Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第541号(2023.02.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆2022年1月6日、日豪の両首脳は、「日・豪円滑化協定」を締結した。本協定は、日豪の一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続及び同部隊の地位等を定めるものであり、「地位協定」と言っていい性格を持つ。この協定により、両国部隊間の協力活動の実施が円滑化され、両国間の安全保障・防衛協力がさらに推進されることになった。
◆豪州のRichard Marles副首相兼国防相より『日豪関係のさらなる拡大・深化を目指して』と題する貴重な論稿をご寄稿いただいた。Marles副首相兼国防相が指摘されるように、インド太平洋地域における最も重要な問題は、透明性を欠く中国の軍事力の拡大である。2022年10月には岸田首相とアルバニージー首相が新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名し、日豪両国のパートナーシップは一段と向上した。世界の平和と安定に欠かせない日豪の安全保障分野における協力の深化の必要性を論ずるこの論稿をぜひご一読いただきたい。
◆坂下広朗(一財)日本海事協会会長には、国際海運分野での地球温暖化対策としての国際海運ゼロエミッションへの道筋について論じていただいた。日本は、「国際海運2050年カーボンニュートラル」を目指すことを公表した。ゼロエミッションを目指す場合、遅くとも2030年から現存船をゼロエミッション船に順次置き換える必要があるという。また、アンモニア、水素、合成メタノールなどのゼロエミッション燃料やそれを使用する内燃機関や船舶の開発が必要とされる。現在、IMOで審議中の「規制的手法」と「経済的手法」については、本誌をご一読いただきたい。円滑な移行を確かなものとするために、政府、荷主、海運、船主、造船などの幅広い関係者の協働が重要だとの指摘は傾聴に値する。
◆蓬郷尚代中央大学助教からは、「海が私たちに与える影響、そして私たちが海に与える影響を理解すること」と定義される海洋リテラシーの調査についてご紹介いただいた。海洋リテラシーを構成する指標を示した上で、開発・作成された「海洋リテラシー調査票」を活用して、大学における正課体育集中講義に参加した2大学393名を対象に調査を実施した結果や、「子ども版海洋リテラシー調査票」を活用した小学校低学年を対象にした調査の成果については本誌をご一読いただきたい。海洋リテラシーは島国であるわれわれ日本人が海とともに生きるために身をつけておくべき素養であるとの指摘にはまったく同感である。(坂元茂樹)

第541号(2023.02.20発行)のその他の記事

ページトップ