Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第558号(2023.11.05発行)

事務局だより

瀬戸内千代

◆今号には、津波、海底資源、そして地球温暖化対策としての脱炭素燃料という、海のエネルギーをめぐる話題が集まりました。3編のご寄稿で、それぞれが国際的な課題として注目されていることをお伝えいただきました。
◆発行日の本日11月5日は、「稲むらの火」の逸話で知られる大津波(1854年)が発生した日です※1。2015年に国連「世界津波の日」となり、各地で津波防災を見直す契機となっています。海に囲まれた日本では最近、あまり前例のない津波が続いています。2022年1月15日にはトンガの火山島が噴火して日本列島の広い範囲で一斉に津波が警戒されました※2。2023年10月9日には、鳥島近海からの津波が八丈島などに到来し、原因がはっきりしない中で、今号にご寄稿くださった今村文彦東北大学教授が報道番組にコメントを求められ、海底火山が噴火した可能性を述べておられました。広い海から不意にやってくる津波は制しがたいところがあります。予兆として必ず潮が引くと聞きますが、気象庁のホームページ(よくある質問集「津波について」)には、「それは、間違いです。地震の発生の仕方によっては、いきなり大きな波が押し寄せることもあります」とあります。全く油断なりません。
◆東日本大震災後に訪れた宮城県の沿岸では、山の木々が信じられない高さまで海水で変色していました。津波が丘を回り込んで海のない方角から押し寄せたという現場もありました。東北を襲った津波は最大40m以上に達したそうです。奈良の大仏の高さが台座を含めても20m弱であることを考えるとがくぜんとします。しかも津波の水圧は破壊的です。気象庁の気象科学館(東京都港区立みなと科学館※3併設)には津波の再現模型があり、水槽の側面から水の動きを観察できます。ボタンを押すと、ドーンと分厚い大きな水塊が模型の街まで押し寄せ、「普通の波とは別物だ」と語っていた津波体験者の声が耳によみがえりました。
◆2023年の秋は、関東大震災から100年の節目です。相模湾北西部が震源だったため、神奈川県※4や千葉県、静岡県などでは津波被害の記録が多数残されています。当時よりさらに過密になった都市で次の津波が起きたらどうなるでしょうか。内閣府の「津波防災特設サイト」には、「津波はすごいスピードで迫ってきます。津波が来たら何も持たず、各自が全力で逃げてください」とあります。日本中どこの沿岸でも、東北の「津波てんでんこ」の教えを胸に暮らしていく必要がありそうです。(瀬戸内千代)
内閣府「津波防災特設サイト」からダウンロードできる広報ポスター

内閣府「津波防災特設サイト」からダウンロードできる広報ポスター

※1 崎山光一著「稲むらの火は世界津波の日へ繋がった」本誌第414号(2017.11.5発行)https://www.spf.org/opri/newsletter/414_1.html
※2 山本真行著「インフラサウンド観測を津波防災につなぐ研究」本誌第540号(2023.2.5発行)https://www.spf.org/opri/newsletter/540_1.html
※3 眞木まどか著「都心に誕生した新しい科学館「港区立みなと科学館」」本誌第487号(2020.11.20発行)https://www.spf.org/opri/newsletter/487_3.html
※4 神奈川県公式YouTubeチャンネルの特別番組「震源地・神奈川の傷跡と教訓」には、関東大震災の津波を体験した長老の語りが収録されている。https://www.pref.kanagawa.jp/docs/j8g/100th/special_program.html

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