Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第602号(2026.02.20発行)

事務局だより

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所島嶼国・地域部部長◆塩澤英之

◆50年以上の歴史を持つ太平洋諸島フォーラム(PIF)は加盟国の国家主権・外交権を超えない地域政策枠組みである。太平洋島嶼国各国は自国の優先課題を重視しながら、国際社会に対して結束する場としてPIFを利用してきたが、近年は地政学的影響などを背景に、その結束に亀裂が生じる事態が発生している。地域の歴史を肌感覚で理解する小林泉大阪学院大学教授はPIFの現実の姿と将来の展望について明らかにした。今後、われわれが地域情勢を正確に捉える上で助けとなるだろう。◆海面上昇は全域が沿岸域の低環礁国にとり国家存続に関わる深刻な脅威である。ツバルは首都機能を守るために護岸強化や埋め立てによる土地のかさ上げなどを進めるが、国家予算約100億円の国では援助に頼らざるを得ず対象地域も限られる。太平洋島嶼国はEEZの修正は不要との立場であり低環礁国はいずれも国連への寄託を完了している一方で、ツバルにはデジタル政府案があり、ファレピリ連合条約に基づく豪州への移住を望む住民も多い。茅根創東京大学大学院特任研究員は低環礁国の土地形成について長年にわたり研究してきた。財政規模が小さな小島嶼国が自ら国を守るためには自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)が重要であることは明らかであり、今後、その研究成果が一層重視されるであろう。◆離島住民のライフラインである離島航路は、少子高齢化や人口流出により存続が厳しい状況に置かれている。赤字航路は公営化、国や地方自治体の支援などで存続されているが、行平真也九州産業大学准教授は深刻な問題として船員不足に注目。離島航路の維持には人材確保のための母港の変更と小型船舶への転換に効果があり、その過程では島民への丁寧な説明と合意形成が極めて重要であるとした。今後、離島人口も船員となる人材も大きな増加が期待できない中で、離島航路確保を優先する現実的な取り組みが期待される。◆後藤雅彦琉球大学教授は東アジア南方沿海地域という地域区分を設定し、沿海・島嶼域としての生活文化の比較研究を進めている。琉球列島(沖縄諸島)では、人々が弥生時代に稲作農耕社会に接触しながらも10世紀以降まで本格的な農耕が定着せず、狩猟採集社会から農耕社会への一系列では捉えられない変遷過程を持つという。食料が満ち足りており、稲作を必要としなかったのだろうか。貝塚の分布と稲作農耕が比較されているが、太平洋島嶼国のようにタロイモなどのイモ類を主食にしていなかったのかなど興味が尽きない。(島嶼国・地域部部長 塩澤英之)
※「オーストラリア・ツバル・ファレピリ連合条約」:2024年8月発効、ツバル国民の豪州移住制度と安全保障協力を柱とする条約

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