Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第604号(2026.04.20発行)

編集後記

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所所長◆牧野光琢

◆新年度が始まり、さまざまな海洋関連政策も動き始めている。たとえば、内閣官房で取りまとめが進められている「日本成長戦略」は、官民連携の戦略的投資による世界共通の課題解決とわが国経済の成長を目的とした政策である。今後の日本をけん引する17の戦略分野※1が特定されており、AIや量子、宇宙などとならんで、海洋、船舶、港湾ロジスティクス、マテリアル(レアアース等重要鉱物)、エネルギー安全保障(洋上風力)、フードテック(陸上養殖等)など、海洋政策に直接関連する多くのキーワードが含まれている。また、3月末に閣議決定された「第7期科学技術・イノベーション基本計画」※2では、政策資源を最大限活用する戦略的支援の対象として17の新興・基盤技術領域および国家戦略技術領域が指定されている。ここでも、造船や港湾ロジスティクス、エネルギー安全保障、マテリアル、農林水産(含フードテック)、海洋などが含まれている。これら二つの政策文書からは、今後の日本経済の成長分野として、海洋への大きな期待が見て取れる。◆経済成長をけん引するこれら応用科学・技術の礎には、自由な発想に基づく基礎科学がある。たとえば上記戦略分野にも指定されているフュージョンエネルギー(核融合)理論の発端は、今から約100年以上前のフランシス・アストンやアーサー・エディントンらが抱いた「太陽はなぜ燃え続けているのか?」という知的好奇心であった。また、海洋基本法第1条にも謳われている通り、日本の海洋立国の実現のためには生態系影響評価や汚染対策など海洋環境の保全も必須である。◆最後に、研究開発成果のスピーディーな社会実装を実現するためには、科学と政策および産業界の有機的・戦略的連携が不可欠である。大学・研究機関での世界トップレベルの研究推進や、その実装に向けたスタートアップに対する支援のほか、地域発の取り組みも大きな可能性を有するだろう。亜寒帯から熱帯まで、日本の多様な沿岸生態系の恵みを受けて長年にわたり育まれた各地の歴史や文化を基盤として、日本ならではの多様な地域イノベーションが生まれることにも大いに期待したい。
◆Ocean Newsletterの編集にあたり、これまでOPRI情報発信アドバイザリーボードの皆様に編集方針や特集に関するご助言をいただいておりました。誠に有難うございました。2026年度からはOPRI活動全般に対してご助言をいただく新体制に発展させる予定です。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。(所長 牧野光琢)
※1「危機管理投資」、「成長投資」の戦略分野 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/index.html
※2 「第7期科学技術・イノベーション基本計画」 https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index7.html

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