Ocean Newsletter
オーシャンニューズレター
第608号(2026.08.20発行)
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事務局だより
(公財)笹川平和財団海洋政策研究所上席研究員◆塩入同
◆海は、資源を育み、エネルギーを生み、物資を運ぶ場である。同時に、その利用をめぐって国家間の利害が交錯し、地域の暮らしや自然環境とも深く結び付く。本号は、海をめぐる資源・エネルギーの課題が、国際秩序から地域資源の循環、環境保全まで、多層的な視点を要することを示す。◆ホルムズ海峡をめぐる記事は、武力衝突が続く中でも、海上交通の自由と秩序を支える国際法の意義を示す。ルールが揺らぐ時代だからこそ、各国の行動を一律に断ずるのではなく、何が守られ、何が逸脱しているのかを冷静に見極める視点が欠かせない。海峡の安定は、海上輸送に頼る日本の暮らしに直結する。◆南鳥島沖のレアアース泥回収は、わが国の経済安全保障に可能性を開く。一方、環境負荷に配慮しつつ、精錬、採算性、供給網まで含む長期戦略が欠かせない。南鳥島の事業だけで中国依存を一気に解決できるわけではなく、過大な期待をかけず、調達先多様化の一環として段階的に進める必要がある。海洋資源は、環境への配慮と持続可能な利用の仕組みがあってこそ力となるのではなかろうか。◆久米島の海洋深層水利用は、その一例である。研究、産業、行政、教育を結び、冷熱、養殖、農業、エネルギーを段階的に活用する「久米島モデル」は、地域資源を人づくりと産業づくりにつなげてきた。四半世紀の歩みは、社会実装には時間と、多様な担い手の協働が不可欠であることを教えてくれる。◆また、放置竹林をバイオプラスチックや養殖資材へ転換する二つの記事は、山・川・海を一つの流域として捉え、未利用資源を海洋環境の保全に結び付ける道筋を示す。陸域と海域にまたがる課題を資源循環の視点から一体的に捉え、資源管理や素材設計から変えていく発想は、地域課題の解決を新たな産業につなげる可能性を持つ。その実現には、生分解性の適切な評価・表示に加え、ライフサイクル全体の環境負荷を確認する仕組みが欠かせない。◆五つの記事が示すのは、資源を「得る」ことにとどまらず、秩序を守り、価値を循環させ、次代へ引き継ぐことの重要性である。海洋国家として求められるのは、開発を急ぐことだけではない。国際ルール、科学的知見、環境への配慮、地域社会の知恵を重ね、海の可能性を持続可能な価値へと育てることである。本号が、資源・エネルギーと海の関係を、暮らしと未来に直結する課題として考える一助となれば幸いである。(上席研究員 塩入 同)
第608号(2026.08.20発行)のその他の記事
- ホルムズ海峡封鎖に関する国際法上の論点〜戦時の海洋における国際法の順守と逸脱〜 慶應義塾大学SFC研究所上席所員、元海上自衛隊海将補◆中村進
- 南鳥島レアアースの潜在力と商業化への課題 笹川平和財団安全保障・日米グループ主任研究員◆小林祐喜
- 海洋深層水の複合利用と地域振興 沖縄県島尻郡久米島町副町長◆中村幸雄
- 豊かな森林は豊かな海を育む~地域資源を生かす循環型素材の社会実装~ 福岡県議会議員◆原田博史
- 陸から変える、海洋プラスチック問題~放置竹林から生まれるバイオプラスチック~ 九州工業大学大学院生命体工学研究科准教授、グリーンマテリアル研究センター長◆安藤義人
- 事務局だより (公財)笹川平和財団海洋政策研究所上席研究員◆塩入同
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