Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第53号(2002.10.20発行)

第53号(2002.10.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 ((社)海洋産業研究会常務理事)◆中原裕幸

◆本号は、その多彩な内容に編集子もわくわくさせられた。宮田ペーパーでは、造船のトヨタやホンダはできないのか、との嘆息とも激励ともとれる指摘に頷かせられ、技術開発はいたって経営的な問題である、との一文に共感を覚える向きもあるのでは。谷ペーパーでは、海洋国家日本にとっての温故知新を柔らかな筆致で思い知らせてくれる。戦国の世に南海貿易に雄飛した呂宋助左衛門、日本海の豪商として名を馳せた加賀の銭屋五兵衛、ロシアへ渡った大黒屋光太夫、あるいはミカン船の紀伊国屋文左衛門など、歴史上の大人物の偉業へとしばし連想世界が広がる思い。

◆鯨の座礁についての大隅ペーパーでは、改めて目を見開かされた読者が多いのでは。本誌でも鯨問題特集(No.42、本年5月5日号)で座礁対策に苦労した一自治体の顛末記が掲載されているが、海へ返す努力が常に美談として報道され、ほとんどの国民があたかもそれが唯一絶対の答であるかのように思い込んでいる現状に対して、世界的な鯨の権威である執筆者が明快な論旨を展開している。世論の片隅に追いやられている感の強い同意見の専門家が思わず膝を打つ姿が目に浮かぶが、専門の如何にかかわらず、そして賛否の如何にかかわらず、これをしっかりと受け止め、今後は冷静な措置が採られることを期待したい。

◆それにしても、10月1日を期しての日本造船業界の歴史的な再編がいよいよ現実のものになった矢先に、11万トンの大型客船の火災というショッキングなニュースに接するという皮肉なめぐり合わせに名状しがたい気分に襲われた。わが国海洋産業の発展の前に垂れこめる暗雲を早く打ち払って、明るい明日が拓かれることを、全ての海洋関係者とともに切に希望したい。(了)

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