◆第5号は食欲の秋さなかの号である。秋のさなかはさかなの秋に通ずる。伝統的な日本人の味覚は、醤油と渾然一体となった魚肉の香りと舌ざわりの微妙な違いを識別することによって鍛錬された。われわれは、瀬戸内の小魚のきめ細かな味わいと、暖流・寒流が入り混じる日本海の脂の乗った魚肉の味わいとを区別する民族なのである。鷲尾氏の投稿は魚好きには心強い限りである。他方で、日本海の深層循環の異変についての尹氏の指摘は、大変にショッキングなものであった。解明のための国際協力の進展を望みたい。
◆17世紀以降、欧米の捕鯨は「われらが力と頼みにするは、そのペティコート、たとえ七重の鯨鬚製の輪で囲み、鯨の肋骨で鎧おうとも、それがついえやすいものとはわれらつとに知るところなるゆえに」(A.ポープ「髪の毛盗み」)と歌われたように、女性のウエストをほっそりと見せる素材の獲得を重要な目的のひとつとした。これに対して、終戦直後の昭和22年を見ると、国内市場における動物性たんぱく質生産の実に47%が鯨肉だった。森下氏指摘のように、捕鯨問題は異文化の衝突である。この問題について、舌に鯨の味が刷り込まれていない読者からの投稿も期待したい。(了)
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