Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第602号(2026.02.20発行)

離島航路の現状と課題

KEYWORDS 海上交通/人口減少/船員不足
九州産業大学地域共創学部地域づくり学科准教授◆行平真也

離島航路は本土と離島、または離島相互を結び、住民の移動や生活物資の輸送を担う重要な交通手段であるが、航路利用者の減少や船員不足など、離島航路を取り巻く環境は大変厳しい状況にある。特に近年、航路運営事業者の撤退や航路の休止、減便など、その影響が顕在化している。
離島航路とは
離島航路とは、本土と離島、または離島相互を結び、住民の移動や生活物資の輸送を担う重要な交通手段です。2025年4月現在、全国には272の航路があり、島民にとって欠かすことのできない生活の足となっています。一方、多くの離島では深刻な少子高齢化や人口流出により人口減少が進み、航路利用者数の減少と相まって、離島航路は非常に厳しい状況に置かれています。国土交通省の『海事レポート2025』※1によれば、離島航路の輸送人員がここ20年で約2割減少するなど、航路運営事業者や地方公共団体にとって厳しい経営環境であり、航路の維持が困難な状況になっていると指摘されています。
離島航路の維持・確保を図るために、国土交通省は離島航路整備法に基づき、赤字航路に対する運航費補助等を行っています。補助対象航路は2025年4月現在で127航路あり、運航費補助や構造改革補助などの支援を行っています。補助航路となる条件は、航路が唯一かつ赤字の航路であることです。この補助を受けている航路のことを国庫補助航路と呼びます。また、国からの補助に加え、地方自治体が補助を行っている場合も多いです。
離島航路を取り巻く状況
離島航路を取り巻く環境が厳しさを増す中で、航路運営事業者が撤退するという事態も生じています。2021年5月には、大分県津久見市の津久見港と保戸島を結ぶ保戸島航路を運航する民間事業者が撤退を表明し、最終的に津久見市に経営が移管される事態が生じました。撤退理由としては、運航管理者や職員、船員の高齢化、船員不足などが挙げられています。また、同じ時期に大分県佐伯市の蒲江と屋形島・深島を結ぶ航路においても事業者が撤退し、保戸島航路と同様、市が事業主体となり、経営が移管されました。どちらも本土と島を結ぶ唯一の航路であり、廃止された場合には島民の生活に著しい影響が出ることが容易に想像できます。そのため、自治体の努力によって航路の維持が図られています。
また、近年、航路が休止される事例もみられます。例えば、岡山県笠岡市の伏越港と白石島を結ぶフェリー航路においては、航路運営事業者が2023年8月に撤退を表明し、同年12月30日の運航をもって休止しました(写真1)。また、広島県竹原市の竹原港と呉市大崎下島の大長港を結ぶ高速船が2025年3月末に休止しています。これらのように、航路運営事業者の撤退や航路の休止など航路そのものの維持が難しくなっています。
特に運航を担う船員の確保が厳しくなっており、その影響が減便という形で顕在化しています。例えば、2025年6月には本土と喜界島などの奄美群島を結ぶ航路において、船員不足を原因とした減便が生じています。この航路は本土と喜界島を結ぶ唯一の航路であり、週5便から週4便に減便されたことで、農作物の出荷などに物流に影響が出ており、島民の生活に大きな影響を与えています。また、本土と隠岐諸島を結ぶ航路においても同様の理由での減便が生じています。船員の有効求人倍率は年々上昇しており、2024年には4.78倍と高い水準になっていることから、船員確保が難しい状況が続いています。

■写真1 2023年12月30日に運航休止となったフェリー(岡山県笠岡市)

離島航路を維持するために
離島航路は航路によって状況が大きく異なるため、一概に論じることは難しいのですが、近年、維持・確保のために行われている2つの取り組みについて取り上げたいと思います。
1つ目は、母港変更です。離島航路では母港(最初に船が出発する港)が島側であることが多く、船員が島に居住すること、もしくは乗船前後に宿泊することが必要です。離島航路の船員の募集において「採用後、島への居住が必要」と明記されていることも珍しくありません。そのことが島外出身者を採用する上で大きなハードルとなっています。そのため、母港を本土側に移すことにより、船員の居住地を本土側にすることで、船員確保をよりしやすくする取り組みです。例えば、九州運輸局管内では2016年10月に山口県下関市の竹崎~六連島航路、2022年10月に大分県津久見市の津久見~保戸島航路が島側から本土側に母港変更されています。なお、母港変更を行う場合には、離島島民の利便性が低下する可能性や島出身の船員の居住地の問題などの課題もあります。
2つ目は、小型船舶への転換です。航路利用者の減少や船員不足、燃料費などの経費が増大していることに対応するため、新船建造にあたり20トン未満の小型船舶に転換する事例が近年みられています。九州運輸局管内ではこれまでに6航路で小型船舶への転換が行われています(写真2)。小型船舶にすることにより、建造費を削減するとともに、燃料費や修繕費などのランニングコストの削減が期待されています。また、小型船舶であれば小型船舶操縦士の免許(特定操縦免許)で運航ができることから、海技士免状取得者に限った募集に比べ、採用できる人材を広げることができ、船員確保につながる可能性があります※2。しかし、船が小さくなることにより乗り心地が悪くなることや、就航率が低下する懸念など島民の不安もあり、島民を含めた関係者との十分な協議が必要です。島の規模や海域などにもよりますが、離島航路を確保していくために小型船舶に転換する事例は今後もさらに増えるものと思われます。
離島航路は島民にとって欠かすことのできない生活の足であり、その維持・確保を行っていくことが重要です。しかし、今後さらなる離島人口の減少が予想される中、離島航路の維持・確保には大きな困難が伴うと考えられます。航路改善などさまざまな取り組みを進めていく必要がありますが、どのような取り組みも島民の生活に直結することから、何より、島民への丁寧な説明や合意形成が極めて重要であると考えます(了)

■写真2 小型船舶へ転換した事例(おうしまⅡ、長崎県五島市)

※1 国土交通省『海事レポート2025』 https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr1_000098.html
※2 「海上運送法等の一部を改正する法律」による船舶職員及び小型船舶操縦者法の改正に伴い、2024年4月より「特定操縦免許」の制度が改正され、一定の乗船履歴がない場合に船長として乗船できる航行区域が平水区域に限定されるなどの変更が生じている。

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