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Ocean Newsletter
第541号(2023.02.20発行)
日豪関係のさらなる拡大・深化を目指して
[KEYWORDS]インド太平洋/安全保障/安全保障協力に関する日豪共同宣言オーストラリア連邦副首相兼国防大臣◆Richard MARLES
日本とオーストラリアは、民主主義、開かれた経済、自由な社会への深いコミットメントを共有しており、オーストラリアにとって日本は欠くべからざるパートナーである。
2022年に日豪両首脳が署名した日豪円滑化協定と、安全保障協力に関する共同宣言は、日豪両国のパートナーシップを格段に向上させるためのロードマップとなる。
日豪のパートナーシップは世界の平和と安定のためになくてはならない存在である。
2回目の日本訪問の意義
オーストラリアの友人といえば、最前列に立つのが日本です。そして、目の前にあるこの世界では、友情とそれに伴う戦略的な連携が最も重要なのです。2022年12月、10回目となる日豪2+2協議のために日本を訪問した際に、(公財)笹川平和財団において、この友好関係についてお話しする機会※をいただいたのは、光栄なことでした。
今回の訪日はオーストラリアの副首相となってから2回目であり、浜田靖一防衛大臣とは、シンガポールでのシャングリラ会合や10月のホノルルでの3か国防衛相会談に続き、3度目の会談となりました。この頻度は決して偶然の産物ではなく、オーストラリアが、そして私個人としても、日本との関係を優先していることを表しています。そして、この関係が過去20年で並外れた進化をとげたことを反映しています。
2022年の日豪関係の重要な二つの動き
日本とオーストラリアは、民主主義、開かれた経済、自由な社会への深いコミットメントを共有しており、今後何年にもわたって協力を深化させていくことになるでしょう。その中でも、2022年に起こった2つの重要な動きについて注目したいと思います。1月には、日本にとって米国以外の国とは初めてとなる実質的な地位協定である「日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定(日豪円滑化協定)」に署名しました。また、10月には、アンソニー・アルバニージー首相と岸田文雄首相が新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名しましたが、この宣言は安全保障関係の羅針盤となるとともに、日豪両国による運用協力の範囲と目的の精緻化を可能にするものです。これは日豪両国による真剣な約束であると言えます。オーストラリアにとって、日本は欠くべからざるパートナーですが、これはまさにわれわれが同盟のパートナーである米国を表現する言い方でもあります。そして、これら2つの合意により、日本とオーストラリアは、両国による戦略的連携に見合った防衛・安全保障分野における協力を確保するための二国間体制を整えました。
この連携の中心となるのは、日豪両国の防衛力に関する相互運用性の向上です。12月上旬、ワシントンでオーストラリアと米国は3国間の共同訓練についての参画を再確認し、オーストラリアの戦力態勢構想への日本の参加を呼びかけました。昨今のより厳しい戦略的環境を考えれば、われわれは同じような結論に達します。即ち、安全と繁栄を維持するには、大国の支配に甘んずるのではなく、自身の行動によってインド太平洋地域の戦略的軌道を形成するという、より強い意欲が必要となります。
これは、単に日豪両国による安全保障に係る合意にとどまりません。シドニー大学米国研究センターによる最近の世論調査では、日豪両国の安全保障関係に人々の支持が高まっていることがはっきりしました。私は日豪両国で60%以上の人々が安全保障に係る連携の深化を支持していることに感銘を受けました。しかし、もう一つのレベルにおいて、これは驚くに当たらないことです。
2011年の東日本大震災から1年後、オーストラリア連邦議会は、日本と連帯するための追悼会合を開きました。同僚議員による演説を聞く間、同僚議員が日本との深い個人的なつながりについて話すことに感動を覚えました。70年以上に及ぶビジネスや教育の関係を経て、いまや多くのオーストラリア人と日本人の間に個人的な友情が形作られています。実際に今日のわれわれの関係は人と人との深いつながりの上に構築されているのです。したがって、日豪両国の世論が日豪間の最も深い安全保障関係を支持するのは自然なことです。
安全保障分野における日豪関係の深化をめざして
私が意図するのは、日豪両国間のみならず、米国との3国間メカニズム、そして、準備が整い次第、豪英米三国間安全保障パートナーシップ(AUKUS)の「高度な能力」事業も通じて、日本の防衛産業との連携拡大を促進することです。これは信じられないほど野心的な課題ですが、世界は刻々と変化しており、われわれは対応していかなければなりません。ロシアによる無法かつ非道なウクライナ侵略の結果についてこの変化をヨーロッパにおいて目の当たりにし、日豪両国はインド太平洋地域による対処を主導してきました。志を同じくする国として、遠く離れた海岸で起こる侵略でさえも容認しないのだということを、日豪両国は示してきました。
今日、この地域の最も重要な特徴の一つは、中国の軍事力の規模です。中国は、第二次世界大戦の終結以来、最大の軍備増強を行っています。しかもそれは、中国の戦略的意図に関する透明性や安心材料を、地域に対して提供することなく行われています。これはオーストラリアと日本が存在する戦略的状況を形づくる、最も重要な要素です。一方で、オーストラリアと世界は、中国が国際的ルールと国際的規範に則って行動することを明確に期待しています。そのため、オーストラリアは中国との関係を安定させることに関与し続け、アルバニージー首相と習近平主席との会談を歓迎しています。今後の見通しははっきりしていませんが、友人と緊密に協働する必要があるということは明らかであると考えます。
日豪両国がかつてないほど戦略的に連携しているのは明らかです。実際、オーストラリアにとって、日本以上にそのような言い方が相応しい国を探すのは難しいと思います。将来に向けて、このパートナーシップが日豪両国だけでなく、地域と世界にとっても、防衛と安全保障の鍵となるでしょう。われわれはサプライチェーン、重要な鉱物資源、レアアース、重要インフラの防護および重要なエネルギー・パートナーシップといった、経済安全保障の新たな領域でも積極的に協働していきます。
われわれはまた、インド太平洋地域が対立に陥らないように取り組んでいます。こうした努力には多くの国々の協力が必要ですが、日豪安全保障パートナーシップはその触媒となることができます。われわれは皆、米国の同盟ネットワークから恩恵を受けてきました。しかし今、われわれは日豪関係をそれ自体が強力な力として構築する態勢を整えています。
オーストラリアにとって日本との関係は根本的なものです。安全保障協力に関する共同宣言と円滑化協定は、日豪両国のパートナーシップを格段に向上させるためのロードマップとなります。われわれのパートナーシップは世界の平和と安定になくてはならないものになるのです。(了)
- ※本記事は、2022年12月9日に(公財)笹川平和財団で開催した「リチャード・マールズ・オーストラリア副首相兼国防大臣特別講演会」における基調講演の概要です。(参照)同講演会の結果概要 https://www.spf.org/spfnews/information/20230124.html
- ●本稿は、英語の原文を翻訳したものです。原文は、当財団英文サイトでご覧いただけます。
https://www.spf.org/opri/en/newsletter/
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