Ocean Newsletter
オーシャンニューズレター
第610号(2026.10.20発行)
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地元駿河湾の海を学び、研究を支える
~高校生ダイバーたちの取り組み~
KEYWORDS
海洋教育活動/高校生ダイバー/焼津水産高等学校
静岡県立焼津水産高等学校教諭(海洋部ダイビング班顧問)◆藤原啓太、山梨大学大学院総合研究部医学域助教◆塙宗継
静岡県立焼津水産高等学校海洋部ダイビング班では、潜水技術を生かした海洋教育・環境保全・社会貢献活動を実践している。海中ごみの回収やルアーストラップ作りを通じた環境啓発に加え、駿河湾用宗海岸でのムラサキウニ採捕活動では、漁業者や大学と連携し、水産資源研究や海洋教育に貢献している。採捕後には、ウニを教材として生態系における役割や水産資源としての価値を学ぶ機会を設け、体験的な学習を実施している。本活動は、高校生が身に付けた潜水技術を地域社会や研究活動に生かし、海洋人材の育成と地域連携の新たな可能性を示す取り組みである。
焼津水産高校海洋部ダイビング班の活動
焼津水産高等学校海洋部ダイビング班(以下、ダイビング班)では、1年次にダイビングライセンス(Cカード)を取得し、スクーバダイビングに必要な知識と技術を身に付けた上で、潜水活動を行っている。主な活動場所は地元焼津の石津浜(いしづはま)海岸(写真1左上)であり、夏季には伊豆半島での合宿も実施している。
ダイビング班では、生徒たちが自らの潜水技術に自信を持ち、その技術が社会的にも意義を持つことを実感できるよう、海中清掃、環境保全の啓発活動、社会貢献活動に取り組んでいる。
海中清掃については、2016年頃から石津浜海岸での潜水中に、ルアーなどの釣具を中心とした海中ごみの回収を行っている。石津浜海岸は釣り場としても人気が高いスポットの一つであり、海底には、根掛かりなどによって多くの釣具が残されている(写真1右上)。これらは海中景観を損ねるだけでなく、針が魚に刺さったままになる(写真1左下)など、海洋生物に影響を及ぼすこともある。この活動は、「自分たちで海をきれいにしよう」という生徒たち自身の発案から始まり、現在では地域からも評価される取り組みとなっている。
また、回収した海中ごみを活用した環境保全の啓発活動も行っている。学校祭や校外イベントでは、小中学生を対象に、海中ごみであるルアーを装飾したストラップ作りを実施している(写真1右下)。作製前後には、海中清掃の様子を紹介したり、参加者への意識調査を行ったりすることで、海洋環境の現状を知ってもらい、環境保全への関心を高める機会としている。これまでに約500人の小中学生が体験しており、海の環境について考える場をつくることができた。ルアーの装飾方法は、環境保全に関するワークショップを行う外部協力者から助言を受けながら、生徒たち自身が考案したものである。この過程で、生徒たちはコミュニケーション能力を磨くとともに、環境保全に関する考え方や手法を学ぶことができた。外部協力者との連携により教育の質が高まり、より効果的な啓発活動につながっている。
さらに、生徒たちが身に付けたダイビング技術は、マリンスポーツの普及や社会貢献にも生かされている。外部団体が実施する障がいのある方を対象としたダイビングイベントでは、水中補助役として依頼を受け、生徒が参加者の潜水を補助した。これは生徒のダイビング技術が評価されたことで実現したものであり、身に付けた技術が社会に役立つことを実感できる貴重な機会となった。
ダイビング班では、生徒たちが自らの潜水技術に自信を持ち、その技術が社会的にも意義を持つことを実感できるよう、海中清掃、環境保全の啓発活動、社会貢献活動に取り組んでいる。
海中清掃については、2016年頃から石津浜海岸での潜水中に、ルアーなどの釣具を中心とした海中ごみの回収を行っている。石津浜海岸は釣り場としても人気が高いスポットの一つであり、海底には、根掛かりなどによって多くの釣具が残されている(写真1右上)。これらは海中景観を損ねるだけでなく、針が魚に刺さったままになる(写真1左下)など、海洋生物に影響を及ぼすこともある。この活動は、「自分たちで海をきれいにしよう」という生徒たち自身の発案から始まり、現在では地域からも評価される取り組みとなっている。
