Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第60号(2003.02.05発行)

第60号(2003.02.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「鯨来て慶良間海峡大うねり」(大嶺清子)。慶良間列島は沖縄島の西方、渡嘉敷島や座間味島など20あまりの島々からなり、昔はカツオ漁が盛んだったが、今はザトウクジラの観鯨が人気を博している。

◆鯨ならぬ核兵器の開発をめぐって、政治の大きなうねりが作り出されつつあり、日本もそのうねりに否応なしに巻き込まれている。日本人は水と安全がただだと思っている能天気というのは、故山本七兵氏の有名な指摘。USCGのGarrett大佐による「極東の米国沿岸警備隊」は、アメリカの沿岸警備隊が極東で重要な機能を果たしているというほとんど知られていない事実と、「領海察知」という考え方で自国の安全を強化しようとするアメリカの姿勢を知らせることで、われわれに自衛隊と海上保安庁の役割分担を含めた、日本の海洋安全政策のあり方を改めて考えさせる。

◆海に禁漁区を設けて、すなめりが再び人々の目に触れる瀬戸内海を復活させようという萩原氏の提案は、日蓮上人の生誕地である鯛の浦の鯛の例等と考え合わせると、決して夢物語ではない。氏の切絵の見事さにも感心。

◆単一魚種管理から生態系アプローチ方式への移行という海洋生物資源管理の世界的な動きの紹介とともに、現在の知識水準の限界とそれが政治的な一定の意図の下で用いられることの危険性を指摘する森下オピニオンは、われわれが海にいかにかかわるべきかを問う。あらゆる情報が不完全である状況で決断を積み重ねざるをえないのが現実の人間社会の宿命である。知識の限界を乗り越える科学政策の充実と同時に、賢明な実践のための哲学を確立したいものである。(了)

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