Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第578号(2024.09.05発行)

事務局だより

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員◆高翔

◆夏は海の魅力を存分に楽しめる季節です。周囲を海に囲まれた日本には全国各地に多くの海洋レジャーを体験できるスポットが点在し、さまざまな海洋レジャーアクティビティが楽しまれています。今号は日本における海のレジャー的利用をテーマに海のレジャー的利用の展開、利用をめぐる管理と調整、そして国民に一番親しまれる海洋レジャーの1つである海水浴の歴史について3名の方にご寄稿いただきました。
◆日本において、長らく経済が低迷を続ける一方、余暇時間が増加しており、豊かな生活のあり方が国民の生活テーマとなっています。その中で、海洋を活用した余暇活動には多くの期待があると言えるものの、海のレジャー的利用へのニーズの高まりに対して十分に応えられていないことが中原氏のご寄稿で判明しました。そこに、海洋レジャーニーズへの対応が課題となっています。
◆また、原田氏が指摘しているように、海洋レジャーには多様な楽しみ方が存在していますが、海洋レジャーの勃興は漁業操業といった既存の海面利用の仕方とトラブルが発生し、多くの問題が惹起しています。海の利用をめぐる管理と調整に資する国内法と政策の構築が必要でありますが、たどり着いた問題解決の先はやはり両者の共存を図ることであります。海洋レジャーと漁業との調和的発展には海業(参考:婁小波著「海業のすすめ」第538号2023.01.05発行)の取り組みが役割を果たしています。
◆東洋医学でも海水浴や海浜療養の効用が言い伝えられてきていますが、日本に「海水浴」の概念が西欧の医学的認識から持ち込まれたとの歴史を國木氏のご寄稿で興味深く拝読させていただきました。
◆いま1つは、環境管理の問題であります。國木氏が指摘したように、沿岸域で散見するプラスチックごみや放棄・投棄された漁具といった観光公害の問題が懸念されます。人々に安心安全で海洋レジャーを体験していただくためには、そうした問題を解決する社会的仕組みやルールづくりが不可欠であります。また、安全面の観点から付け加えると、政府広報オンラインのウェブサイトでは、「海や川でレジャーを楽しむために知っておきたい安全対策」※1が公開され、水の事故から命を守るポイントやケース別で水の事故を防ぐ対策方法を紹介しています。気象庁が8月15日に発表した1カ月予報では今年の残暑も長引く傾向であることが明らかになりました※2。今年の夏の海を満喫する最後のチャンスを生かして、くれぐれも安全第一で海洋レジャーを楽しんでいただけると幸いです。(高翔主任研究員)
※1 水の事故を防ごう!海や川でレジャーを楽しむために知っておきたい安全対策
  https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201608/1.html
※2 https://weathernews.jp/s/topics/202408/150165/

第578号(2024.09.05発行)のその他の記事

Page Top