また、回収した海中ごみを活用した環境保全の啓発活動も行っている。学校祭や校外イベントでは、小中学生を対象に、海中ごみであるルアーを装飾したストラップ作りを実施している(写真1右下)。作製前後には、海中清掃の様子を紹介したり、参加者への意識調査を行ったりすることで、海洋環境の現状を知ってもらい、環境保全への関心を高める機会としている。これまでに約500人の小中学生が体験しており、海の環境について考える場をつくることができた。ルアーの装飾方法は、環境保全に関するワークショップを行う外部協力者から助言を受けながら、生徒たち自身が考案したものである。この過程で、生徒たちはコミュニケーション能力を磨くとともに、環境保全に関する考え方や手法を学ぶことができた。外部協力者との連携により教育の質が高まり、より効果的な啓発活動につながっている。
さらに、生徒たちが身に付けたダイビング技術は、マリンスポーツの普及や社会貢献にも生かされている。外部団体が実施する障がいのある方を対象としたダイビングイベントでは、水中補助役として依頼を受け、生徒が参加者の潜水を補助した。これは生徒のダイビング技術が評価されたことで実現したものであり、身に付けた技術が社会に役立つことを実感できる貴重な機会となった。
■写真1 石津浜での潜水調査に取り組む生徒たち(左上)。根掛かりしていた海底のごみを回収している様子(右上:漁具を矢頭で示した)。ルアーが掛かったままの魚(左下:ルアーを矢印で示した)。ルアーストラップを参加者と共に作っている様子(右下)。
ムラサキウニ採捕を通じた実践的な海洋教育
焼津水産高校は、ダイビング班の生徒たちが日頃培ってきた潜水技術を用いた海洋教育活動および水産資源に関する研究活動への貢献にも力を入れている。2023年よりダイビング班では、同校栽培漁業科が推進するムラサキウニ蓄養研究と連携して、駿河湾奥部西岸に位置する用宗(もちむね)海岸でムラサキウニの採捕活動に取り組んでいる。本活動は、顧問教員の同行・指導の下(写真2左)、清水漁業協同組合用宗支所の協力を得て行われている。また、地元の潜水漁師から、安全にウニの採捕を行うための注意点について助言を受けるなど、地域の海をよく知る方々とも連携して進められている。
生徒たちは、素潜りによってムラサキウニを採捕する(写真2中)。海に入り、海洋生物を直接観察し、自らの手で採捕する経験は、座学だけでは得られない実感を伴う学びである。採捕されたウニは、同校栽培漁業科における蓄養研究に用いられるほか、大学研究者によるムラサキウニの研究にも活用されている。実際に、これまでダイビング班の生徒たちの協力により、用宗海岸に生息するムラサキウニの生殖生態や食性に関する研究成果が論文として公表されるに至っている。
採捕の終了後には、採集したウニを教材として活用し、大学研究者が、採捕に参加した生徒に対して、ウニの五放射相称構造や生態系の中での役割について簡単な解説を行っている。ムラサキウニは、私たちにとって高級食材として利用される水産資源の一つである。一方で、海藻類を摂食する動物でもあり、個体数が多い場所では藻場の衰退を招くことがある※1。さらに、ウニ類の生活史に目を向けると、浮遊幼生期には魚類や無脊椎動物などの餌となり得ることが知られており、沿岸の食物網の一端を担っている※2。また、成体のウニの棘の間には、ムラサキヤドリエビといった小型甲殻類が見つかることもあり、ウニの体そのものが他の生き物のすみかとして利用されている様子を観察できる場合もある。
このように、ムラサキウニは「食材」「海藻を食べる動物」「他の生物を支える餌資源」「小型甲殻類のすみか」という複数の側面を持っている。一つの動物であっても、見る立場や生態系の中での位置付けによって、その意味は大きく変わる。生徒たちには、採捕したウニを通じて、海の生き物を単一の価値観で捉えるのではなく、水産資源利用、生態系保全、地域文化の視点から多角的に考えることの重要性を伝えている。また、採捕したウニの一部は、安全面に配慮した上で漁港内で試食し、水産資源としての価値や地域の食文化との関わりについても実体験を通して学んでいる(写真2右)。
本活動は、地域の海を知る漁業者、水産高校の教育活動、大学の研究が結び付くことで、用宗海岸の生物や環境を学ぶ実践的な場となっている。高校生が海を学ぶだけでなく、身に付けた潜水技術を用いて地域の海を守り、大学の研究を支え、社会に貢献するという、水産高校における海洋教育の新しい可能性を示すものである。
