くことになってしまう恐れがあります。その結果、輸送日数ばかりでなく費用もかかり、経済への打撃ははかり知れないものとなります。いま、港の競争力を高めることが求められています。

一方、東京臨海地域は、都心に近接しているにもかかわらず、海辺や運河など豊かな水辺空間や広大な埋立地を備えており、その魅力は限りないものです。臨海地域には、東京の再生を牽引する都市の活力が期待されています。

こうしたなか、東京都は、概ね20年後を見据えた東京港の政策を提言する「東京港第7次改訂港湾計画の基本方針(中間報告)」をとりまとめました。

本稿では、中間報告の概要を紹介いたします。なお、詳細については、東京都港湾局のホームページ(http://www.kouwan.metro.tokyo.jp/jigyo/portplan/)をご覧下さい。

首都圏の物流改革をリードするメインポート

「東京港第7次改訂港湾計画の基本方針(中間報告)」概念図

今後とも東京港が物流拠点としての役割を果たし続けるためには、港湾の大胆な構造改革が必要です。

○サービスアップとコストダウン

船が港に着いて、貨物が出るまでの日数を2.4日から1日に短縮します。サービスをアップすることで、貨物を増やし、港に係る費用を下げます。需要と供給の好循環を図ることで、アジアの港湾と互角になるべくコストを3割低減します。

また、今後のアジアを中心とした貨物量の増加には、まず既存のふ頭の機能を強化し、施設能力を向上した上で、中央防波堤外側地区に新たなふ頭を整備して対応します。

○高機能の物流機能を備えた港づくり

店舗の売れ行きに合わせ、速やかに納品ができるなど、きめ細やかな物流サービスに対応するため、高機能の倉庫を誘致していきます。これらの倉庫は、自動ピッキングや自動仕分け機能に加え、ラベル貼りなどの流通加工機能や高度な情報システムに対応しているとともに、コンテナなどの大口貨物を速やかに店別の小口貨物に仕分けし、配送できるようになっています。これにより、在庫機能に加え流通加工機能も備えた国際物流の拠点を形成します。

また、貨物が早く荷主や港へ届くように、規制緩和などソフト策も含め道路ネットワーク機能を充実します。

○横浜港や川崎港などとの広域連携

港に係る費用の低減、貨物や船舶の情報の共有化などにより、港湾間の連携を進め、首都圏全体の物流効率化を進めます。

首都東京再生のリーディングエリア

東京臨海地域には、魅力あふれる水辺都市を形成していきます。

○都市機能と港湾機能の調和

湾岸道路を境に、陸側は都市、海側は港湾とすみ分けを図ることで、メリハリのある調和のとれた地域を形成し、東京を元気にする「みなと・まち」をつくります。

また、水辺のやすらぎ、海辺の賑わいを生み出します。その一つとして「運河ルネッサンス」と銘打って運河を再生し、活用します。

○環境の保全・回復

大規模な海上公園「海の森」などにより、水と緑で東京港内にグルッとつながるネットワークを拡充します。また、生物の生息環境に配慮した護岸の整備などにより、カニやハゼなどをはじめいろいろな水生生物が育つ空間を創ります。

○羽田空港との共存

羽田空港の再拡張は、廃棄物処理場と港湾機能と共存して進みます。今後とも、首都圏の玄関口として羽田空港と東京港が共に栄えていきます。

基本方針の実現に向けて

この基本方針の策定にあたり、ホームページ上でのアンケート調査に加え、新たな試みとして東京港内の船上見学を行い、都民の皆さんから貴重なご意見を沢山頂きました。今後、このご意見を活かして、本年2月頃に港湾審議会より最終答申を頂く予定としています。

東京港は、「世界と競う港湾サービスの実現」と「魅力あふれる水辺都市の形成」を目指し、未来に向かって前進します。(了)

※都民の消費額は都生活文化局、東京港経由額は税関データに基づく試算

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