Ocean Newsletter
オーシャンニューズレター
第590号(2025.03.05発行)
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事務局だより
瀬戸内千代
◆2024年に国際交渉を経てタイヘイヨウクロマグロ漁獲枠の増枠が決まりました。そこで今号は、水産業をテーマに4本のご寄稿をいただきました。スズキ目サバ科に属するクロマグロは、飲食店では「本まぐろ」と総称される場合もありますが、タイセイヨウクロマグロとタイヘイヨウクロマグロに分類されます。回遊魚のため資源管理には複数の国々が関わります。中でも最大の消費国である日本では、政府、漁業者、NGO、大学、企業等の関係者が、漁獲枠の設定や徹底に努めたり、タイセイヨウクロマグロ漁業で世界初のMSC認証を取得したり、天然タイヘイヨウクロマグロの保全に資する完全養殖を世界で初めて成功させるなど、取り組みを進めてきました。
◆1本目の記事では、水産庁の晝間氏が日本政府の対応を紹介しています。拝読して思い出したのは、日本でタイヘイヨウクロマグロの本格的な数量管理が始まった頃のことです。資源管理の専門家は、漁獲枠を設定して資源量が回復したタイセイヨウクロマグロの先例を挙げ、クロマグロは漁獲制限の効果が表れやすい魚だと説明していました。実際、数年後には、現場に近い方々から、「増えてきた」「枠があるのに獲れすぎて困る」という話が聞こえてきました。マイワシのように資源量が自然現象に大きく左右される※魚種がいる一方で、激減しても人為的な工夫で持ち直す魚種がいることに希望を感じました。
◆資源状態とは別に、2本目の記事で和田氏が指摘するとおり、日本では水産現場の後継者不足が深刻です。それでも、持続可能な漁業が各地で明るい未来を描くことができれば、状況が好転するかもしれません。3本目で石井氏が紹介する「海のエコラベル」は、持続可能な漁業を応援したい消費者にとって一つの指標になります。世界でMSC認証を得たカツオ・マグロ類の多くはツナ缶になるそうですが、日本では、海のエコラベル付きのツナ缶のほか、生のビンナガ(ビンチョウマグロ)や一本釣りカツオなども販売されています。MSC認証や(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会のMEL認証など国際的に認められた水産認証スキームでは、資源状態だけでなく、その漁業に伴う環境負荷も審査されます。4本目で花岡氏が取り上げている「混獲」に対しても具体的な防止策が求められます。花岡氏らが毎年開催するサステナブルシーフード・サミットでは、「労働者の人権侵害の温床」でもあるIUU漁業が度々議題に上がります。前回のサミットでは、日本の最大のマグロ供給元である台湾の、遠洋マグロ漁の過酷な実態が報告されました。マグロは、回転寿司など日本の大手外食チェーンの定番メニューになり、今では多くの人が口にする人気食材です。獲りすぎない体制と、心からおいしくいただけるような法の整備が急がれます。(瀬戸内千代)
◆1本目の記事では、水産庁の晝間氏が日本政府の対応を紹介しています。拝読して思い出したのは、日本でタイヘイヨウクロマグロの本格的な数量管理が始まった頃のことです。資源管理の専門家は、漁獲枠を設定して資源量が回復したタイセイヨウクロマグロの先例を挙げ、クロマグロは漁獲制限の効果が表れやすい魚だと説明していました。実際、数年後には、現場に近い方々から、「増えてきた」「枠があるのに獲れすぎて困る」という話が聞こえてきました。マイワシのように資源量が自然現象に大きく左右される※魚種がいる一方で、激減しても人為的な工夫で持ち直す魚種がいることに希望を感じました。
◆資源状態とは別に、2本目の記事で和田氏が指摘するとおり、日本では水産現場の後継者不足が深刻です。それでも、持続可能な漁業が各地で明るい未来を描くことができれば、状況が好転するかもしれません。3本目で石井氏が紹介する「海のエコラベル」は、持続可能な漁業を応援したい消費者にとって一つの指標になります。世界でMSC認証を得たカツオ・マグロ類の多くはツナ缶になるそうですが、日本では、海のエコラベル付きのツナ缶のほか、生のビンナガ(ビンチョウマグロ)や一本釣りカツオなども販売されています。MSC認証や(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会のMEL認証など国際的に認められた水産認証スキームでは、資源状態だけでなく、その漁業に伴う環境負荷も審査されます。4本目で花岡氏が取り上げている「混獲」に対しても具体的な防止策が求められます。花岡氏らが毎年開催するサステナブルシーフード・サミットでは、「労働者の人権侵害の温床」でもあるIUU漁業が度々議題に上がります。前回のサミットでは、日本の最大のマグロ供給元である台湾の、遠洋マグロ漁の過酷な実態が報告されました。マグロは、回転寿司など日本の大手外食チェーンの定番メニューになり、今では多くの人が口にする人気食材です。獲りすぎない体制と、心からおいしくいただけるような法の整備が急がれます。(瀬戸内千代)
※ 渡邊良朗著「大衆魚の資源動向」本誌第437号(2018.10.20発行)
https://www.spf.org/opri/newsletter/437_2.html
https://www.spf.org/opri/newsletter/437_2.html
第590号(2025.03.05発行)のその他の記事
- 中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)における資源管理の進展 水産庁国際課課長補佐(企画班担当)◆晝間信児
- 持続可能な水産業 ~「獲りながら」、「食べながら」の視点から~ (一社)全国水産技術協会専務理事◆和田時夫
- MSC認証とカツオ・マグロ類漁業 (一社)MSCジャパン代表理事◆石井幸造
- IUU漁業の現状と日本 ~シャークフィニングから考える~ (株)シーフードレガシー代表取締役社長◆花岡和佳男
- 事務局だより 瀬戸内千代