同校ダイビング班の取り組みは、ダイビングという海洋スキルを環境保全、社会貢献、海洋教育、そして研究貢献とさまざまな形で活用し、生徒たちの総合的な成長を促す取り組みである。これらの活動を通じて、生徒一人ひとりの進路選択や人生の豊かさにつながる学びの機会を、今後も生み出していきたい。また、ダイビング班の活動として次世代に継承されることで、地元の海に愛着を持ち、その価値を多面的に理解できる海洋人材の育成へとつなげていきたい。(了)
生徒たちは、素潜りによってムラサキウニを採捕する(写真2中)。海に入り、海洋生物を直接観察し、自らの手で採捕する経験は、座学だけでは得られない実感を伴う学びである。採捕されたウニは、同校栽培漁業科における蓄養研究に用いられるほか、大学研究者によるムラサキウニの研究にも活用されている。実際に、これまでダイビング班の生徒たちの協力により、用宗海岸に生息するムラサキウニの生殖生態や食性に関する研究成果が論文として公表されるに至っている。
採捕の終了後には、採集したウニを教材として活用し、大学研究者が、採捕に参加した生徒に対して、ウニの五放射相称構造や生態系の中での役割について簡単な解説を行っている。ムラサキウニは、私たちにとって高級食材として利用される水産資源の一つである。一方で、海藻類を摂食する動物でもあり、個体数が多い場所では藻場の衰退を招くことがある※1。さらに、ウニ類の生活史に目を向けると、浮遊幼生期には魚類や無脊椎動物などの餌となり得ることが知られており、沿岸の食物網の一端を担っている※2。また、成体のウニの棘の間には、ムラサキヤドリエビといった小型甲殻類が見つかることもあり、ウニの体そのものが他の生き物のすみかとして利用されている様子を観察できる場合もある。
このように、ムラサキウニは「食材」「海藻を食べる動物」「他の生物を支える餌資源」「小型甲殻類のすみか」という複数の側面を持っている。一つの動物であっても、見る立場や生態系の中での位置付けによって、その意味は大きく変わる。生徒たちには、採捕したウニを通じて、海の生き物を単一の価値観で捉えるのではなく、水産資源利用、生態系保全、地域文化の視点から多角的に考えることの重要性を伝えている。また、採捕したウニの一部は、安全面に配慮した上で漁港内で試食し、水産資源としての価値や地域の食文化との関わりについても実体験を通して学んでいる(写真2右)。
本活動は、地域の海を知る漁業者、水産高校の教育活動、大学の研究が結び付くことで、用宗海岸の生物や環境を学ぶ実践的な場となっている。高校生が海を学ぶだけでなく、身に付けた潜水技術を用いて地域の海を守り、大学の研究を支え、社会に貢献するという、水産高校における海洋教育の新しい可能性を示すものである。
同校ダイビング班の取り組みは、ダイビングという海洋スキルを環境保全、社会貢献、海洋教育、そして研究貢献とさまざまな形で活用し、生徒たちの総合的な成長を促す取り組みである。これらの活動を通じて、生徒一人ひとりの進路選択や人生の豊かさにつながる学びの機会を、今後も生み出していきたい。また、ダイビング班の活動として次世代に継承されることで、地元の海に愛着を持ち、その価値を多面的に理解できる海洋人材の育成へとつなげていきたい。(了)
■写真2 ウニ採捕にあたり顧問より説明を受ける様子(左)。素潜りしてウニを探している様子(中)。漁港内でウニの可食部である生殖腺を試食している様子(右)。
※1 四井敏雄・前迫信彦(1993)は、ムラサキウニや巻貝類が多く見られる磯焼け帯で、これらを除去しアラメ母藻を投入することで藻場回復を試みている。
※2 Penningtonら(1986)は、ウニ綱に属するカシパン類の一種(Dendraster excentricus)の胚・幼生が、動物プランクトンや魚類に捕食されることを室内実験系で示している。
※2 Penningtonら(1986)は、ウニ綱に属するカシパン類の一種(Dendraster excentricus)の胚・幼生が、動物プランクトンや魚類に捕食されることを室内実験系で示している。
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