Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第82号(2004.01.05発行)

第82号(2004.01.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

謹賀新年

◆「波の音高く元日をはりけり」(久保田万太郎)。平成16年の幕開けである。さまざまな出来事の中であっという間に過ぎた去年、今年はどのような年になるのであろうか。先の読めない時代の変化の激しさに振り回されながら、「沖かけて波一つなき二日かな」(万太郎)という平穏を心から望む。

◆堀部オピニオンは、慶長18年、日本初の太平洋横断経済使節として出発した慶長使節団の船、サン・ファン・バウティスタ号の復元と、その後の10年の博物館の活動を紹介する。鎖国確立以前の日本人が、進取の気性に富む海洋民族であったことを改めて思い出す。昔を温めることは新たな時代の要請を意識することと結びつく。船大工の技術が新たな時代の技術と無縁ではないとの社会的確信が大切であろう。

◆高橋オピニオンは、便宜置籍船という、われわれが十分な知識を持たない問題について、その発生の必然的なメカニズムを説得的に説明する。便宜置籍船と同じコストでなければ、日本の海運会社が株主に日本籍船を建造することを説明できない、という説明はきわめて合理的である。海運国日本の将来を政府がどのように展望し、何を決断するか、その責任は重い。

◆一色オピニオンは、原子力発電所の新しい技術の動向とメガフロートを結びつける。二酸化炭素の排出の抑制という世界的な目標との関係では環境に優しい原子力発電も、一方で事故の危険性との関係では、多くの人に嫌われる存在でもある。メガフロート技術と結びつくことによって、原子力発電が社会的により受け入れやすい存在になれば、こんなにすばらしいことはない。乗り越えるべき技術的課題も多いだろうが、新春の夢にふさわしいオピニオンをいただいた。

◆新年号であるので、混沌として行方の見えない日本と世界の今年の安定を、紫式部がその父の国守の力を祝賀しつつ言葉遊びをした歌に寄せ、古いものと新しいものの対比で祈ろう。「おいつ島しまもる神やいさむらん波もさわがぬわらはべの浦」。力ではなく、言葉が新しい時代を動かすことを願いながら。(了)

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