Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第58号(2003.01.05発行)

第58号(2003.01.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「年ふれど老いもせずしてわかの浦に幾世になりぬ玉津島姫」(津守国基)。明けましておめでとうございます。2002年は殺伐としてあわただしく、あまり明るい展望も開けないまま過ぎ去ったという印象が強い。せめて今年が良い年になりますようにと願いを込めての、おめでたい語呂合わせの和歌一首。ちなみに玉津島明神は和歌三神の一つ、伝説の美女衣通姫が祭られている。本誌も少し年をふりつつあるが、決して老いることなく、過ごした歳月がむしろ若々しさの源になるのだと、そんな意気込みを歌に託して引いてみた。お屠蘇の酔いも手伝っての大言壮語、新年に免じてお許しをいただきたい。

◆大陸にばかり目を向けず、沖縄を機軸にして確立される南洋の太平洋島嶼諸国や、東南アジアの多島海諸国との新たな関係によって、海洋国家としてのわが国の分限を示すべきことを説く櫻田オピニオンは新年号にふさわしい気宇を示す。今の日本に欠けるものが価値観の核であるという指摘は重い。呉市が建設中の海事博物館の紹介にあわせて、海事技術資料の重要性と収集保存の方法について論ずる仲渡オピニオンは、歴史の重みを現在の若さに転換するための知のありようについて、示唆するところ大である。新島村出川村長のオピニオンは、今年本誌が予定する「島シリーズ」のトップバッターである。島の悲願であった港湾整備の実現が、夕浜を楽しんだ前浜の浸食をもたらすという矛盾は、日本の多くの島が共通に抱える問題を象徴する。年ふることと老いないことを両立させることは決して容易ではない。そのための知と情熱をいかに組合わせるか、本誌の課題はそれを論ずるより良い場の提供である。新年をかざるにふさわしいオピニオンを寄せてくださった各執筆者に感謝したい。(了)

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